LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

園咲一族の最期。
華々しくも絢爛たる消失。
失われた名誉と富、幸福の記憶。
その華麗さに酔えとばかりに、壮麗なシーンでした。地下の“泉”もですが、しばしば登場した豪奢なダイニングホールは、この家族の歴史をすべて見てきた象徴的な場所なのでしょう。
すべてを灼き尽くす紅蓮の焔に冴子様と一緒にただ見蕩れつつ、彼女の実母=前妻は登場するかと思ったらとうとう説明一切なかったなあとか余計なことを気にしていたり。
そしてこれは、翔太郎が恐怖に打ち克ち、相棒を取り戻す話でもあります。
奇跡。切り札は自分だけ。未来。悲しみが終わる場所。


Reddish Vale 1957. Smabs and Dad / Smabs Sputzer


ラスト、ようやくにして財団Xが、その本性を露わに?
必要なもの

風都博物館前庭。
衝撃的な事実を受け入れがたい翔太郎。
フィリップが死んでる?
「そこにいる来人は人間じゃないわ」艶然と笑む若菜。「データの塊よ……人類の未来を変えるのに必要な」
「もう終わりにしよう」そしてたたみかけてくるテラー。
青いテラークラウン、饕餮を象ったと言われる(前回キジムナーっぽいと書いた)それが宙を舞いつつ、顎からトライアルを落とすと、その装甲は微塵に砕け、襤褸となった竜が地に転がります。
「照井竜!」その惨状にショックを受けるフィリップ。
「はっはっは! さあ、来るんだ来人」
「ぼくは物じゃない! 翔太郎! ――翔太郎、変身だ」取られた腕を振り払い、翔太郎の元へ駆け寄るフィリップ。すがるような目。しかし翔太郎はまだその恐怖から立ち直れていません。
「ああ……」
震える手でなんとか装着するベルト。サイクロンジョーカーエクストリーム出現。
「はっはっは、無駄なことを」それすら嘲笑うテラー。無理やり気を奮い起こして殴りかかるも、テラーの軽い一突きで、吹き飛ぶその身体。昏い波動にとらわれ、たちまちのうちに解ける変身。

「これが真の恐怖だ……ようこそ、わたしの世界へ?」

ようよう起き上がり、座したまま後ずさりする翔太郎の前で、変身を解いてみせる園咲。
「きみはもう終わりだ。一生、恐怖の中に生きろ」
「うわああああああああああああああっ!」
両手で頭を抱え絶叫する翔太郎。その姿は、来人を取り上げられた時の文音と重なります。
「ひっ」
翔太郎を廃人寸前まで追い込み、次には一部始終を見ていた響子のもとへ、屈みこむ園咲。
「ああなりたくなかったら、わたしのことは忘れ給え、轟くん」
「さあ、来人?」そして、翔太郎の傍らに気を失い倒れたままのフィリップを、抱え起こす若菜。

<terror>

再びの地球の呼び声ととも周囲はテラーの発する昏い波動に満ち、そのなかにずぶずぶと沈んで消える、テラー、若菜、そしてフィリップ。
残されたのは気絶したままの竜、恐怖に叫び続ける翔太郎、そして、信じがたいことの連続に、呆然となった響子。

晩餐への招待

ホテルの一室。マニキュアに彩られた指が握るのは、一通の招待状。裏返し、差出人の名を検める冴子。
「父がこれをわたしに? 何の冗談なの」
「勝利宣言、ですかね」ことづかってきたらしい、加頭。「行けばわかるのでは」
「!」便箋を開いて一瞥し、あとはくしゃくしゃと丸めつぶす冴子。文章は読めませんでしたが手書きでした。まめです、園咲。

鳴海探偵事務所。
甲斐甲斐しく竜の手当をする響子。
一方、毛布にくるまり目を見開いたままの翔太郎のほうは、亜樹子が世話を焼いています。
ココア飲んで、と優しく声をかけられる、たったそれだけの刺激ですら、また発作を起こしかける翔太郎。灯りをつけることもかないません。
ここで夏祭りに浮かれ騒ぎ、その勢いで事務所を訪れる刃野、真倉コンビが登場するのですが、かれらも翔太郎のただならぬ様子に息を呑むばかり。
怯えて狭いキッチンに潜り込み、ただ追い詰められた獣のように目を見開き、息をつくだけの翔太郎。正気を失ったかのような異様さに、わたしのせいで、とうなだれている響子。

