LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。


秋空に観覧車 / akaitori


先日給与明細を見て通常の月の倍額になっているのに思わず笑ってしまったmakiですこんばんは。
別に昇給したとか業績をあげたとかじゃなく、単純に他の月の倍の時間働いた結果です。気がついたらもう鈴虫が鳴いてて台風が来て日が短くなって、そんな小さい秋なんか見つけたくなかった。わたしの夏はどこへ行ってしまったのでしょうか。

旅のお供に殺人を コリン・ホルト・ソーヤー(創元推理文庫)
八方破れの家 ジル・チャーチル(創元推理文庫)
大会を知らず ジル・チャーチル(創元推理文庫)

長年読み続けてきた<海の上のカムデン>シリーズもこれにて終了。
ということで作者もサービスしたのでしょうか、エキゾチックな舞台背景が細々と描かれ、まるで映画のようで楽しかった。
老人探偵団の中心的存在、元気いっぱいの小さいおばあちゃんであるアンジェラ・ベンボウは今回、<カムデン>での娯楽プログラムに異議を唱え、自らメキシコ語講座を提案、その勢いでメキシコ旅行を思い立ちます。
語学習得の早道は実践あるのみ。できれば長期の滞在のほうが望ましい訳ですが、とはいえメキシコ語講座の参加者はお金はあっても体力のない年配者ばかり。結局短期ツアーを間を置いて3回繰り返す変則プランになったのですが……

バスツアーのごたごたや旅行あるある(集合時間に毎回遅れてくる人や荷物の異様に多い人、食事への不満や部屋割りの問題、旅行代理店への土産物業者からのキックバック等々)が楽しく、さらに描かれるメキシコの街並み、凝ったホテルの内装や派手な色彩の乱舞するお祭り、昼はしんと静かな住宅街などの描写が興味深く、見え隠れする謎のメキシコ人を大追跡したり慣れない街を大逃亡したりといったアンジェラの活躍もめまぐるしく。
ただミステリ的にはどうでしょうか、ちゃんと死人も複数出ているのにあまり怖さがない、というか、メキシコという国のエキゾチシズムを強調しすぎじゃないかなと思ったり。
外国や外国人に対しわからない、自分たちとは違う、だから不安だという感情は誰しもあるものだと思いますが、そういう怖さと「犯人として疑わしい」というのは別の話だし、エキゾチシズムでサスペンスを盛り上げるやり方は、今ひとつ好きではないのです。よく知らないから何でもありだ、という方向に流れがちでもありますし。
なのでお買い物などミステリと関係ない部分を大いに楽しんでしまいました。わたしも気に入った服を何着も仕立てたい。
あと、メキシコ当地の警官のキャラクターや<カムデン>おなじみの伊達男・マルティネス警部との連携がとてもいい感じです。この人達のスピンオフを読んでみたいなあ。


タイトルが世界の名作をもじっていることで知られるジル・チャーチルの<主婦探偵ジェーン>シリーズ。今回のは元ネタ(ナサニエル・ホーソーン)がわかりませんでした。この前に「枯れ騒ぎ」という一作があり、作中ジェーンが
「夏に足を骨折した時」云々とあるのはこの前作冒頭部での一件。

本シリーズは育児や家事、親族や地域社会との関わりといったジェーンの日常が細々書かれているのが特徴で、独身だった頃は当然ながらまったく実感が持てず、またいざ自分がドメスティックなあれこれに追われる立場になると
「本の中でまで家事とか勘弁して」と思ってしまって、正直飛ばし読みすることが多かったのです。ですが、この「枯れ騒ぎ」~「八方破れ」の辺りから、あの細々した書き込みが生きてくるのだなあと今さらながら感じました。

せっせと節約し、子供のために、ただ子供のためにと奮闘していたジェーン。しかし長男を大学にやり、また、足を骨折すれば意外にもわがままなティーンエイジャーの長女が頼りになることがわかり、さらにいつまでもあかちゃんだと思っていた末っ子がある分野での才能を発揮し始め……いつの間にか自分の人生のステージが、変わりつつあることを感じるジェーン。
降って湧いたような内装の仕事に耳を貸してしまったのもそのせいですし、書きかけのミステリを完成させるのに不可欠なソフト(館の見取り図を描くソフト)に投資する気になったのもそのせい。
そして首を突っ込んだリフォームの現場とは……。

