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正確に言うと昨日読了。
今の職場には不満というより、体制そのものがおかしくて将来性を感じないわけだけど、人間関係はそう悪くもなくて、やりがいもないわけではなくて、もともと欲求水準は低いしこのままぼちぼちやっていく手もあるかな、と迷っている人生の秋。
でもいくつになってもよりよいフィールドを探していきたいとは思い、あと、その「体制のおかしい仕事」、これまで暇だったのが取り柄だったのに人手不足でこの半年、くたびれきってもいるのです。転職ってエネルギーいるしなあ。ジビエ食べたい。ヴァン・ショー飲みたい。


Vin rouge + Bougie N°2 / Élia Magyar


そんな悩み多い時期に読み終えました。

逃げる幻(創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ著
タルト・タタンの夢(創元推理文庫)
近藤史恵著

第二次世界大戦末期。米軍予備役のダンバー大尉は、休暇のためスコットランドはアルドライに向かう機中、偶然にも当地を所領とする貴族、ネス卿と出会います。ダンバーの本業が精神科医と知ったネス卿により、旅の徒然に物語られる話、すなわち「一見何の問題もない家庭に守られながら執拗に家出を繰り返す少年」の謎――。

物語はこんなふうに何気なく、物憂げにも思える語り口で始まり、そのままスコットランドの荒涼とした自然や先住民族の遺跡、ネス卿の古色蒼然とした居城などが描写され、また、ネス卿から近代的な屋敷を借り受けた富裕なストックトン一家、なかでも「桃のような頬をした美しい少年」や、そのいとこにあたる、美しく心優しい若い女性との印象的な出会いへと続いていきます。読者はこのダンバーの目を通じ、ダンバーの意識の流れに沿って事件を目撃していくわけで、そこには当然ダンバーの思い、ダンバーの先入観というフィルタがかかっています。
実は休暇という名目の裏で、消えたドイツ兵の調査、という密命も負っていたダンバー。この土地に住む2人の“よそ者”に対し疑惑の目を向けていて、加えて何も遮るものもない荒野のただ中で忽然と姿を消す少年、密室殺人やフランス語のダイイング・メッセージ、消えた紙片といった、いかにもミステリらしい要素が、びっしり散りばめられています。読みながらついついあちこち見とれてしまい、メイントリックが“それ”だったとは、ぜんぜん気づきませんでした。
思えばお話の冒頭から、ヒントもしっかり書きこまれていたのですから、気づかないほうが迂闊とはいえ、なんとなく、「嵐が丘」のような、荒涼として美しい恋愛小説を読んでいる気分でいたのです。ダンバーがある登場人物に恋をしていたせいで。

ということで巻末の解説で絶賛されている通り、これはほんとうに「巧い」ミステリです。ナチスドイツの降伏、およびその残党狩り、という執筆当時はまさにタイムリーであっただろうネタを取り込み、魅力的な謎に論理的かつ大納得の解決を用意して、しかもそれをロマンス小説でもあるかのような繊細な筆致で描く。お見事です。とくに先住民族に関するくだりはほんとうに興味深く、また寡黙なネス卿の使用人や、一応は貴族のお姫様なのに生活に便利な屋敷を人に貸したことへの愚痴を不満たらたら客人に盛大にもらしまくるネス卿の娘など、ユーモラスで皮肉な部分はいきいきとして面白く、楽しく読みました。

ただ、今まで読んできたマクロイのなかでは、どうも好きになれないな、どうものれないな、と思いつつ最後まで来てしまった(わたしにとっては)めずらしい作品でもありました。その理由はなんだろうとしばらく考えこんでしまったのですが、なんというのか、ダンバーとその恋愛の、いずれもがどうにも魅力に欠けるのです。
知性の閃きについては物語の構造上、探偵役であるウィリング大佐に譲らざるを得ないわけで、他の人物が凡庸であるのは当然。しかし、ロマンス小説の登場人物としてもなんだかなあと。たとえば少年捜索における行動力とか、ヒロインを思う気持ちとか、職務にかける熱意とか、いろいろな点でダンバーは「あくまで受け身な観察役・語り手」になっていて、この人が何か行動する動機はいつもぼんやりぼやけている印象です。
死体の見張りに残っていたのに途中目を離して証拠品が消えるとか、それ自体はありがちな失態で、たとえば捜索に加わった村の一警官がこれをやってしまったのならぜんぜん気にならないのに、主役級の人物がこれってどういうことなのか、とか。わたしたちはかれの目を通して事件を追うしかないのに頼むよ! みたいな。
そんなかれが惚れ込む相手も単に美人である、しいて言えば思いがけない事件が起こっても不快な言動をしない控えめな美人である、以上の情報はなし。
どうやらかれの恋愛(だけ)は成就しそうな結末でしたけどひたすらどうでもよかった。


常連が食欲をなくしたのはなぜか。
ガレット・デ・ロワに入れられた「王様の印」が消え失せたのはなぜか。
高校野球部の合宿中に起きた飲酒事件は、いかにして実現し得たのか。
商店街の一角を占める小さなビストロ、「パ・マル(悪くない)」に持ち込まれた小さな事件と、変わり者のシェフの名推理をまとめた短編集。結末は締めのエスプレッソのようにほろ苦く、時に名店のボンボン・オ・ショコラのごとく甘くとろけ、創元推理文庫によくある日常の謎シリーズといってしまえばいいとも思うのですが、正直この本の魅力はシェフが供する料理描写そのもの!
京極さんじゃないですけど食欲そそられて困りました。なんちゅうものを読ませてくれはりますのんや。
作者はシリアスな筆致で人の残酷さ、哀しさを描いてみせる一方でこういうものもお書きになるわけでこれもほんとうに巧いし旨い。もちろん隠し味の皮肉もよく効いていて、お腹がはち切れるまで食べても胃にもたれることがなく、いくらでもいただけるタイプのミステリです。
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2015.11.05 10:22 | read or die 近視de乱視 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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