LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

野座間製薬の加納、そして謎の男・仁。
2人により、この世界でのアマゾンとは何かが語られる回。
ウイルス性生命体、アマゾンを体内に植えつけられた人々は、腕輪から定期的に補給される薬剤によって、その獣性をコントロールされています。しかしその有効期限は2年。
2年前の事故により野に放たれた4000名の実験体が、今やアマゾンとして人喰いの本能に目覚め始めており、それを淡々と駆除してきたのがノザマペストンサービスだったと。


Red & green / tanakawho


マモルのように、アマゾンでありながら人のなかで暮らすこともできると、夢見ていた竜介。かれが覚醒した時の血なまぐさい獰猛な表情、軋むような声にどきどきしました。馬場良馬さん、素晴らしかった。しかし熱暴走をちょっと思い出したのも事実です。
そんな竜介の想いを知りつつも、虫として狩らねばならないノザマペストンサービス駆除班。なかんずく同じアマゾンであるマモルの胸中を思えば切ない。
あと、悠も繊細な表情の割にしっかり腹の底から咆哮していて好感を持ちます。声大事。

そして、アマゾン殲滅を図る仁のもとで、ついに自分の本性を知った悠。かれはこのまま仁のお手伝いを始めるのか否か。
わたしはこの人の食べ物哲学は何か好きです。
「またアマゾン!?」
「くそ、どんだけいるんだよ……」


初陣

膠着した状況を打ち破るのは、最後に飛び込んできたアマゾン、“オメガ”(作中ではまだ名称は出てきていませんが、そこら中アマゾンだらけなので悠の変身した緑色のトカゲアマゾンはもうこれで行くことにします)。
その跳躍力を活かし、蝙蝠と渡り合うオメガ。華やかなワイヤーアクションを堪能できるシーンです。参入しようとする土竜アマゾン、状況がわかるまで手を出さないほうがいいと土竜を引き止める三崎。

「たくなんなんだ、このアマゾンの大安売りは」
「変ですよ。あの未確認の2匹、識別コードがキャッチできない」タブレットを拾い志藤に囁く前原。
「何だと」
「腕輪が、ない……」

しかしまだ戦いには慣れてないようでその動きには割合無駄が多く、前回アルファ(仁の変身した赤いアマゾン)の見せたような、洗練された戦いぶりとは異なります。まるで面白がっているように、しばし高みの見物を決め込んでいるアルファ。

「聞いてねえな。淳。竜介の識別コードのランクは」
「……Bです」
「竜介。竜介!」
背後ではただ、前回蜘蛛に負わされた手傷にもがき苦しんでいる蜻蛉。志藤が名を呼んでも、正気づく様子すら見せず。

一方、人間たちに注視されていることなどまったく意に介さずただ衝動のままに噛みつき、投げ飛ばし、高く跳び。ほぼ決着がついたにも関わらず、さらにその身体能力だけでランクAの頭を踏み割るという、オメガの本能に任せた戦いはやがて終わりを迎え――。
とどめを刺した蝙蝠の肉塊が塵と消え、勝利の雄叫びを上げるオメガ。次なる獲物と見定めたアルファに殴りかかりますが、体術の訓練を積んだかのようなアルファの動きに見事にかわされてしまいます。身体に変調でもあったのか、よろめき倒れるオメガ。

「お前、まさか……喰ってないのか。そのままじゃ保たんぞ」
手を差し伸べればその腕にすがりつき、噛みついてくるオメガ。その腹を拳で空いたもう一方の拳で突き、失神させるアルファ。
息を呑みこの戦いを見守ってきた人々は、そこでようやく正気づき、2体の未確認アマゾンに詰め寄ってきます。
「動くな! ……お前たち、実験体か? なんで腕輪をつけてない!? 答えろ」
「まだ意思の疎通はできるみたいだな。その状態なら、駆除じゃなく捕獲という手もあるぞ」
「駆除のほうが良いなら、そう言えよな」
まだ人間の意識を保っているらしいアマゾンは初めてなのか、緊張の極みにあるノザマペストンサービスの一同。