白いベッド。ふと目覚め、飛び起きればそこは豪奢な部屋。園咲邸に運び入れられていたフィリップ。
シャンデリア輝くホールの階段を降りれば、どこからか園咲の笑い声が聞こえます。それを頼りにダイニングまでたどり着けば、正装し笑いさざめく父と次姉・若菜。
「遅かったな、来人」
そして、若菜の隣には長姉の冴子が、シンプルなワンピース姿でただ前を見据え、座っています。薔薇色のドレスに身を包み幸福そのものの若菜とは対照的に硬い、その表情。
「今日はわたしの手料理を振る舞おう!」と上機嫌な園咲。「若菜の門出を、家族全員で祝おうじゃないか」
しかし席は5つある、と思ったら、フィリップの傍らをつかつかと追い越していくのはなんとシュラウドです。園咲の前にぽいと招待状を投げ出し、一番末席の椅子をひく、黒衣のシュラウド。

(父と母と、2人の姉に……ぼくの家族が、全員揃った……?)

園咲家正門。物陰より走り出て、その鞭を門扉上部に巻きつける響子がいよいよインディ・ジョーンズです。

園咲家ダイニング。残る一つの席、本日の主役である若菜の次席、園咲の手前に、腰かけているフィリップ。
パンを手に、心ここにあらずという表情です。
共に園咲を憎んでいながら、険しい表情の冴子、無表情のシュラウド。
彼女たちの怨念を知らぬげにただ幸福そうな園咲と、その寵を一身に受ける若菜。

(これが……家族の、食卓……?)

「この日が来るまで、長かったねえ」話し始め、スープを一口味わう園咲。「うむ。憶えているかね、あの、みんなで発掘していた日々!」

発掘品の土を刷毛で丁寧に払う父の手元を、しゃがみ込みうっとりと眺めていた幼い来人。
「さあ、踊ろう母さん」
食事の後は藤色のドレスに身を包む文音を招き、ワルツを踊る園咲。そんな両親の周りを、うれしそうに回っていた来人。
愛らしいドレス姿の姉たちは、それを見て拍手していた。


しらじらとした表情で園咲の言葉を聞き流す冴子、一言も口を開かないシュラウド。
あの日からどれだけのものが変わってしまったのか。

団欒

「わたしはちょっと怖かったですわ。暗い井戸が」と若菜。
「ああ若菜はそんなことを言っていたねえ」頷く園咲。
フィリップはパンばかり食べています。
「でも大丈夫だ。これがある」銀の鍵を若菜に示し、卓上の小箱の、鍵を外す園咲。それは<イーヴィルテイル>の箱。引き続き蓋を持ち上げようとしたその時。

「みんな!」それを止めるように声を上げるフィリップ。「今までの経緯はともかく、せっかく家族全員が集まったんだ。これを機に、……争いをやめるべきだ」

あまりにも唐突、と思っていたら早速、
「ふ、うふ……」と吹き出す冴子。「あははははは! 家族? 笑わせないで来人。死人は黙ってなさい。こんな呪われた家族に、仲直りなんてできるものですか」
その冷たい視線に動けないフィリップ。
「お姉さまあ?」と若菜。おかしそうに肩を震わせています。「あなただって園咲にとっては死人みたいなものでしょう? ……さんざんわたしを妬んで、家をかき回したくせに」
「なんですって」
「冴子!」立ち上がる園咲。「はっきりといっておこう。この晩餐会は、今日を限りに人間を超えて神に近い存在となる若菜に、お前と文音が懺悔をするためのけじめの席だ」
「!」猛然と立ち上がる冴子。「ふざけないで」
ナスカの声。
そして静かに立ち上がる若菜も。クレイドール。
「やめろ。やめるんだ姉さんたち!」
「結局メモリで戦い合い、か」向かい合う姉妹に、背を向ける園咲。「うちの家族らしいといえば……はは、らしいな」

