LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

お出かけの予定でしたが雨だったので、広い書店を冷やかすくらいで帰ってきました。
ぱらぱらといくつか立ち読んできたのですが、興味の持てるものがあまりなく、2冊しか買わないで帰宅。

出版不況だそうですが、翻訳もの好き読者としては「EQ」「ジアーロ」でお世話になった(一度某編集部に仕事でお邪魔した時は心が躍りまくってたんですがミステリ系とは違う社屋だったのが残念)光文社超がんばれと申し上げたいです。
ハヤカワ、創元ももちろんですが、光文社の海外ものほとんど棚がとれてなかった…事業自体縮小されてるのかな?教養文庫みたいなことにならなければいいのですが。

講談社の国産ものにもたいへんお世話になっているのですが、乱歩賞とか「メフィスト」とか。
でも国産ものってミステリに限らず、どこかがあたると似たようなのが一斉に出るじゃないですか。
新本格があたれば新本格。そのあとは「泣かせます」「泣けます」の大作化・映像化。そしてファンタジー風&ラノベ風…
どれもそれ自体は悪くないのですが、フォロワーが大量に出て棚をとり、別ジャンルの作品を阻害するのがいやんです。大当たりしたものほど醒めてしまう天の邪鬼な読者です。
出されたものは何でも美味しくいただくというのが最強なんですけどね、わかっているのですが。

そんなわけで、旧作発掘しては名訳でぽつぽつ出してくれる翻訳ものが好きになってしまうというところもあります。これもそんな一つ。

刑事の誇り(ハヤカワ・ミステリ文庫)
マイクル・Z・リューイン著 田口俊樹訳
刑事の誇り (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-7)刑事の誇り (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-7))
(1995/07)
マイクル・Z・リューイン

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リューインは、私立探偵アルバート・サムスンシリーズ(「A型の女」など)のほうが有名だと思います。ベトナム戦争の影響か、ハメット風のタフで乾いたハードボイルド探偵が時代に合わなくなった70年代アメリカでは、アル中探偵や子連れ探偵など、内省的で心に弱い部分を抱える探偵が多数登場しました。

読書好きで心やさしいところのあるアルバート・サムスンは、そこまで破滅的ではありませんが、チャンドラーやロスマクの流れを組む、ややウェットなネオハードボイルド探偵の1人。

そして、その分、サムスンシリーズにおいてタフで寡黙で古臭い男らしさを担当するのが、脇役で登場したインディアナポリス市警、夜勤担当のリーロイ・パウダー警部補です。
この「刑事の誇り」は、パウダーが主人公を務める刑事シリーズの第二弾。要はスピンアウト?

第一弾にあたる「夜勤刑事」を読んでないので何とも言えない部分もあるのですが、このパウダー刑事の不器用な偽悪家ぶりがもう第一にたまりません。

彼はその勤勉な働きにも関わらず、今は「失踪人課」という冷や飯食いのポジションに回され、また管理部門からはそろそろ引退をほのめかされている50男。

失踪人届けが殺人事件に発展する可能性は決して低くなく、これはという案件は署内の各部署と連携をとろうとするパウダーなのですが、殺人課はじめ、署内の第一線の刑事たちからすれば、彼は面倒ばかり持ち込んで騒ぎ立てる、偏屈で口うるさい男なのです。

殺人を想定して捜査活動を展開した揚句、たんに家出していただけの失踪人がひょっこり出てくることもまあ、よくある話で、だから
「死体が出てから来い」と言いたい殺人課の刑事たちの気持ちもわからないでもないのですが、その言動があまりにもあからさまで、パウダーの言うことなど気にしなくていいと部長までが公言するのはひどい。
事務的に失踪人届を受付け、何もせず、いざ死体が出れば照会する--失踪人課に期待されているのは、実のところそんなものなのでしょう。
彼が育てた、有能で頼もしいアルバイトの助手(現代の作品ならスーパーハッカーみたいな人物造形がされそうです)も、コンピュータ課から
「失踪人課にはもったいない、こちらに寄こせ」と手を伸ばされていてうんざりです。

登場から一貫して世を拗ねたような皮肉屋ぶりを発揮するパウダー。
長年こんな扱いなのだったら、こうもなってしまうよねとも思うし、一方では
「そんな口のきき方をするから嫌われるんだよ」と思わないでもなく、彼の事件への誠意がやるせなかったり、事件そのものよりも彼の署内でのポジションの危うさにやきもきしたり…

物語はいわゆるモジュラー型。
失踪人課を1人で切りまわしてきたパウダーは一つの事件にかかりきり、というわけにはいかず、管轄内で発生した複数の案件を、同時に処理していかねばなりません。

たとえば、衣服を脱ぎすて、手荷物とともにそれを燃やしてしまってから、銃で自殺を図ろうとした若い女。彼女について失踪人届が出ているかどうか、それを照会するだけで済ませない彼は、彼女ががんとして口を割らない、その身元を確かめるため何度も面会に出向き、あちこち遠出しては彼女がそこまで用意周到に死を求める理由を突き止め、最終的にはその身を守るため、私費で私立探偵、サムスンを護衛につけます。

あるいはまた、当地に仕事探しに出てくるはずだった姪が、当日現れなかったと訴える移民の女。
これも、そのあやふやな英語を何とか聞きとり、届を受けつけるだけでいいと思われるのに、失踪人が若い女性ということで類似の事件が発生していないかという統計を取り、長距離バス会社やタクシー会社と連絡を取り、その足取りを確かめようとするパウダー。殺人課の刑事が動かないので自分で電話をかけるしかないのです。
失踪当日、唐突に仕事を辞めたタクシー運転手がいることを突き止め…

自由なところのある恋人が、突然姿を消したという若い男。
妻が戻ってこないという商店主。
遺棄されていたのに、死因が病死であったために事件性が低いとされた女の死体。
怪しいチラシが配布されているが詐欺か、泥棒の下調べなのではないかと言うパウダーの知人。
配属されたばかりの新人の部長刑事(それなりに有能であるのですが、若く美しい女性なのでいつも色々な男性につきまとわれ、何より同僚を庇って大怪我をし、車いす生活を余儀なくされたという話題性から署の広報担当者が食指を動かしていて扱いにくい)。
離婚した妻の元に身を寄せていたはずなのに、突然現れた上、怪しい行動を繰り返す実の息子。
何もかもが、パウダーにとっては悩みの種です。

もちろんパウダーの刑事としての勘が狂うこともままあります。
自分が無神経にも強硬路線をとったために、被害者の心を傷つけてしまったという反省。
自信満々で死体を発掘させたのに何も出てこなかった、という間の抜けた失敗の繰り返し。
それでも本筋は間違っていないはずだと自分を励まし、昼夜の別なく働き、休日はドライブを装ってまで捜査に出向き、経費は私費で賄い、事件解決の手柄は部長刑事のものとする。
彼がほんとうにただ、被害者のことしか考えていない人物であることを理解しているのは、旧知の仲であるサムスンと、美しい部長刑事だけ。

フロストもそうですが、こういうおじさんには弱いです。
ただフロストと違ってパウダーはひねてしまった分、だいぶ辛気臭そうですが、
「料理できないんだろう?仕方ない、俺がやるよ」とか言ってくれるところはポイント高い。部長刑事には
「いい趣味してる」と言いたいです。
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