竜介1

その背後で、苦しそうに倒れもがくだけの蜻蛉が、気になってたまらない土竜。そちらのほうへ這い寄りつつ、
「大滝くん! 大滝くん、きみもアマゾンだったんだね?」と、仲間が増えた歓びの声を上げます。しかし、蜻蛉には意識がないのか、ただ咆哮し土竜に喰いつこうというそぶりさえ。
「マモル!」それに気づき悲鳴を上げる望。「志藤さんっ」
「大滝くん。やめて……!」叫ぶ土竜。
「やめろ!」
「竜介さん、おれたちのことわからないんですか!」

どろん

「……?」
そんな修羅場のなかもさてどうしようかというふうにその場に佇み、周囲を見回すアルファ。この人だけは物腰が人間っぽくて、獣性を理性でコントロールしている様子なのが見て取れます。
蜻蛉の動きに人々の注意がそれた、その隙を逃さず失神したオメガを肩に担ぎあげるアルファ。

「待て!」三崎がいち早く気づき、1発の銃声。まるでそれが、合図ででもあったかのように、突如木立をなぎ倒し突っ込んでくるピックアップトラック!
「うぉおおりゃあああああああっ!」
林の中では危険なほどのスピードで、ヘビーデューティー仕様のトラックを駆り、野を走るのは仁と同居している女性・七羽。
そちらへ駆け寄り、荷台めがけオメガを投げ込むアルファ。発砲しつつ追う駆除班。
自らも跳躍して荷台へ飛びつくアルファ。途方も無い距離を一瞬で縮める手段で、とうてい人の技とは思えません。
打つ手なし。呆然とそれを見送る志籐たちですが、今度はそこから蜻蛉が逃亡し……。

竜介2

今度こそのがしてはならないと、車に乗り込む一同。前回重傷を追った福田が、痛む腹を抱え歯を食いしばりながら運転するのが痛々しい。
志藤がその傍らで調査班に応援を要請しているようなのですが、怒鳴り声すぎてわかりません。トラックのナンバーを読みあげていたので、次から仁たちのアジトもばれてしまうかも。
他の人々も車内でそれぞれに傷の手当をしながらの追跡。泣きじゃくるマモル。
「大滝くん……チームなのに、なんで……」
「なんでかなあ」あやすような口ぶりがうまい三崎ですが、それでもいつものようにはいきません。「マモちゃんのせいじゃないから。なあ」
「竜介さんがおれたちを……」
「……識別コード……っ、発信源、この辺り……っ」喘ぎつつブレーキを踏む福田。
レーダーを頼りに到達したポイントですが、車を降り銃を手に散開してみれば、そこにあったのはただ、竜介の腕輪のみ。
「志藤さん」木の根もとから拾い上げる前原。「逃げました」
「そっか。腕輪が発信源ってこと、当然知ってるよな」
喰い始めるのは、時間の問題。暗澹とする一同。

「ま、聞かない決まりだけどさ、やっぱ聞きたくなるよね? 虫、つっかさ、アマゾンて何」
三崎の問に背を向け立ち尽くす志藤。
毛布にくるまり、悲しげに佇むマモル。
緊張し志藤の答を待つ望、前原、福田。今にも泣きそうな望の顔がひどく幼く、第1話では荒々しいアクションや不遜な言動が目立っていた女性だけに彼女の受けた衝撃の大きさを思わせられます。
「……おれも知りたいね……」顔をあげない志藤。「今度、ばかりは」

***

(なんでだよ……っ。おれならだいじょうぶだと、マモルみたいにうまくやっていけると……っ)

利かない左手、両足。人間体に戻り、林の中を呻きながら這いずり、逃げていく竜介。自分はただ、人間として生きたかっただけなのに。

(もう駆除されるしかないのかな。けど……あいつらにだったら)

