LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

トレイラーを観て一目惚れ、しかし新しい映画館が車必須のところにしかない、そういう土地柄のために危うく見損ないそうだった映画がこのところ多いです。
ライダー映画のほうはほんとうに諦めざるを得ないわけですが(DVD楽しみにしてます)、これはどういうわけか地元のミニシアターが遅ればせにかけてくれたため、なんとか観られました!

「特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙--あるのは正義を愛する心だけ!」という惹句のとおり、主人公は冴えない平凡な高校生、デイヴ。余談ながら彼の変身姿を見ると伊藤慎さんや高岩成二さんがどれだけ神プロポーションかと思います。デイヴ役のアーロン・ジョンソンは“冴えない”感じを出すために運動を控え、筋肉を落とし、スーツをだぶつかせるという役づくりをしたそうです。



「だれだってヒーローになってみたいはずだろ? なぜやらない」と相手がマンガオタク仲間だとはいえ、あっさり口にしてしまえる彼は、愛すべき正義感の持ち主です(友人には「マジにやったら死ぬだろ」「AV展開がないからさ」とご尤もな答をもらいます)。
ある日、通販サイトでヒーロースーツを見かけたとき、彼はついにその一歩を踏み出し、そして、紆余曲折はあったものの、困っている人を街のチンピラから救うことに成功します。
その様がyoutubeで流されたことから一躍有名となり、彼のマイスペースには大勢の人のコメントが。
そして同じく正義の心に目覚めた人々によりヒーローの輪が広がっていき--というあらすじを知ってしまったら、これは観ずにはいられません。
おまけにヒーローのひとり、ヒット・ガールを演ずる子役、クロエ・グレース・モレッツの愛らしいこと、そしてそのアクションのクールなこと!
喜び勇んで行ってきました。以下、ネタバレ気味な感想文。
ということでわたしはこれをめちゃくちゃキュートな映画だと頭から思い込んでいまして、これは小さいお友達……の夢をやぶってしまうかもしれないけど小学生高学年とか、中学生くらいの子には観てほしいと自分が観る前から思っていたのですが、一度観れば納得のR-15指定。

暴力表現に限った話ではないのですが、あちこちにえぐ味があるのです。
(それにしても「スパイダーマン 濡れた夜」はちょっと観てみたいかも)

我等がヒーロー、キック・アスの冒険をめぐる本筋はかなりキュート。そのアクションはぶざまで可愛く、さんざんな目に遭わされてもくじけない彼の精神はかなりタフ。
彼と偶然のうちに接点ができてしまう本物のヒーロー、いやダーク・ヒーロー的な存在、ヒット・ガールとビッグ・ダディをめぐる物語はシリアスで哀しく、しかもそのアクションはクールの一言。ビッグ・ダディを演じるのはジョン・ウーの諸作品などアクションものも多いニコラス・ケイジでバットマンに似た変身スーツは重厚です。
物語は単純でテンポよく、ほとんどの登場人物は愛すべき人々で、基調はあくまでコミカル。
ラストは胸のすくような正義の勝利。
それが混ざるとなんでこんなにえぐいんだろうと、時折われに返りながら観てしまいました。

正義を行おうとする過程で、主人公は何度もグロテスクな現実を見せられます。
彼が困っている人を助けようとして、街のチンピラにふくろだたきにされるさまを、周囲の人々はただ見ているだけ、否、何かのショーのように
「すごいぞ!」と興奮し、携帯で動画を撮り、youtubeにupするだけ。怯えるでもなく、警察を呼ぶなどの協力をするでもなく。

「僕はもう、見ているだけは嫌なんだ!」

彼の勇敢さを嘲笑うかのように街のワルは強く、キック・アスは何度も死にそうな目に。
それを救えるのはヒット・ガールのような非情のシリアルキラーだけ。
「君は好きだが信用しない」と言うもう一人のダーク・ヒーロー、ビッグ・ダディのセリフに傷つきますが、言い返せないのはそれが現実だと、信じてくれと言えるだけの力は今の自分にはないと、彼が徐々に気づいてくるからでしょう。
彼の活躍に影響されて正義に目覚めた人々が増えるわけではなく、それぞれのエゴ、思惑あってのコスプレだったと知らされる中盤、特に自分の失敗によって幼い少女がたった一人の戦いに追いやられるのだと悟るあたりもつらいくだりでした。