クレイドールの砲撃をやり過ごすナスカ。立ち上がり猛然と跳びかかっていきます。クレイドールはエクストリームにならないあたり、手心を加えているのでしょう。
うなだれるフィリップ、席を立ち出ていこうとするシュラウド。
「文音?」その後を追う園咲。「帰るのかね」
「わたしはとうに、負けを認めている……」
「待って。待って母さん! 家族を置いていくんですか」後を追うフィリップ。
「お前の家族は……」振り返るシュラウド。「もう、園咲にはいない。左翔太郎がお前の家族。忘れないで? 切り札は、左翔太郎」

息がかかるほどに近づき、ささやきながらふと、フィリップの髪を撫でるシュラウドの手つきが初めて母親らしく、その母をみつめるフィリップの表情が切ないです。

「左翔太郎か。あれはもう、なにもできん」
聞き咎める園咲。彼らがシュラウドの退場に気を取られている間、ダイニングテーブルの下から這い出してくる響子!
そっと、<イーヴィルテイル>の木箱から、中身をつかみ捕ります。
「……再起不能だよ。はっはっはっは!」それに気づかず、哄笑する園咲。

(翔太郎が……切り札……)

ジョーカーすなわち切り札。
風の佐平次編では江戸時代だったから文字通り「切札」という木札で変身してましたし。

力尽きた小鳥

「ふっ!」
暗い庭。向かい合う姉妹。剣を振るってもただずかずかと歩み寄ってくる妹に、何ら痛痒を与えることができず、後退るだけのナスカ。力の差は歴然としています。
もう後が無いところまで追い詰められ、胸にクレイドールの砲身を突きつけられて、呻くナスカ。
「わたしには勝てない。この場で悔い改める? お姉さま」
「死んでもごめんよ」
「ならば死ぬのね!」
ゼロ距離砲撃。暗闇に幾度となく散る火花が美しく、苦しげな悲鳴をあげ倒れ転がるナスカ。

ここでようやくとどめを刺そうというのか、エクストリームになろうとするクレイドール。
その隙をつき、羽を広げ舞い上がるナスカは、クレイドールの黒々とした巨体に比べあまりにも可憐です。ほんとうに綺麗でした。冴子さんはボロボロになった姿が美しい。たちまち叩き落とされ、胸を踏みつけられるナスカ。
変身を解かれ、次の瞬間、脱兎のごとく庭を駆け去っていきます。
「さよなら、負け犬さん♡」そして、笑って見送るエクストリームの声が、これまでとはすっかり変わって不気味です。

曙光差し込む鳴海探偵事務所。満身創痍の2人にも朝は訪れます。電話の音に起こされ、怯える翔太郎。
代わって起きてきて、電話をとる亜樹子。
「はい、もしもし。え? ……翔太郎くん!」思わず習慣となっている金切り声を上げ、また翔太郎の精神を脅かします。「フィリップくんが。……何してんの、相棒が連絡くれたんだよ!」
声を抑えつつも、業を煮やし翔太郎の耳元に携帯を押し付ける亜樹子。
「翔太郎?」
「フィリップ……」
「お別れだ」
「……!」
ずるずると崩れ落ちていく翔太郎。
「ぼくは今日、若菜姉さんの生贄にされて。消滅するらしい」電話するフィリップを、間近で監視する若菜。
「フィリップ」
「でも、忘れないでほしい。相棒。ぼくは消えない――きみの心に、悪魔と相乗りする勇気が、ある限り」
若菜の携帯を借りての電話だったのでしょう。フィリップの手からそれを奪い取る若菜。
「なかなか泣ける最期の言葉だったわよ」
いやこれ別れじゃなく、相棒へのヒントのはずなんですが。探偵もの読まないのでしょうか若菜。



「……」
鳴海探偵事務所。キッチンに蹲り、通話が切られたままの姿勢でいる、翔太郎。
「行かないの」静かに問う亜樹子の声がいいです。「なんで? ……なんで今の話を聞いて、事務所を出ていけないのよ!」
わなわなと震える翔太郎の肩を掴み、乱暴に揺さぶる亜樹子。「翔太郎くん!」
「わぁぁぁぁぁぁぁああっ、ああああ、うううううううっ!」