配管工や電気工など、主だった業務は可能な限り女性職人で固め、無理やり男性名っぽいニックネームで呼ぶというファンキーな現場監督が登場。
この監督、素人目にも無能であることが即日判明してしまう救いの無さ。そのためか仕事は全く進まず、誰の手によるものか様々な妨害工作も起こり、やがて死体も1つ転がって混乱の極みに。
推理によるのでなく犬も当たれば棒、式に犯人がわかってしまうのは残念ですが、打ち捨てられた歴史ある建物を美しく改装し高級ゲストハウスに……というこの事業自体はとても魅力的だったので、事件が解決し、犯人がわかった途端に皆が辞意を表明する展開にはつい落胆してしまいました。もちろんトップがだめな仕事には、一切関わらないのが利口です。が、自分だったらやりかけた作業や考えていた完成図に、未練があるだろうなと思ってしまいます。シェリイではないですが他人のお金で買い物をするなんて素敵すぎるし。完成した<七女子の家>を見てみたかった。


引き続きジェーンシリーズ。ジェーンという人の生活態度はしばしばしみったれた、という言葉で表現されているのですが「八方破れ」でコンピュータ、及びソフトを買ったのに引き続き、本作では車も新調! もともとお金に困っているわけではないのですが、これもやはり彼女の心境の変化を象徴する、新しい人生への投資なのでしょう。

ミステリ作家は自身、本好きな人が多いのだろうとわたしは思っているのですが、それは他のジャンルに比べ、書店や古書店経営、出版、執筆、修復、鑑定等々本にまつわる業界を舞台にする作品が多い、ように思えるから。
本作でジェーンはとうとう書きかけのミステリの骨子をまとめ、冒頭の数章や素晴らしい館の見取り図もつけてプレゼン資料とし、ついでに服装も整えて、業界人が作家の卵やミステリファンのために開くコンベンションに乗り込みます。
様々なセミナーに出席し、知り合えたミステリ作家から温かいアドバイスを受け、数人のエージェントにわたりをつけ……、ああこういうイベントが開かれたらぜひ参加してみたい! と思える内容で、第一にその描写が面白い(そしてミス・ミステリよろしくバーや食堂でひたすら聞き耳を立てていたい)。

もちろん、敵の多いマッチョな評論家、敵の多いやり手の編集者、敵の多い期待のインターネット新人作家、敵の多い業界ゴシップライター……と、あくの強いキャラクターが登場し、そこにいくつかのトラブルが起こり。
殺人という重大事件にまでは至りませんけれども、さくさく解決していくジェーンとシェリイのコミュ力がお見事です。
だんだん相棒としてはこのシェリイの存在が大きくなってきて、気さくでありながら実はセレブでもある彼女のファッション描写を毎回楽しみにしているのですが、相対的にジェーンの恋人であり刑事であるメルが、ただ単に彼女たち主婦探偵に警察情報を提供する装置のようなものになってきているのではないかと思ったり。
同日追記。
「八方破れの家」ではアメリカでも行き過ぎたフェミニズムは軽愚され、当の女性たちからも敬遠される様子が描かれているのですが今日はタイムリーにも鹿児島県知事が
「女子にサインコサインタンジェントを教えて何になるのか」と発言したらしくw

女性は素晴らしい、女性は立派、男性は敵というのもうんざりですし女は男と変わらない、一緒に扱えというのも嫌ですが、女子に教育が要らないという考えは女子は常に誰かに保護されているという社会体制なくして成り立たないわけで、今どきそんな世界がどこにあるのかと時代錯誤にびっくりします。なんかもうちょっとニュートラルに、男女問わずその人にとって必要なことが、わかってないお年寄りや親や教師に妨げられない社会というのがいいんじゃないかと思うのですが。
「八方破れの家」では女性職人たちが、ちゃんと男性職人に混じりつつ施主に信用される仕事をこなし(当然サインコサインタンジェントを駆使し)、でも別に男になりたいとかそういうわけではなく、オフではちゃんとおしゃれでフェミニンな格好を楽しんだり手料理を自慢したり、あるいはしっかりした家庭を運営していて、まあこういうのが普通の人の感覚じゃないのかと思うわけで。
関連記事

style="clap"
2015.08.28 02:37 | read or die 近視de乱視 | トラックバック(-) | コメント(-) |
| ホーム |