LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

もう一つ、コリン・ファースつながりで観た映画。


what's in the name? / R@jeev


タイトルそのまま、かたや売出し中の三文文士、ならぬ詩人で劇作家のウィリアム・シェイクスピア、かたや富裕な商人の娘であり、箔付けのため貧乏貴族との縁談がまとまったばかりのうら若き乙女、ヴァイオラとの許されぬ恋の物語。
文字通りロミジュリです。
2人の恋の進展とともに、泉のごとく湧きいでる恋の言葉。朝起きだしていく恋人をとどめる言葉。別れを告げる恋人の、青ざめた頬を憂える言葉。
シェイクスピアが悲劇「ロミオとジュリエット」の着想を得、少しずつ台本が書き上がっていき、配役が決まり芝居の稽古が始まり……という舞台裏が描かれていく構成が見事です。

コリン・ファースは恋敵、という意味では全然相手にされてないのですが、親が決めたヴァイオラの婚約者にして、挙式後は神が認め得た夫となり、その地位(だけ)は盤石なウェセックス卿。
実際は寝取られるわ賭けに負けるわ女王陛下にこけにされるわで可哀想な役どころなのですが愛嬌があってなにかいい。新世界ではぜひ事業に成功して幸せになってほしいと祈りつつ観ました。
で、タイトルに引いた
「うまく行く、謎だけど」は当時ライバル関係にある2つの芝居小屋の一方、“ローズ座”の小屋主・ヘンズロウの言葉。
映画中で「ロミオとジュリエット」が上演に至るまでには様々な苦難があり、ざっと書き出してみただけでも、

・まずシェイクスピア自身がスランプでなかなか台本が書けないうえに
・カーテン座とローズ座とどちらにも新作を渡す約束をしている(二股)
・ローズ座は疫病の影響でしばらく閉鎖しており、お抱えの役者たちは他の地へ
 客演に出ているという状況で、借金の返済期限を伸ばす代わり、出資者に
 次の興行での儲けの半分を差し出すという言い逃れをしたため失敗は許されない
・シェイクスピアはライバルの劇作家からヒントを得て新作を書きだしたものの
 注文通りの内容(喜劇と犬、海賊船)になりそうもないうえ、
・看板俳優の顔も立てなければならない
・ロミオ役に適役のしゅっとした若者を見つけたがヴァイオラのゆかりのものであるらしく
 彼女の婚約を教えられたりする
・ロミオ役の若者がヴァイオラの男装であると知り、シェイクスピアの恋自体はハッピーに
 進行するが、女性を舞台にあげることは当時、風紀紊乱の罪にあたりご法度
・カーテン座の小屋主はシェイクスピアがローズ座に台本を渡したうえに、自分の愛人に
 手を出していたと知り(実際は口先ばかりで振られていたのに)ローズ座に殴りこみ
・敬愛する当代一流の劇作家・マーロウはちょっと出たかと思えば居酒屋で死亡し、
 自分がかれの名を騙ったせいでと落ち込むシェイクスピア
・婚約者がマーロウでなくシェイクスピアに寝取られていると知ったウェセックス卿も
 改めて殴りこみに来たりする
・オーディションで落とされた恨みかローズ座につきまとっていた少年は官憲へ
 ヴァイオラの存在を密告、ローズ座は謹慎を申しつけられロミオ役者をも失う
・ヴァイオラの結婚とアメリカの農園への出立日時が早まる
・カーテン座が長年のいがみ合いを捨て演劇人として力を合わせようと
 自分の小屋での上演を申し出てくれたがオープニングの口上を述べる
 役者が緊張でがちがち
・ロミオはやむなくシェイクスピアが演じることになるがジュリエット役の少年が声変わり

……とこれだけのごたごたがあります。
「これじゃあダメだ」とその都度嘆くシェイクスピアに、
「The show must......you know......」と謎をかけるヘンズロウ。
「Go on!」と続けつつも、でもどうやってとまだ悩んでいるシェイクスピアに、畳み掛けるように
「It all turns out well. I don't know. It's a mystery.」
ショウは続けなければならない。
そして結局はなんだかんだうまくいくもんだ、よくわからないけど、というかれの口癖通り、スランプだったシェイクスピアはミューズを得てすらすらと新作を書き進め、稽古の場でその進展を見守る役者たちもそれぞれにアイディアを出し、スポンサーがまっさきにこの悲劇に惚れ込んで協力的となり、役者たちも稽古に熱が入り、閉鎖の憂き目にあった時にはまさかのライバルから手を差し伸べられ、がちがちだった役者は見事な口上で拍手喝采、そして代わりの“女優”も当日これ以上はない、という役者が現れ。

カーテン座小屋主・バーベイジの、目にもの見せてやろうぜ的な長台詞が胸熱です。

The Master of the Revels despises us all for vagrants and peddlers of bombast.
But my father, James Burbage, had the first license to make a company of players from Her Majesty, and he drew from poets the literature of the age. We must show them that we are men of parts.
Will Shakespeare has a play. I have a theatre. The Curtain is yours.