開示

「未確認のアマゾンの映像はこちらでも受信済みです。……今まで通り、何も聞かずに駆除することは、できませんか」
アマゾンとは何なのか。なぜ自分たちは“人間狩り”をさせられているのか。なぜ仲間にまで銃口を向けねばならないのか。
駆除班全員の疑問が膨れ上がり、親会社である野座間製薬も捨て置けなくなります。
待機所に派遣されてくる本部長・水澤の秘書らしき男、加納。その無表情な顔が映るPC画面を、覗き込む駆除班メンバー。
「できるわけねえだろうっ!」三崎の怒りが爆発します。「ひとりは仲間なんだぞ!」
「……まさか、知ってたのか?」と志藤。
「それはないですし無理です。腕輪の信号は、アマゾン体になったときの言わばアラームで、普段は反応しませんから」
加納はアルファ、オメガの話をしているのに、志藤らの頭は竜介のことでいっぱいです。
「つまり、外されたら追跡不可能か。……だったら足で探してやるからとにかく話せ!」

「……わかりました」

今までの会話は、タブレットのカメラつき通話機能を通じてのものでした。話しながら彼らの背後、待機所の戸口に到達した加納は、今や駆除班のメンバーと直に対面しながら、いかにも空気が悪いと言いたげに鼻に純白のハンカチを押し当てます。
「わたしが説明役を任じられました」
「たく、勿体ぶりやがって」
忌々しげに睨みつける志藤たちの前で、悠然とタブレットを操作する加納。画面に浮かんだ文字は、「AMAZON」。例のロゴが出てくるかと思ってちょっとどきどきしました。逆から読めば野座間。

定義

悠の失踪に心を痛め、学校の休み時間に母へ連絡を取る美月。ストーリーと関係あるかどうかわかりませんが級友たちにいじめられているのでは? と思わせる描写があります。
職場のデスクでその連絡を受ける水澤。
悠は見つかった、ただ体調が悪いからこのまま研究所に入院させると娘を安心させる間も、目をオメガの映るモニターから離しません。志藤、三崎、高井、前原。それぞれの視点からの記録映像。

(完全に目覚めるには、まだ時間がかかる……でも、もう眠らせることはできない……これを)

***

「アマゾン……細胞……?」
ノザマペストンサービス駆除班待機所。志藤の声に
「まあ通称です」と頷く加納。「実際は、我が社の研究で生まれたウイルス再生の人工細胞の集合生命体です。高度なものではなく、持っているのはタンパク質、とくに人のものを好むという単純な習性のみです」
「人の? だったら」
「ええ。言ってみれば人喰い細胞です」ずっとハンカチを口元に押し当てたままの加納。「それを人型にまで成長させたのが実験体アマゾン。あなたたちの言う“虫”です。2年前、研究所で起きた事故が原因で、大量の実験体がこの街で野放しになっているのが現状です」

取説

ビルの一室。布製のバッグをかき回し、腕輪を取り出したのは、アルファに変身していた男・仁。無造作に悠の腕につけさせます。
「ぐわ……っ」痛むのか声をあげて苦しむ悠。傍らに静かに座っている女性・七羽。ビールを呷りつつ磊落に話しかける仁。
「憶えてるか? どうしてここにいんのか」

断片的な、そして鮮やかな記憶。武装した人々。いくつもの銃口に狙われ跳躍し、何者かの頭蓋を踏み割り。


激しい頭痛に襲われさらに呻く悠。
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくが……っ。なんであんな、」
「なんでって」ビール瓶を置き、悠の頭をつかんで自分のほうに向かせる仁。「……お前がアマゾンだからに決まってんだろうが」
「……あ、アマゾン?」
「おま、……まさか知らなかったのか、自分のこと」
「なんのことですか……アマゾンってなんですか」泣きじゃくる悠。
「へーえ」白い歯を見せる仁。「ははははっ、こいつは驚き」
鍋のフタを開ける七羽。
「じゃ何の情報も持ってねえわけだ。連れてくる意味なかったな」
「どういうことですか。あなたいったい何を」
「あーあーあーあんな、面倒だから簡単に言うぞ? お前な」
「はーいできあがり!」それを遮る七羽の声。台所からこちらを覗き込み、「仁、お椀!」
「はいよ!」いそいそとそちらへ向かう仁。「……ああ、いい匂い♡ もう、最高だなあ」

