LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

しんみりと、ほのぼのと愛おしいラスト――と思っていたらとんでもない。最後の最後で、物語の“終わり”が始まります。


three colours smoke / aubergene


そして仁さん今回も(´ε` )なしで外出。懲りてない。

色々と衝撃的でしたのでネタバレ感想は折りたたみ以降。それにしても今回、妙にサイトが重くてなかなか再生が始まらなかったのですがトラフィック集中してたのでしょうか? ただ、一旦始まればノンストレスでした。
「前原淳。おれたちと一緒にやってたやつだが――」
「前原くんだよ!」
「マモちゃん待った」
「そう、死んでなきゃおかしい」
「こうなって一番つらいのは淳なんだよ。だからわたしたちで、ちゃんと狩る!」
「一手早すぎた……」
「……みずさわくん?」


瀕死

仰向けに倒れたまま動かないオメガ。その体の下から流れでて、大きく地面に広がっていく赤い血。
「水澤くん!」ようやく事態を悟ったマモルが、慌てて起き上がろうともがきます。オメガの元へ這いより、「ね、水澤くん! なんとか言ってよ、ねえ、水澤くん。水澤くん! ね、水澤くん!」
「……フク」
他のメンバーはシグマを警戒したまま動けません。その中で福田が、志藤の意を受けその場から離脱していきます。その気配に振り返るシグマ。
「やばい」緊張に息を呑む三崎。しかしシグマは悠然とベルトを外し、前原の姿で今一度マモルのほうを見やります。
「ね、水澤くん! なんとか言ってよ」
「テスト終了」ぼそりと言って志藤に視線を向ける前原。何だと目を上げる志藤に笑いかけ、去って行き――前原という脅威が去った後、一斉に目を開かぬ悠と、その悠の身体を揺すり続けるマモルの元へ駆け寄る駆除班メンバー。

***

「急いで本社へ!」この戦いをモニターしていたのか、志藤に命ずる水澤母。

***

血まみれの姿で、目を開かない悠。
「一也、運ぶぞ!」
「りょかい」
福田が車両を近くまで移動させてきます。

***

水澤の執務室。
「明日の午後、Tlalocを開始します」宣言し、起動端末を閉じる水澤。「準備を」
「はい」白衣の男が頷くのを見て、起動端末を手に歩き出す水澤。
「悠……!」
我が子の名を呼ぶと螺旋階段を駆け上がり、本社の通路を足早に、ほとんど駆け出さんばかりになりながら、おそらくは悠が運び込まれてくるであろう研究棟へ急ぎます。
付き従う加納。
そして、その行く手から、現れる男の姿。スマホを右手に、ご満悦の表情で。橘。
その姿を睨みつける水澤。
両者がすれ違い、そして水澤に付き従っている加納の、ポケットでスマホが振動します。取り出して画面を見る加納。そこにある文字列は、<トラロック阻止>。
こちらに背を向け去っていく橘を、無表情に振り返る加納。

野座間製薬、おそらくは研究所。服を脱がされ、酸素マスクを当てられたまま動かない悠。
「急いで。いい、ダメ元でやれ!」
「傷口しっかり押さえて」
「すみません」
「はい」
「ドレーン、急いで」
「☓☓(聞き取れません)いくよー」
「血圧、70をきってます。RRBは……」
慌ただしく動く研究者たち。
「ここしっかり押さえろ」
「はい!」
その間も、凄まじい勢いで流れだしていく悠の血液。

野座間製薬研究所、玄関ホール。ベンチに腰かけ、すすり泣くマモル。
「……水澤くん、あんなに……ぼくがちゃんと、戦ってれば……ああ……」
「しょがねって」鼻水をすすりあげ泣き続けるマモルを見ていられず宥める三崎。「どう見たって、前原のおっちゃんだもんね」
「でも、違う。わかったろマモル」厳しく、しかし優しく、言い聞かせる望。
「……」息を震わせ、横を向くマモル。
そこへ水澤が駆けつけます。
「悠は」
「処置室に」端的に答える志藤。すぐさまそちらへ歩み出す水澤を追うように数歩進み、「本部長さん」
足を止める水澤。
「おれたちは虫を狩るのでいっぱいいっぱいなんですよ。内輪もめだか何だか知りませんがね。あんな妙なのにつきあわされたんじゃ、たまりませんよ」
「……わかってます。厳重に、抗議するつもりです」
「は。義理でも息子が死にそうな目にあってんのに、“厳重に抗議”、ねえ」マモルの元から立ち上がり、睨めつける三崎。
「悠、死ぬかもしれなかったんだぞ」望も進み出ます。
その言葉がショックだったのか、ひっく、とまた嗚咽するマモル。
「今は。……それこそ内輪をもめしている時ではないんです。天候次第ですが、Tlalocを明日の午後開始します」

