LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

いや、今日も冷え込みましたね。過去60年で最大の寒波だと言うことですが、わたし自身鹿児島が吹雪いている絵をニュースで観てかなりびっくりしました。一度大晦日の夜にバイトの関係で鹿児島に着いて、駅前の雑踏、見渡す限り自分以外ロングコートを着ている人がいない、という経験をしたもので。
実際、秋物の上着で十分なくらいの暖かさだったんですよね。
あれ以上暖かい冬というと八丈島以外記憶がありません(オーストラリアは季節がひっくり返っているので別)。

寒い日にふさわしい寒々しいタイトル…というわけじゃないのですが、
「マルティン・ベックシリーズを凌ぐ」
「北欧ミステリの新星」
というすごい惹句に思わず手にしてしまったこれを読了。いや、スウェーデンで冬にボイラー壊れたら嫌でしょうね。

氷姫 エリカ&パトリック事件簿(集英社文庫)
カミラ・レックバリ著 原邦史朗訳
氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)
(2009/08)
カミラ レックバリ

商品詳細を見る

しかし、宣伝文句が派手すぎるのはあまりよろしくないなあというのが第一の感想です。
マルティン・ベック持ち出されたら、自ずと期待値があがってしまうじゃないですか。それがなかったらもうちょっと、以下の感想文が好意的になったんじゃないかなあと思います。その辺りの脳内補正をよろしくお願いします。

素晴らしい海の眺めと、立ち並ぶ古く趣ある屋敷群が、今なお観光客たちの心を惹きつける海辺のリゾート、フィエルバッカ(作者自身の生まれ故郷でもあります)。
しかし実際には漁業とその関連企業以外ろくな働き口もなく、若者はストックホルムなどの都会へ出ていき、屋敷を維持できない中流階級の家庭は都会の金持ちに“夏の別荘”として次々と売り渡す、そんな衰退しかけた街が、物語の舞台。

この町の出身ではあるものの、ご多分にもれず普段は裕福なビジネスマンである夫と共に都会に暮らし、自ら画廊を経営する美しい女、アレクサンドラ。

彼女がこのところ週末ごとに帰ってきていた両親の古い家で、氷づけの死体となって発見され、彼女の古い友人であり伝記作家でもあるエリカは、アレクサンドラの両親に依頼され新聞に掲載するための死亡記事を書くことになります。
その死に接し、美しく魅力的な、しかしどこか他人に心を閉ざすところのあったアレクサンドラのことを、自分は何も知らないと今さらに思い知ったエリカは、当初自殺とされ、後に殺人とされたその死の真相を、彼女の人生を知りたいという衝動にかられ、事件にのめり込んでいき--やがて次々と姿を表す、<クローゼットのなかの骸骨>。

ということで、
「事件の解明を通じ人間という最大の謎に挑む」という趣向や、
「古い記憶のなかに潜む鍵」という構成は実にわたし好み。また伝記作家であるエリカが
「自分は推理小説など書くつもりはない。あんなふうに人の死を玩弄する趣味はない、自分は人間というものを描きたいのだ(maki意訳)」と持論をかますところもミステリファンとしてはお手並み拝見と思っていたのですが…

うーん、これほんとに、そんなにスエーデンではヒットしてるんですか?
何と言うか…普通、なんですが。

エリカの恋愛は読み終えてもなんでこの2人がくっつくのかよくわからず、エリカの妹のエピソードも、本書を貫く一つのテーマ、<母性>というものに絡んでくるのだろうとは思うのですが類型的です。
とくに物語世界を豊かにするとも思えず、本筋とも関係ない描写が、まああってもいいのですが本書の場合、ちょっと長い印象があります。もっとすっきりまとめられたのでは。

エリカが事件に絡む辺りの流れは自然だったのに、その捜査がいつも警察の先を行っているっていうのもいただけません。特に、“それ”を初動捜査で取りこぼしちゃだめでしょ、ふつう事件の発覚直後にわかっているでしょ、という情報を、エリカが後から現場に潜入して入手したりするので、そういうところでスリルが失われます。それが一度や二度じゃないので、探偵役が不必要に万能になってしまっている感じ。

それに、子世代を破滅させ、その人生を狂わせる母性の恐ろしさというものをもっと、こう、描いてくれてもいいと思うのに、そのあたりの描写はうすく、「驚くべき真相」とやらも、この頃の推理小説では2冊に1冊が扱っているようなもの。
過去の犯罪を掘り起こすものでは失われた記憶が甦る、そのスリルが前面に出た、クックみたいな切り口が好きだし、事件に影を落とす社会問題を語るならそれこそマルティン・ベックのほうが読み応えがありました。
シリーズを通じ大河ドラマのような登場人物間の関係の変化を描くなら、エリザベス・ジョージ(レック自身ジョージをお手本とした作家の一人に揚げているそうですが)みたいなやり方が好みです。

点景として描かれるキャラはそれぞれ魅力的なのです。
事件の発見者や目撃者、容疑者、そしてターヌムスヘーデ警察署の面々。しかしほとんど事件に絡んでくることなく、物語の大半はエリカと、その幼馴染、パトリック刑事の周辺で完結してしまう。せっかくのキャラが動き出さないのです。
だったら作者が批判している、登場人物が単にプロットの駒となっているだけのミステリの方が簡潔さ・わかりやすさの点では上ではないかと。大きな欠点はありませんが、欲張りすぎだなあと思います。特に複雑ではないストーリーに600ページ近くかかっているのはそういうことではと。
解説によれば作者は名文家だそうで、もしそうなら大きな魅力だと思いますが、スエーデン語のわからないわたしには豚に真珠。

いや、いろいろ言ってますが、わたしは基本、主人公が気に入ればすべておっけー、なんです。
そこが一番の不満なんでしょうね。
エリカを気に入った方には、面白いのではと思います。
あとやっぱり、惹句で持ち上げすぎ。期待したぶん、落胆が大きすぎてちょっと八つ当たり気味になってしまいました。
関連記事

style="clap"














管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://maki555.blog88.fc2.com/tb.php/1571-3164d64e

| ホーム |