そして女王、エリザベス一世の大岡裁き。寝取られ夫も恥をかかず、小屋主や役者たちが縛につくこともなく。
彼女の、

I know something of a woman in a man's profession. Yes, by God, I do know about that.

という台詞にもぐっときます。

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」にも旅の一座が出てきますが女優役はすべて声変わり前の少年と決まっていた時代のこと(おそらくはそれ以前の、女芸人が芸も色も売るという風潮を取り締まるための法なのでしょうがそれならそれで男色が広まっちゃうのではという気がしたり)。芝居好きのヴァイオラが、好きが昂じてつい、男装でオーディションに出たことから物語が本格的に動き始めるわけですが、このことに触れるこの台詞、
「男の仕事をする女もいる、わたしも他人事ではない」と訳した字幕もよかった。
文学は人の心をしがらみや法などの決まり事から一時解き放ち、自由を味わわせるためのもの。長い人生のなかの、ほんの一時期ではありましたが、親によってロバのように右から左へやられてしまう“女”という立場から離れ、役者として自由を謳歌した経験は、ヴァイオラにとって生きる支え、いつまでも心にしまわれ続ける宝石となるでしょう。

正直シェイクスピアの恋のなりゆきより(ヴァイオラ側にウェセックス卿という障害がなかったとしても、もともと妻帯者であるシェイクスピアにとって成就しない恋であることに変わりないわけでわたしはそんなにメインストーリーについては盛り上がらなかったのです)、ヘンズロウ、バーヴェイジ、そして
「きみがタイトルロールだよ、外題は『マーキューシオ』だよ」とおだてられて参加したのに稽古が進むにつれ自分の見せ場があまりないのに気づいて、自ら
「外題は他のがいいな、『ロミオとジュリエット』なんてどうだ」と言い出す看板役者、このあたりの役者バカ的なサイドストーリーに胸がじんときます。
マーロウ役、ルパート・エヴァレットのカメオ出演がまたかっこいい。

現実世界の恋人たちはやがて別れを告げ、そしてヴァイオラはウェセックス卿の妻として海を渡ることになりますが、そこから十二夜に上演される喜劇の着想を得たシェイクスピアは、船が嵐で遭難し、皆が溺れ死ぬ中ただ一人、彼女のみ新天地の浜辺に立つ光景を頭に描き――。

喜劇「十二夜」に登場するヒロイン・ヴァイオラは、シェイクスピアのヒロインのなかでもとくに溌剌とした魅力や聡明さが印象に残る男装の麗人ですが、颯爽と無人の浜辺を歩むシェイクスピアの想像のなかのヴァイオラも凛として、初めての恋に夢中ででろでろになっていたヴァイオラよりも、ずっと美化されているのも面白かったです。

ラブストーリー的にはヴァイオラのナース(ばあや)が良かったですね、2人をかばうところとかもう(´;ω;`)
他の召使がヴァイオラの部屋に立ち入らないよう、ドアの前に揺り椅子を置いて自分がどっかり座り込むのですが、途中必死になって椅子を揺すったりしていて泣けます。
結婚式の後も
「ウェセックス卿、お嬢様をよろしくお願いします」とコリン・ファースに抱きついて足止めしたりとかうら、じゃなくて泣けます。
そんな彼女も終盤、カーテン座の一座席に陣取り、やがて「ロミオとジュリエット」の世界にのめり込み、仮死状態から目覚めたジュリエットが
「わが夫、ロミオは何処?」と台詞を言えば
「死んだ!」と叫んでしまったり。
いやあ、芝居ってほんとうにいいものですね。としめくくりたくなるではないですか。
同日追記。わたしの一番好きなマンガ、「バジル氏の優雅な生活」にもすらりと背の高い少年体型の女優(小屋主はグラマー美女がとりたかったのでがっくりくる)に男性役をあて、自分は女装して喜劇(台本はハムレットなのに)を演ずる、という物好きな青年の話が出てきて面白かったのを今ふっと思い出しました。あれも芝居ばかのお話だったな。
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2015.10.20 19:18 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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