LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

チャーミングな映画でした。

イン・ザ・ヒーロー

正直なところ、この映画を観るには、例の騒動の一端に触れたことのある特撮ファンとしては、すこし、勇気を鼓舞する必要がありました。同じような触れ込みの映画としては「ヒーローショー」というのもありましたし、そしてまた、いざ「イン・ザ・ヒーロー」の予告が始まれば、ジャリ番、日陰、役者じゃないと、トラウマワードのオンパレードですし。

しかしビビり過ぎでした。観てみればチャーミング、としか言いようのない映画。愛らしく、愚かしく、ささやかで幸福な。
そしてどこか懐かしい。

嫌な言葉を口にするのはその性格もわかりやすく嫌なやつばかり。
そして唐沢さん演ずるベテランスーツアクター・本城渉をはじめ、どの登場人物もタフで愛嬌たっぷりで、ふだんは
「わからないやつは言わせとけ」、
そしていざとなれば
「アクションナメんな!」の気概の持ち主、プロフェッショナルばかり。嘲られて拗ねたり、妙なルサンチマンをたぎらせたりという人は一人も登場せず、斜めに構える視点もなく。あくまでも淡々と、特撮ヒーローという日本のアクション番組、アクション映画をつくっている人々の物語になっていました。
だからこそ見ていてごく自然に、ヒーローになりたいという本城の、そしてハリウッドアクションスターを目指す新人・一ノ瀬リョウの、それぞれの夢を、応援する気持ちになれたのではないかな、と思います。
そして後半は、純粋にアクションを楽しみました。
主人公・本城の部屋にはブルース・リーのポスターが貼られ、
「自分のヒーローはブルース・リーだ」というような台詞もあるのですが、この世代は確かに、ブルース・リーによって幼い頃からアクションに慣れ親しみ、アクションものの邦画やドラマをいくつも観て育ってきた幸福な世代。
だからこそ自分も誰かのヒーローに、という夢を、ごく自然に抱いた世代。
(その少し下になるとアクションやスタントの世界に入った理由にジャッキー・チェンを上げる人が増えます。)
しかし80年代以降、アクションメインの映像作品は急激に少なくなっていきます。特に、刀を使う殺陣は。

たまたま本城が出演することになった劇中劇のハリウッド映画(なんとなく「ブレード」と「ブラインド・フューリー」が混ざってるっぽいイメージ)は、もともと一ノ瀬がオーディションを受けていた映画でもあります。
合格のため剣殺陣を教えてほしいと、本城に頭を下げる一ノ瀬。
「受けだけで3年かかる。舐めるな」と叱咤されつつの神社の境内での練習のあたりから、本城自身、役のため体を作り直す訓練、殺陣の手合わせ、本番撮影と、アクション、アクション、アクションの連続。
特にクライマックスシーンは15分くらいたっぷりの殺陣三昧。
ここは、
「決死の」
「空前絶後の」
「誰にもできない」
という大仰な宣伝文句の割には普通な(しかも設定に反しワイヤーもCGもカットわりもありあり)スタントですが、だから簡単だとか大したことないというつもりはありません。
ハリウッド映画にありがちな、妙に中華趣味な提灯のいっぱい下がった本能寺。
その炎上の焔。
それを背景とした百人抜きだけでも十分に見どころたっぷり、迫力満点のシーンで、実際近年ここまでの作品はそうそうなく、
「東映の本気」という言葉が頭をかすめます。
アクション好き、特に忍者好きとしてはたまりませんし、「闇の軍団」松方弘樹さんが松方弘樹役で敵の棟梁を演じているのがうれしくて、途中までストーリー忘れ純粋に堪能してしまいました。
贅沢を言うならば、これほんとうにワンカットだったらすごいだろうなあと(無理)。

また、撮影に臨み真っ白い忍者装束に身を包んだ本城の、目元の涼やかなこと、首のすっきりと伸びる線の美しいこと。
死地に赴く武士にも似た、唐沢さんの正統派イケメンっぷりにもくらくらします。
主役の登場に敬礼する撮影所の守衛。
相手役の忍者百人が集合し、本城を迎えてまるで黒ぐろとした海が割れるように、道を開ける――スーツアクター好きには見慣れたお顔がちょこちょこ見えます大興奮シーンでもありますが、この辺りに示される主役への敬意の深さは、やっぱり「蒲田行進曲」を思い出しました。

懐かしいというのはあれです。
まずは冒頭、本城がレギュラー出演しているヒーロー番組の作りのチープさ。これは現実のニチアサ特撮というより(今はもっと洗練されてます)、普通のアクションファンが記憶している、昭和のヒーロー番組へのオマージュ。
「この役に」と請われて打ち合わせに出たはずなのに、行ってみれば
「話が違うよ。おねがいしますよ…」と言いたくなるような役だった、というのはわたしですら経験のある“あるあるネタ”。
ヒーローショーでは意外な人物が影マイクで声をあてていますし、ピンチのシーンでは、子どもたちの声援がヒーローたちの力に変わるという演出。
仲間内の結婚式では祝福代わりのヒーローショーが定番で、拉致された新婦を救出するレッドはその日の新郎、というのも。
夢を追う切なさ、楽しさ、仲間の暖かさ。自分自身の才能や情熱に、自分で見切りをつける苦さ。
わたしにはスーツアクトの経験はありませんが、それでも若い頃のことが、いくつも思い出されてほのぼのしました。