この緊迫した場面でも、部下に対する態度を崩さない水澤には少し感心しました。落ち着いて苦情を受け止め、理解を示し、対策を打ち出す。基本ですが義理とは言え我が子が瀕死の時にはなかなかできないことです。とくに落ち着いて、のところが。

「……」Tlaloc開始と聞き、無言で水澤の顔を見る志藤。同じく無言で、水澤の手にある起動装置を見る加納。
「Mは避難させなさい」志藤の視線を受けつつも、マモルを振り返る水澤の顔が、いくぶん優しく見えます。「作戦が始まれば、半日は街がガスに包まれます。マスクでは保たないでしょう」
言って今度こそ去っていく水澤。付き従う加納。

「へーっ」ため息のように息をつく三崎。「美月お嬢さんと全然似てないし。そこも養子だったりして」
背後の階段を人が降りてきたので話に関係あるかと思ったらただの通行人でした。
「くだらねえこと言ってないで帰るぞ」先に立って出て行く志藤。「ここに居てもしょうがねえ」
傍らに立っていた福田が従い、望も踵を返します。座ったままのマモルに屈みこむ三崎。促されて、立ち上がるマモル。
「うまくすれば、明日で狩りも終了か」
「……」志藤の言葉に目を落とすマモル。

前夜

処置室。先に着いた加納が戸口で足を止め、中の様子を見渡します。その背後から姿を現す水澤。
「あっ、本部長。悠くんは、」報告に出迎える研究員? 医師? の白衣は、おそらくは悠の血でベッタリとよごれています。

むしゃむしゃと、何かを貪り食うような音。

まだ戸口に立ったままの加納と水澤の、その間から内部を覗き見るようなカメラ。視界の中心で処置台に起き上がり、小さなテーブル(おそらくはガーゼやトレイなどを載せておくための)に皿を積み上げ、鶏肉を食べ続けているのは悠です。それを気味悪そうに見ている他のスタッフたち。
旺盛な食欲を見せ続ける悠の、裸の胸にも肩にも、もはや傷一つありません。
「……悠?」信じられないという表情の水澤。
ベッドの傍らの廃棄物入れには、ぐっしょりと赤黒い血に濡れたガーゼがあふれており、それを見るだけでも相当の出血量だったとわかります。なのに。
「さっきまで重症だったんです。それが食事だけでここまで」
周囲の騒ぎなど眼中にないように、一心に食べ続ける悠。見守る水澤の顔にも笑みが広がります。
「悠……やっぱりあなたは……ふふふふ……あはははは……はははははっ」
はじめ安堵の笑みと見えたそれは、己の研究成果を誇る笑いに変わっていき、それを聞きながら、おぞましいものでも見たかのように、白いハンカチで口と鼻を覆う加納。
今や食事を楽しんでいるかのような表情で、なおも貪り食う悠が頼もしいのですが。

***

『はい、完璧です』一方、帰還した前原の身体チェックを行っている国際営業戦略本部研究室。『損傷部分は成長因子の注入で充分でした。タンパク質の経口摂取は必要ありません。すべてのテスト、完了です』
自室で歩き回りながら、その報告を受けている橘。
「ご苦労だった。特研が実験体駆除に明け暮れてる間に、かれらのアマゾンは一世代前のものになったわけだ」
『しかし、Tlalocを実行されれば新アマゾン細胞も最初から弱点ありということが、』
「させないよ」足を止め言い放つ橘。「安心して次の作業を進めたまえ」
『はい』
「会長もきっとご満足いただけるだろう」通話を切り、目の前のモニターに目を向ける橘。いまだ身体チェック中の前原の姿が映っています。「あとは……」

***

曇天の夜空。早い雲の動きを、ビルの屋上から見上げている七羽。
「仁さん? 雨ね、明日くらい降るかも!」
室内でその声を聞いている仁。ソファに横たわるその身体の、下に敷かれた毛布は、ぐっしょりと朱に染まっています。こんなの敷きっぱなしだと冷えちゃいそうなんですが。目を開き、ベルトを床に下ろす仁。
「あっそう?」
「なんとかって作戦、始まるのかな」言いながら入ってくる七羽。
「んー。たぶんね」
「じゃあ」真顔になる七羽。不安げな声が可憐に聞こえます。「逃げないと」
「……そうだな」起き上がる仁。「おれが真っ先にやられたんじゃあ、結果確認できないもんな」
それどころか成功率8割9割なんですから。単純計算で400匹はまだ残るわけで、ここでやられてては目標完遂できません。
「ちょっと温泉でも行く? 金ないけど」七羽の肩に手を置き、ささやく仁。金ないけど、のところで、くすっと笑顔になる七羽が可愛い。くちづけ、抱き合う2人の背後の床に、置かれたままのベルトが意味深です。