しかしまた発作を起こしたかのように絶叫するだけの翔太郎。打つ手なしか、と亜樹子がまた諦めかけた時、ドアの開く音がします。戦利品を手に、入ってくる響子。

「響子さん? どこ行ってたの」
「箱の中身よ」亜樹子の問には応えず、手にしていた麻袋をテーブルに叩きつける響子。「……<イーヴィルテイル>」
「園咲家から、持って来ちゃったの?」
は、と磊落に笑って見せる響子が、自棄気味に見えますが、亜樹子は心から感心しています。
「どんだけ行動力あるのよあなた! ……てことは、ガイアインパクトやらは阻止した!?」
「勘違いだったみたい」しかし意気消沈したように首をふる響子。「だって、それが何かの役に立つとは思えないもの」
言われて中身を覗きこむ亜樹子。
「これ……翔太郎くん!」
怯えて震える翔太郎の前に、“それ”を突きつける亜樹子。声音を抑え囁やけば、翔太郎もまじまじと“それ”を見つめます。
「……どういう意味だろうね」
「…………」

儀式

園咲家礼拝堂。
独り、祭壇の前に進み出る黒衣の花嫁、若菜はガイアメモリを翳し、クレイドールとなります。
その前には<イーヴィルテイル>の木箱。

***

「風都の人間をドーパントにして集めた膨大なデータが……」言いながらPCのキーボードをたたく園咲。「この制御装置の中にある」
場所は地球の井戸。禍々しく口を開いたその前に、悄然と立つフィリップ。
「街の人達は実験台だったんですね」
「そうだ。地球の記憶のすべてを、この泉の真上にいる、若菜に流しこむ。お前はその制御プログラムになるのだ。エクストリームに到達した今のお前の力なら、可能だ。さあ」
父に肩を抱かれ、顔を上げるフィリップ。
「……ぼくは、消えるんですね」
自分の意志をなくしたかのように、一歩、二歩、進み出るフィリップ。かつて弾む足取りで上がった、立抗に入るための階段を、よろよろと昇っていきます。
「それでこそ若菜は、生きたガイアメモリ製造機、地球の巫女になれるのだ」
父の声をせに、中を覗きこむフィリップ。
「あなたはそれでいいんですか? ぼくが消えても」
「お前は一度死んだ。最早救えない」
「ぼくは、あなたを救いたい」振り返り見下ろすフィリップの、白く整った顔。切ない表情。「父さん」
「2度目のお別れだ……」言って自らも階段を上がってくる園咲。最上段でフィリップの肩を今一度抱き、さらばだ来人、と、その背を突き落とす園咲!
たちまち緑の光が吹き上げ、階上の若菜へ、いや屋敷そのものを突き抜けて天へ、立ち昇っていきます。歓喜して声を会える園咲。

***

緑の光のなかにのまれ、変化する若菜の身体。
園咲邸の上空まで突き抜け、天へと伸びる高い光の柱を、門外から見上げる、冴子。昨晩の晩餐会から服装が変わっていません。若菜に敗れ逃げはしたものの、屋敷を去るまではせず、近くで夜を明かしていたのでしょうか。

阻止

「後数分でうまくいく。すべては……」礼拝堂に戻り、若菜の様子を見守る園咲。頷き、祭壇の<イーヴィルテイル>の木箱へ手をかけます。
「そうはいかせない!」
「!?」
声の主は亜樹子。翔太郎に肩を貸しながら、入ってきます。
「邪魔をする気?」变化(進化?)しつつ振り返る、クレイドールの声がさらに低くなっています。
「ああ……そうだ」頷く翔太郎。
「はっはっは。よくわたしの前に立てたな! 左くん」面白がって前に立つ園咲に対しても、怯えつつ正気は失っていません。
「こいつの謎が」亜樹子の方から手を離しよろよろ立つ翔太郎。麻袋から中身を取り出し、突きつけます。「どうしても、知りたくてね……!」
「<イーヴィルテイル>!?」驚き、木箱を振り返る園咲。中を検め、「いつの間に……返せ! わたしの家族だ
「かぞくぅ?」目を見張る亜樹子。「これが家族だっていうの?」