そして両手に直に碗を持ち、あちあちと戻ってきます。
「ほい、とりあえず食え。おれたちに必要なタンパク質だ」
「タンパク質?」
「ああ」次に箸を差し出し、悠が受け取らないとすぐに自分の碗の前に座ります。「いいか。おれたちはタンパク質をかっ喰らう細胞、アマゾン細胞、っていうんだがな、そいつを、こん中に飼ってる」
胸をとんと突き、陶然とした表情で食事を始める仁。ふと顔を上げ、
「……あ。お前、人喰いたくなったことないか」
「そそ、そんなことあるわけないじゃないですか!」
「あそう。コントロールはされてたんだな。でも腕輪はなかった……薬でも飲んでたのか」
「くす、……注射を」
「なるほどね。てお前、素直だな」高笑いする仁。「その腕輪も注射みたいなもんだ。自動的に薬が注入される。で、薬がきれたらアマゾンになって食事を開始するってわけだ」
「しょくじ」
「人喰いだよ」身を乗り出して言う仁の、表情は影になって見えません。「一度アマゾン細胞が覚醒したらもう薬はきかない、制御不可能だ。お前は間に合ったから」
「じーんさーん! 鶏!」またも七羽。
「はいよ!」

仁に誘われ共に屋上にあがってくる悠。
「よかったな。豪華鶏鍋が食えるぞ」鶏たちのなかからどれをつぶすかと吟味しつつ、振り返る仁。
「え。……それ、ペットじゃ」
「何言ってんだ」ナイフを突き刺しておいた柱から抜き取る仁。「食うために飼ってるの。おれはアマゾンになる前から、自分で殺したものしか食わない。ああ、人は喰ってねえけど」
「……うっ」口元を抑える悠。
「あ、吐く? ならそこの菜園にやってよ、栄養になるから。へっへ、たっぷり頼むぞ」

初めての船釣を唐突に思い出しました。船酔して戻す人がいるとみんな撒き餌撒き餌と喜んでたっけ……

竜介3

聴衆の顔を見回す加納。
「……で、実験体についてるその腕輪の有効期限は2年。つまり事故から2年経ち、薬が切れて覚醒した実験体たちが人を喰らいだした、というわけです」
話は終わったとばかりに廊下へ退き始める加納。
「何それ……何それって言ってんだよ!? それとんでもない不祥事だろ!」叫ぶ三崎。
「こんな別会社作って会社ぐるみで隠蔽ってことか」と前原。
「ですが、公表したら大パニックですよ? 隣の住人が人喰い細胞の怪物……かもしれないんですからね」足を止める加納。
「だいたい、どんくらいいるんだよ」かすれた声で聞く望。

「約、4000」

予想外の数に目を剥く志藤。
「期限ぎれにも個体差がありますから、一斉に4000匹が動くことがないのが幸いです」その近くに座る、マモル1人が声もあげず、つらそうに顔を背けています。
「竜介は、期限がきれた、ってことか」
「でしょうね」

凍りつく空気のなかで、出し抜けに鳴り響く着信音。ポケットからスマホを取り出し、その画面を見て驚愕する志藤。
そこに浮かび上がる名は。
「竜介……」

真っ先に動いたのは前原。手早くキーボードを叩き、逆探知の準備ができたことを志藤に告げます。
「おい竜介!」直後応答する志藤。

「……す、すいません」涙に曇る震え声。「ほんとはおれ……アマゾンでえ」

「ああ、いいから。そんなことはいい! お前大丈夫なんだろうな。今どこにいる、場所を言え。竜介!」
しかし聞こえるのはただ、か細い嗚咽のみ。
「竜さんまだ、マトモっすよ」
「だったら、マモルみたいに一緒にやっていけんじゃねえの?」
志藤の傍らで口々に叫び始める仲間たち。
「ああそうだ!」お前なら帰ってこれるとの思いを込め叫ぶ志藤。「竜介!」