スタッフロールも見逃せません。
映画のために撮影されたカットに混ざり、実際のスタント撮影の資料映像がいくつも入ります。唐沢さんと、あとオフィスワイルドがお蔵出ししたのかなあ?
「映画は監督のものだよ!」と日本人みたいな主張するハリウッド監督はご愛嬌で、実際はだいたいのことが違約金でかたがつきそうですが、そこをリアルにするとこのお話は成り立ちませんからね。
あと、スーツを着た時の視界の狭さは実際のほうがもっとひどいものらしいですが、細かいディテールについては、柴原さんの
「恥ずかしいけど、唐沢さんがやるなら本物だと思って」という発言通り、ある程度はリアルな出来じゃないのかな、と思います。
ありがとう福士さん(´;ω;`)

FUKUSHI SOTA official blog「インザフォーゼ」

番外ispy。わたしも唐沢さんの表情とか声の出し方とかが一部、高岩さんに思えたりして(「おれがやらなきゃよ」のところ)病が重いなあと思ってたのですが、一年フォーゼで鍛えられた福士さんにもそんなふうに見えるんじゃ仕方ない、ですよね。
同日追記。一応説明しておこうと思いますが愚かしいというのはあれです。本城と、別れた妻子との不器用な関係のすべて。
唐沢さんが「トイ・ストーリー」のウッディにしか見えないシーンがありまして腹筋痛かったです。
2015/6/11追記。何がきっかけかわからないのですが本日いくつかこの映画についての批評が流れていたのを読んで。
前情報からもっと良いものを予想していたのに期待はずれだった、とかいくつかの突っ込みどころがあり興ざめだった、というものがあって、その根拠としてあげられている本作品の欠点のいくつかについてはなるほどなあと思ったのですが、にもかかわらずこんなに最後に持つ感想が違うなんて、と、そんなことに驚きました。

1)脚本の練り込みが足りないという批判

これはわたしも感じました。いくつかカットしたほうがすっきりするシーンもあったし、逆にこういうのがあったほうがいいのでは、と思う不満もあった。
たとえば、若い一ノ瀬にロートルの本城が役を取られた、という冒頭のエピソードも、そもそもあの劇場版ゲストの設定ってどうなっていたの? と思ったりします。高校生とか巡査とかいう設定なら、本城では実年齢がかけ離れすぎていて考えにくい。
同じ映画に出演するのだから、本城と一ノ瀬の共演シーンがあったほうがいい、と書いていた方もいらっしゃいましたが、まあ、わからないでもない(ただあの段階では一ノ瀬はすでにH.A.T.のファミリー的な心情になっていて、自らバイクを飛ばし、撮影所まで本城の家族を招いていて、それもありだと思うんですよね)。

全然ジャンルが違いますが、ピクサーアニメのメイキングを観ると1本の脚本に3年、5年とかけていて、何度も関係者間でディスカッションを重ねていると説明されます。そのせいかほとんどノンストレスで(内容に不満がないという意味ではなく、とにかく脚本が滑らかで緩急も見事でひっかかるところがなくぐいぐい引っ張られて観てしまえる王道の語り口)最後まで行けます。

2)クライマックスのアクションシーンの荒唐無稽さ

「あれだけノーCG、ノーワイヤーと言っておいてw」というのが最大の突っ込みどころでしょうか。見るからにCGもワイヤーも使われていそうですしそもそもワンカットじゃない。
本城が出ることになった理由(出演決定していたアクション俳優が急遽降板)自体、あまりありそうにない話です。危険だから辞退した、より、撮影中怪我をして降板とかのほうが自然だったように思います。
あと、首が首がと散々言ってたのに、本城がその対策をして撮影に臨んだように見えないのもまずいと思う。
ただまあ、わたしとしてはあのアクションが観られただけで十分お釣りが来るほどの満足度だったのですが。

3)エピソードが全体に古い

ものすごい昭和感が漂っていましたよね。

で、個々の気になる点、突っ込みどころは、この映画を批判している方もわたしもそう変わらないように思うのですが、わたしは上にも書きました通り、全体の感想としてはほぼ満足だったのです。プラス、ラストのアクションで高揚しまくって、終わりよければ全て良し! という気持ちになってしまったのです。

なぜかというと、わたしはこれを“役者バカ”の映画だと思って観ていたから。

「蒲田行進曲」同様、舞台や銀幕の上でのみ観られる夢、すなわち現実世界における“嘘”のため命をかける、愚かしくも愛すべき人々を描いたもので、登場するものはプロデューサーや監督もふくめ、ぜんぶカリカチュアライズされているんだと。内容が荒唐無稽であったり多少つじつまが合わなかったりすればするほどマンガっぽく、パロディっぽく見えて面白かったのです。
「ノーワイヤー」と言いつつぬけぬけとワイヤーを使う、というのは、「蒲田行進曲」でいえば、
「階段落ちしたヤスはどうなった?」というクライマックスの直後、いきなり全員にこにこ揃ってのフィナーレに雪崩れ込む、あのシーン(この話はフィクションです♬とばらして強調する)に通じるものがあると思って観ていました。

で、十分愛すべき人々の愛すべき点を堪能し、いやみなPや無茶ぶりの監督に対してはいるいるこんな人と思いつつ、それによって本城の爽やかさが引き立って、しかしラストでかっこ良く決めたと思ったらやっぱり大丈夫じゃなくて全身包帯で、やっぱりこいつは役者バカだった……というエンディング。
唐沢さんの白忍者は立ち姿も美しく、現役スーツアクターでもあるベテランの方々が画面に乱舞する豪華さに至ってはもうあまりの幸福にトリップしそうになってました。
そんなわけで、批判する方に細部では賛同しつつ結論としてわたしはこの映画が好きですし、おなじ感覚の方にはぜひお勧めしたいと思っています。
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2014.09.08 00:16 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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