翔太郎の手にあるのは、発掘品から細かい土などを払いのけるための刷毛。その木製の柄に、5人の名がそれぞれの筆跡で記されています。中心に書かれた<琉兵衛>、そして幼いフィリップが書いたのであろう、<らいと>の文字。

よみがえる記憶。発掘現場で子供たちを呼び集め、おどけてこの刷毛を見せた園咲。
「これはねえ。外国で見つけた魔除け……あくまのしっぽだああっ!」
きゃあきゃあと笑い、目を丸くする子供たちが可愛い。これに自分の名前を書いて、と説明しつつ、まず中央に琉兵衛と書く園咲。
「さあ」と妻に渡せば、ふふ、と微笑み受け取る文音。すぐ下に自分の名前を記します。
「家族全員で祈れば、ずっとずっと、みんな一緒だ!」


「……」
よろよろと、祭壇にもたれる園咲。
「そうか」体力が消耗しているのか、それに話しかける翔太郎の声も、低くかすれています。「あんたは自分が道を誤り、家族を犠牲にしてきた。でも、そうなっていく自分が恐ろしかった。だから幸せだった頃の象徴であるこの刷毛を、家族自身とすり替え、自分の気持をごまかしてきた……違うか」
「あなたにも、怖いものがあったんだ」まじまじと見つめる亜樹子。
「馬鹿を言うな、そんなことはない」立ち直り、再び翔太郎らに近づく園咲。
「さあ、それをよこせ。最早どんな抵抗も無駄だ」とメモリを翳します。

<terror>。変身したことで心強くなるのか、笑い出すテラー。

「ははははは……来人ももう消えた。若菜とともにある」
その言葉の異様さに、再び恐怖に襲われ後退る翔太郎。その胸に、昨夜の声が響きます。

でも忘れないでくれ、相棒。ぼくは消えない。きみの心に悪魔と相乗りする勇気があるかぎり。

「そうだった」震える翔太郎。「あいつがおれを相棒と呼ぶ限り、おれは折れない。約束だった」
<イーヴィルテイル>を亜樹子に預け、自らもかざすメモリは、<joker>。
「さあ来い。相棒!」
途端に、苦しげに呻き出す若菜。
「どうした!」驚く園咲に、
「来人が、来人が生意気なことを」と訴えます。時既に遅く、翔太郎のベルトに出現する<cyclone>のメモリ。それを強く挿しこみ変身。サイクロンジョーカー出現。
「そ、そんな馬鹿な……」
「見事にぼくを呼び込んでくれたね、翔太郎」とWの右側の目が光ります。

「どういうことなんだ」うろたえる園咲に、説明するフィリップの声。
「母さんがヒントをくれた……最後の逆襲策さ。ダブルの変身システムを知っているでしょう? ぼくの意識をメモリに乗せて、翔太郎に飛ばした」
「そんな真似をしたら。若菜はメインプログラムを喪失した状態になる!」
「うあああああっ!」声を上げもだえ苦しむクレイドール。
「そう。――バグる」頷く右側。
「おおおおなんと愚かな」
「街を泣かせてきた諸悪の根源が!」言い返す左側。
「園咲琉兵衛……さあ、お前の罪を数えろ」そして手を差し伸ばすW。この堂々とした姿に震えます。

***

「――ああっ」
鳴海探偵事務所。まだ傷の癒えていない竜が、奥のベッドから這い出そうとして床にどうと落ち、それでもなお、腕をついて起き上がろうとしています。

反逆

礼拝堂を出た、園咲家の広大な庭園。その芝生の上に突き飛ばされ、転がるW。
「裁きを受けるが良い」歩み寄るテラー。
「あんたがなァ」起き上がり、口元を拭うW。「おおおおおおおっ!」
拳を固め突進すれば、その寸前で跳ね飛ばすテラー。頭部からまた、竜を襲ったテラークラウンを飛ばします。
それを、逆に跳ね飛ばすリボルギャリー!
「……おれが操り人形なら上等だ。人形でも何でも、それでやつを砕けるなら構わん!」
ハッチが開き、飛び出してきたのはアクセルガンナーです。
「照井!」
「竜くん」
テラークラウン目がけ連続砲撃を行うアクセルガンナー。それが目障りなのか、咬みつき、くわえたまま宙高く飛ぶテラークラウン。その口から落とされればまたリボルギャリー内で換装し、ハードボイルダーのユニットと合体しアクセルタービュラーとなって舞い上がるアクセル。今度は空中戦を挑みます。