「まあ無理でしょうね」水をかける加納。「一度目覚めたアマゾン細胞はもう制御不能です。たとえ腕輪を使っても」

竜介4

「竜介!」
「竜さん!」
「竜介さん!」
「大滝くん! ……大滝くん!」
加納の声を打ち消したくて叫ぶ一同。
「今どこいるんすか!」
「大滝くん」

「志藤さん」その時、音高くキーを叩く前原。「見つけました」
スマホからは通話の切れた音。
「――行くぞ」

泣きじゃくりながら、すぐさま戦闘モードとなり、出て行く一同。見送る加納。
「ただ、あの緑と赤のアマゾンについては、まだわかりません……現状、対処保留とのことです」

街へ滑りだす、ノザマぺストンサービスの車両。

申し出

ビルの一室。胃の内容物を戻してしまったのか、洗面所で口を濯ぐ悠のそばで、断続的な振動音が入ります。
「仁!」スマホの画面を一瞥し叫ぶ七羽。表示されているのはある1点を指し示すマップ。
「はいよはいよっ」エプロンの前を血で汚した仁(たぶん台所で鶏をつぶしていた)が出てきて、「え? お、実験体見つかったらしいな。……そうだ、お前も行くか?」
「え」
「アマゾン退治だよ。肝心なこと言ってなかったが、おれの目的はアマゾン1匹残らずつぶすことだ。当然お前も入ってる」
「つぶす……」
「駆除だよ。ただな、まだ人喰いまではいってないしな。協力するなら少し待ってやる」
「協力って。つまり実験体を」
「そう。殺して殺して殺しまくる……ヤならお前が駆除される。何も傷つけず、自分の手も汚さない……優しい生き方だけどな? 何の役にも立たないんだなあ」
息を呑む悠に、ふっと微笑む仁。
「ま、考えとけ」一転明るい声で言うと壁にかけたベルトを手に取り、七羽の頬に口づけて出ていきます。

「どうする? 仁はやると言ったらほんとうにやるよ」
「……」にわかには信じがたい、というよりもまず飲み込めない、情報の洪水。それを浴びせておいて急な決断を迫る仁の言動に、ただ立ちすくむだけの悠。
綺麗に解体され、艶々とした鶏の肉片。
鍋の支度を始める七羽。

「……いつか。ぼくが誰かを食べてしまうくらいなら、……その前に、駆除されても……」

「はああ、まったく!」手を止め、冷蔵庫からビール瓶を取り出すと栓を抜きらっぱ飲みします。七羽は仁のいる間は余計な事は言わず、ただ悠との会話を聞いていただけですが、別に控えめな性格とかではなさそうです。「なーんか、あんた、仁と同じアマゾンなのにぜんぜん違う。仁が野生なら、あんたはなんていうか……養殖物? だってほら、自分でご飯とってこないでしょ。わたしは仁の生き方に共感して一緒にいるけど、でも優しい生き方も悪いと思わない。思わないけど……そのままじゃあんた、すぐ死ぬから」
瓶を置くと震え怯える悠に、布製のバッグを押しつけます。
「これ、仁が使ってるのと同じ。2本あるから1本あげる。それは、……あんたを強くしてくれる」