「僕は今まで何をした? 何も」

そして現実を知った彼が、ついにほんとうの意味での戦いに立ち上がるのですがここから終盤のアクションは実に圧巻。主に戦うのはヒット・ガールですが、
「おいおい、児童虐待じゃないか?」とそのピンチに現れる彼のセリフもなかなか決まっています。
戦いは終わり、みんな元の生活に戻ってメデタシメデタシ、とならず続きに含みを持たせているあたりもこの映画のえぐ味のひとつ。

結局これは少年が勇気を持って現実に一歩踏み出した結果、大人になる、という脱モラトリアムの話なんだなあと感じました。
構図的には似ている「魔法使いの弟子」「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」も観たのですが結局主人公達は冴えない現実と戦う平凡な高校生に見えて実は運命の子。やがてその秘めたる能力に目覚めていきます。最初から最後まで平凡すぎるデイヴとは全然違います。またデイヴは運命の渦に巻き込まれたわけでは決してなく、ヒーロースーツを着て街をパトロールするという、誰に強制されたわけでもない滑稽な行動を自ら選択したことで別の世界へのドアを開けたわけです。
再々書いた通りえぐい部分がありますので、誰にでもお勧めできるとは思いませんが、それでもキック・アス/デイヴは可愛いヒーローであり、そして哀しい運命ではあってもヒット・ガール/ミンディのかっこ良さは異常でした。ヒット・ガールメインのトレイラーがあったので貼ろうと思ったのですがyoutubeにアカウントを作らないとダメな内容であるため断念。要は予告も“不適切な内容”扱いになってるというわけです。

なお「魔法使いの弟子」はBDで観まして、その特撮効果の念の入れように驚いたのですが、特典映像でもご丁寧にメイキング&解説がなされていて面白かったです。監督自身インタビューで
「どうやって撮った?って聞かれるのが最高の褒め言葉」と言っていたのですが、ほんとうに得意げに、惜しげもなくその技法を解説しています。ストーリー的にも破綻のない王道中の王道、ラストは大団円で安心して観られますのでお勧めです。

この「キック・アス」も3月にはディスクが出るらしいので、メイキング目当てでたぶんレンタルするかも。おまけといえばこの作品はコミカライズと映画製作を同時進行で行ったらしく、オリジナルコミックがつくそうです。
作中でもビッグ・ダディが自己の物語をコミックで立体的に表現している部分があって、映像として面白かった。以下はアメリカで流された血まみれなトレイラーですが、こんな風にコミックがそのまま出てくる訳ではありません。

1/22追記。
ヒット・ガールを「ダークヒーロー」「シリアルキラー」と書きましたが客観的にはやはり、そうなのです。
街のワルたちは強く、確かに殺さずに勝つ手段など単独で戦うヒーローたちにはないわけです。それを避けようと思えば組織力のある警察にまかせるか、もしくは何かファンタジックな、特別な能力を用いるしかない。
つまり正統派ヒーローの戦いは、運命に選ばれていない凡人には無理、という当たり前の事実が描かれているのです。

そして、ビッグ・ダディ、ヒット・ガールの思考に、
「できるだけ殺すのは避けたい」というような躊躇もありません。躊躇があれば勝てない。
殺すのが正義か、と言われればそれは明らかに違い、彼女たちに処刑されるワルたちの大半は実際、そこまでの悪事を行っていないのですが(まあワル仲間うちですら人の命が極めて軽いみたいなのでちょっと殺しても別に構わないかもとも思うのですが)そもそもキック・アス以外は誰も正義など名乗っていない。

無邪気なオタク少年が、スカルマンを連想させる孤独な私闘を垣間見てしまう、その苦さがわたしにはえぐ味に感じられたのだろうなあと思います。
最初の感想では、
「ロボコップみたいだ」と思いました。初代の。

その一方で何度も書きますが、ヒット・ガールの戦いは実に圧巻。
正義か否かといったヒーローの苦悩や躊躇が好きなわたしとしてはどう心のなかで整理したらいいかと迷うのですが、一片の躊躇もなくただ一心に殺す、それだけを考えている彼女の動きとその子どもらしい、小さく軽い身体、この取り合わせが実に美しく、不思議な爽快感があります。パンチとキックで敵を倒す、マッチョなヒーローたちとは違う。ヒット・ガールはどうかすると自分よりも大きそうな数々の武器を振るい、敵を圧倒しますが、蹴られたり殴られたりするとそれだけで簡単に身体が吹っ飛んでしまいます。
今までも、そしてこの先どうあっても、マッチョになることのない人間には、彼女の活躍はたまらなく魅力的でした。
R-15のためご本人はまだ当面自分の出演作が観られないそうなのですけど。
関連記事

style="clap"














管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://maki555.blog88.fc2.com/tb.php/1769-838880bb

| ホーム |