礼拝堂。いずこに潜んでいたのか、祭壇の前に独り残され、今もうめき悶えるクレイドールの身体を、背中から胸へ、突き破るように飛ぶエクストリームメモリ。その体内から、フィリップのデータの残りを、拾います。
「うううううううあああううーっ! あああああああう!」
クレイドールの絶叫とともに、ガラガラと崩れ落ち始める大伽藍。

「――若菜? 若菜!」
気配を感じとり、振り返るテラー。その横をかすめ飛ぶエクストリームメモリは、まっすぐWの手の中へ。
「エクストリームメモリが、ぼくの肉体のデータを取り戻した!」快哉をあげるフィリップの声。迷わずベルトに装着するW。
虹色に輝くサイクロンジョーカーエクストリーム。
「許さん!」激昂するテラー。
両者走り寄り、殴れば殴り返される肉弾線。フィリップのほうの拳が力強い。
上空では、宙を舞いながら剣を繰り出すアクセルタービュライザー。
地上では悠々とテラーを突き飛ばしつつ、前進するサイクロンジョーカーエクストリーム。とどめのストレートは右腕です。
「おおおっ!」殴られ吹き飛ぶテラー。

アクセルマキシマムドライブ。
「絶望がお前の、ゴールだ!」
空では力を込め、シャウトすると声がハイトーンになる竜。全身を燃え盛る炎と変え、テラークラウンと激突。
マキシマムドライブ。
地上では巻き起こる緑の風に乗り、飛び上がるW。渾身の力で蹴れば、吹き飛ぶテラーの身体から、こぼれ砕けるメモリ。
「ああ、あ……」
力尽き屋敷の前に倒れる園咲、その背後で宙より落下し、屋根をその重みで打ち砕くテラークラウン。

(勝った……テラーのメモリを砕いた)

「やった!」と歓声を上げ、次の瞬間、ぼろぼろの竜を助けに走る亜樹子。

その前では地中より何本も吹き上がる火柱。崩れ落ちる地盤。
変身を解けば、翔太郎の背後からゆらりと現れるフィリップ。ふらふらと、その屋敷の方角へ歩み出すのを、腕を掴み止める翔太郎。
「やっと」相棒を振り返り、その整った顔を泣き出しそうなほどに歪めるフィリップ。「やっと悪魔のメモリからみんなを引き離せたのに」

邸内。燃え上がる大広間の階段をよろよろと昇っていく園咲。
ダイニングの扉を開ければ炎の勢いはいっそう激しく、紅蓮の焔が舐める室内を、ふと緑色の光がよぎります。
「若菜はまだ……そうか」歓びに腕を広げ、誰にともなく宣する園咲。ガイアインパクト成功への確信。「今、地球の未来は確かに女王に託されたのだ!」
焼けて崩れ落ちる屋根、壁。そのなかで一人優雅にワルツを踊り始める園咲。この豪奢な部屋で、食事の後美しい妻を腕に抱き踊るのは、かつてのかれの習慣でした。
「わたしの人生に後悔はない……踊ろう、母さん。あの日のように。はっはっはっはっは」

「…………」
これ以上ない園咲の終焉。門扉にすがりついたまま力なく崩れ落ちる冴子の頬も、炎の色を照り返し紅く染まっています

その背後にはどんな感慨を抱いているのか、黙して立つ、シュラウド。

プロローグ/エピローグ

おれたちは園咲琉兵衛の最期を響子さんに伝えた。
かれは怪物だったが、最後の瞬間に<イーヴィルテイル>を見ている。かすかに人間の心を戻したと――。


は、とため息をつき、キャリッジを戻す翔太郎。鳴海探偵事務所のかれのデスク。
「……彼女を慰めるために付け加えた、おれの勝手な憶測かな」
「んーん?」と、その前にマグカップを置く亜樹子。「それ、ホントのことだと思うよ。ね?」
「ああ」賛同を求められ、微笑む竜。「おれもそう思う」
部屋の奥の定位置では、フィリップが黙って、<イーヴィルテイル>を撫でている。幸せだった家族の、思い出のよすが。
「……」席を立ち、窓を開ける翔太郎。