中を開けて“それ”を見た途端、滾る熱と、よみがえる記憶の奔流。
再び、檻の中の獣は、鎖に繋がれたまま咆哮をあげ――。

竜介5

谷あいの橋の上で突然停まる車両。
「おいどうした、フク?」無言でうなだれる運転席の福田を、訝しむ志藤。
「つい、た……?」顔を見合わせる後部座席の一同。
「駆除、するんですか、大滝」とうとう口を開く福田。
「……いいから出せ」
「今まで、虫、ただの害虫だと思っていました。けど大滝は、害虫じゃねえ。2年間ずっと一緒に」
その会話を、ずっと聞いている他のメンバー。

***

「うう……っ」傷の痛みに呻く声か、悲しみにすすり泣く声か。いずれにしても切ない響きです。「どうして来ない……もう限界だ、はやく……っ」
山奥の廃工場。朽ちた構造物の外に広がる林。
「みんな」物陰にうずくまり身を震わせる竜介。整ったその顔が苦しみに歪み、次の瞬間、左半面だけが獣のそれとなります。軋むような声。「喰いタい、ノに……」

悠然と新雪を踏み近づいてくる足音。中を覗き込み竜介の变化を悟る仁。
「あーあ。駆除班の制服が泣いてるよ?」
「! ……腹が……へッた……!」血にまみれた右手の甲で口元を拭う。赤い血が整った右半面を彩る、禍々しくも不敵な表情の竜介。餌を見つけた捕食者のように。
「そっかあ。でも、喰わせるわけにはいかねえなあ」そこは通路だったのか、手すりにもたれ、のんびりと言い放つ仁。
熱量とともに出現する蜻蛉アマゾン。それを見据え、アマゾン、と小さくつぶやきベルトのグリップを握れば――アルファ、とかすかな電子音。
出現したアルファはしばしその場に佇み。
次の瞬間一声咆哮すると高く宙に舞い上がります。空の彼方に、点のように小さくなったその姿が、恐ろしいスピードで再び地上へ。

竜介6

無言で前を見つめる福田。
そちらへ視線をやることもできない志藤。
「いいから出せ!」隔壁を蹴り叫んでも、福田は微動だにしません。窓外を見つめうつむく志藤の背が黒く映り。「……お前ら、駆除班に入った理由は何だ。世のため人のためか。違うだろ。金だ。おれも、一也も望も。淳もだ。そんなおれたちが。今さら仲間はやれねえだの何だの言えるか!」
がん、と壁に背を打ちつける前原。
「駆除しなきゃ食ってけねえ。それで、竜介を狩る理由は十分だ」
血を吐くような声。窓の外を見つめたまま、うなだれる志藤。広い肩に頭がめり込んでいくように。
無言でキャップの鍔を低く下げ、車をスタートさせる福田。

***

そしてベルトを手に、何故か屋上へあがってきた悠。後からついてきた七羽。
「ご飯は自分でとってこれなくっても、せめて抵抗はしなさい。ちゃーんと、自分の力で。……生きなきゃ」

***

蹴り飛ばされ地に転がる蜻蛉。てっきりさっきの一撃で、蝙蝠みたいにアルファに頭蓋を踏み潰されたと思ったのでほっとしました。
そちらへ近づいていく駆除車両。
降り立った人々の前で、蜻蛉とアルファが格闘しています。
相手の攻撃を捌き、足払いし、きれいに回し蹴りを決めるアルファは武道の動き。人間でしかありえない動きです。
「あのアマゾン、また?」
「こっちへ向かってこないかぎり気にするな……全員フル装備。竜介を……虫を、狩る!」
眦を決し裂帛の気合。無言で降りる福田、銃を出す前原。

狩りの時間

何も傷つけず、自分の手も汚さない。優しい生き方だけどな――仁の言葉が耳に残る。
「あれは、いつも見ていたあれは……ぼくだ。ほんとうのぼくは……」卒然と悟る悠。自分こそが檻に飼われた獣。