地球の記憶をめぐる家族の愛憎劇は、幕を閉じたかに見えた。だが。
事件はまだ終わっていなかった――若菜姫が焼け跡から見つからなかったのだ。

かつかつと、響く足音。気を失った若菜の身体を、腕に抱え歩く男。
その顔は加頭でした。
以上報告します。
ということでこの45・46話はほんとうに美しくて、「W」を園咲家との戦いの物語とするならばこの後は蛇足ではないか、という気がするほどです。
<イーヴィルテイル>は儀式を成功させるために必要なもの、何らかの神秘的な力を秘めたものかと思いきや、かろうじて自分のもとにとどまってくれていた最後の家族、若菜を手放すにあたり、その代わりとなるものを園咲が求めていたというだけのことで、少し可哀想な気がしてきたり。
何度も挿まれる回想からすれば、発掘現場にいつも子供たちを連れてきていたかれは、元々子煩悩であったのでしょう。
庭でシャボン玉を吹き、家族で海へ出かけた。
不慮の事故で末子を失った後は、その事故に何らかの意味を見出さずにはいられなくなり、たまたま出会い、手にした地球の力にすがりついて、人類と地球の一体化という使命のため、
「自分たちは選ばれた家族」だと思い込んだ。宗教にのめり込むのと同じようなメンタリティだったのかもしれません。

蘇った来人を閉じ込め、その力をガイアインパクト実現の原動力にしようとしましたが、ガイアメモリ製造という、人々を不幸にする事業にあたらせたために本人は自暴自棄となり、<ビギンズナイト>で鳴海壮吉、左翔太郎に救い出された後はフィリップとして第二の人生を生きようとします。

来人の扱いに反対する妻・文音は、園咲自身がテラーとなって迫害したため、彼女は<ミュージアム>を去り、シュラウドとしてその妨害に暗躍するように。

ガイアメモリ販売で頭角を現した娘婿・霧彦は、それを購入した犯罪者が自滅の道を選ぶことに、何ら心を痛めていませんでした。が、未成年者などにも手当たり次第にメモリをばらまく園咲のやり口にある時疑問をいだき、風都を去ろうとしてその妻である長女・冴子に命を奪われます。
もっとも、婿など園咲にはどうでもいいことでしょうが、夫に自ら手を下すなど<ミュージアム>への忠誠が厚く、園咲の片腕として献身的に働いていた長女・冴子は、誰よりも自分こそが園咲に近い存在だと自認していたでしょう。わがまま勝手に育てられた妹などよりもずっと。
ところがその妹・若菜こそ園咲のプロジェクトでの中心人物で、むしろ自分は使い捨ての存在だったと知り、冴子はシュラウド同様離反、復讐に走ります。

ということで残ったのは若菜独り。彼女も一度は父のもとを去ろうとしますが、お前こそが地球の巫女であり女王だと聞かされたのでしょう、唐突に園咲2号、のような人格に変わりましたね。
それを<ガイアインパクト>によって人ではないものとすれば、園咲に地上の家族は誰も残らないということになります。幸せだった家族の時を取り戻す、そのためにひた走った結果、傍らには誰もいなくなるという矛盾。

ばらばらになった家族が、もしあの最後の晩餐で<イーヴィルテイル>を見ていれば、どんな成り行きになったのでしょう。
フィリップが発言したように、もう一度家族の絆を取り戻そうという流れになったのか、それとも、<イーヴィルテイル>の効用は、園咲の心にしかなかったのか。
「若菜姫は見つからなかった」と翔太郎が報告書に綴ったということは、園咲琉兵衛の死体はあった、ということなのでしょう。悲しい物語でした。

今回の依頼人、轟響子もまた、魅力的な人物でした。ラブ・ウォーリアーでいらした時も大好きだったのですが。
鳴海探偵事務所だけでは解決できなかったかもしれない事件。その糸口を見出したのは、確かに彼女の活躍でした。
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2015.04.23 08:58 | w ダブル | トラックバック(-) | コメント(-) |
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