***

格闘を続ける蜻蛉とアルファ。数発のパンチと蹴りを受け、後ずさり殴り飛ばされる蜻蛉、悠然と歩み寄っていくアルファ。
「竜介ぇぇぇ!」物陰へ逃げようとする蜻蛉の眼前に、先に回りこんでいた前原たちが立っています。
泣きそうな顔の前原、後衛の福田。
「……淳」
「……スミマセン、竜介さん……逃がすわけには」
低く唸り、次の瞬間、激しく咆哮する蜻蛉。手近なところに立つ前原の銃を払いのけ、身体をつかみ、腹を強く打ちつけます。
「うわあ! おっちゃーん!」
三崎が叫んだのでしょうか。皆が一斉に駆け寄り銃口を向ける中、押し倒した前原の腹を、ひたすら食い破る蜻蛉。
「お前に喰われる……んだったら……いいか……」力なくつぶやく前原。
「うわあああああああ!」泣きながら銃弾を打ち込み続ける望、三崎、福田、志藤。その背後でただ立ち尽くすマモル。
やがて前原が静かに目を閉じ、
「うああああああっ! 大滝くぅううん!」ついにマモルが服を脱ぎ捨て、土竜アマゾンとなって跳びかかっていきます。
静かに見物しているアルファ。

***

檻を蹴破り、獅子をつなぐ鎖を、壁から引き抜いて一声高く吠える獣。
悠の内側で膨れ上がる、アマゾンという名の怪物。――あれはぼくだ。
「うああああああああ!」絶叫する悠。「アマゾオオオオオオン!」
激情のままベルトを当てハンドルを握れば、そこに爆誕する緑のオメガ。
すさまじいスピードで山奥の狩りの場まで、跳躍していきます。

***

蜻蛉対土竜。
「一也」志藤の指示で三崎、福田は前原の身体を後方に引きずっていきます。
短い応酬の後、土竜の突進をひらりとかわし、崖から突き落とす蜻蛉。
転がり落ちるた竜は、川べりに、うつ伏せに倒れたまま動きません。
「マモルちゃああん!」
飛び出していく人間たちに、向きを変える蜻蛉。
「喰った分強くなってるか」感心したようにつぶやき、前へ出て行くアルファ。さてどうするかと両手を打ち合わせたその時、彼方からの気配に顔を上げます。

その瞬間、蜻蛉の背後の空に、点のように見えた小さな黒い影がみるみる大きく、近づいてきます。非常識な速度で宙を駆り、蜻蛉の頭に飛びつきねじ伏せるオメガ。
てっきり蜻蛉の首がこの一撃で折れてしまったかと思いました。
が、昆虫のセミやトンボが、力尽きたか、と見えた次の瞬間突如激しく羽ばたくように、倒れた姿勢から超人的な力で宙に舞い上がり格闘を続けようとする蜻蛉。それを蹴りつけ吠えるオメガ。低く伏せ、力をためるように大きく呼吸します――。

「まった新しいアマゾンか」忌々しげな望の声。しかし前回と違うのはその腕の腕輪と腰のベルト。その時アルファも、オメガのベルトに目を留めます。

(あのベルト……七羽か)

ぐぎゃあ、と声を上げ蜻蛉を蹴りつけるオメガ。舞い上がろうとする相手を叩きつけるように。さらにその喉笛に喰らいつき、苦しみもがく蜻蛉から突き飛ばされるとベルトを操作、腕に出現した刃を用いてその胴を真っ二つに。
谷底に転がり落ちていく上半身、緑の体液を散らし横たわる下半身。
その死に何の感慨もないというように、ただ殺戮の興奮に息をつくオメガ。低く身構え、近づいてくるアルファにも牙を向きます。
「は、おもしれえ……」両腕を広げ、同様に身を低く沈めるアルファ。「来な♡」
これって可愛がりってやつでしょうか。来い! ではなく来な、と始終楽しげな仁/アルファの語尾にはいちいち「♡」や「♪」をつけたくなります。次週、アマゾンマンションとは。

4/9追記。小見出しを適当に入れてみました。あと、佐藤さんのtwを貼りました。
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2016.04.08 12:19 | amazonz ΑΩ | トラックバック(-) | コメント(-) |
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