***

夜が明け、広い敷地に整列しているドローン。曇天の下、慌ただしくその整備をしている研究員の姿が見えます。

***

ノザマペストンサービス待機所。
冷蔵庫を開け、何十とあるハンバーガーをボストンバッグに移し替えているマモル。
手前では福田も、自分の着替えを鞄につめています。
腰かけて靴をはくマモルの前に、屈みこむ志藤。
「いいな。おれが連絡するまで、絶対戻ってくるんじゃねえぞ」
「ん……」
「マモル」
「……」咎められても、元気がないままのマモル。見かねて横から三崎が口を出します。
「だいじょぶだって! 坊ちゃまも途中で拾って、一緒に行くってよ? おれたちも送ってくし」
「ああ」
「な?」
うつむくマモル。
「でも悠のやつ」振り返る望も、周囲を片付けています。バッグを肩に掛け、「もう回復したってほんとかな。死にそうだったくせに」
「あいつもアマゾンだったってことだ」応じる志藤。あの雑然と生活感にあふれていた室内がすっかり綺麗になっていて、全員ここを引き上げるのかと思ってしまいます。まだ400匹は残るはずなんですけど。
ジ、と音高くボストンのファスナーを閉める福田。それを合図に、
「行くぞ」と声をかける志藤。
皆が一斉に出ていきます。靴を履こうと身をかがめるついでに、座ったままのマモルの頭を乱暴に撫でていく福田。
「あっ」それで気づいたのか、靴を履いたまま膝でいざるように畳の上に戻り、食卓の上に置いたままの貯金箱を手に取るマモル。

仲間割れ

「降水確率は60%から70%といったところです」
水澤の執務室。
「微妙なところね」
白衣の男の報告を聞きながら、デスクで頷く水澤。2人を遠景にいきなり入ってくる加納のアップが相変わらず何を考えているかわかりません。
「もし降りだしてもしばらくは様子を見ます。作戦途中で雨がやんだら取り返しがつかないわ」
「はい」
「母さん」その時聞こえてきた悠の声で、表情を変える加納。かれの視線の移動に伴い、螺旋階段を降りてくる悠の姿が映ります。
「準備はできたの」
「ほ、ほんとにやる気?」勢い込んで詰め寄ってくる悠。「4000の実験体を皆殺しにするなんて」
「まだそんなことを言ってるの!」
「でも」叱責の声にひるむ悠。「今日だなんて、急過ぎる!」
「今日やろうと明日やろうと実験体には同じなの」
座ったまま見上げてくる水澤のほうが正論に聞こえます。むっとする悠。
「でも!」

「今のままひっそりと生きていけるならって、そう思って集まってるんです」
人肉レストランで、それでも儚く笑った、美しい女。彼女の言葉に頷く善良そうな人々。
皆ガスの犠牲となり、消えていった――。


「実験体だって生きてるのに」
「生きている……と言えるかしら」ゆっくりと立ち上がる水澤。
「え?」
「結局あれは」デスクの前へ出て、室内を歩き始める水澤。「ひたすらタンパク質を求めるだけの人工物よ。しかも、人を食べるとなれば駆除するのは当然でしょう」
「……」
「でも、あなたは違うわ。決定的にね。作ったあたしが言うんだから間違いないわ。自分は人間なのか。前に聞いたわね?」悠の方に近づいてくる水澤。「確信したわ。あなたは……人間よ!」
ごろごろと、不穏な雲の音。
「母さん」絶句する悠。悠もまた、実験体と同じくこの研究所で2年前に製造されたアマゾンだと、作中はっきり言明されたのはこれが初めてではなかったでしょうか。
「ふふふふ。自分でもわかるでしょう」息子の世話を焼く母親のように、悠が肩にかけているバッグのショルダーベルトに手をやる水澤。
「わかるよ」鬱陶しそうにそれを振り払う悠もまた、反抗期の息子っぽい。話されている内容の深刻さを無視するなら。「ぼくも同じだ。わからないと思うけど、いつもお腹が空いてしょうがない。ぼくも実験体と同じ、アマゾンだよ」
かつて不安な表情で自分は人間かと聞いた悠。人間でありたいという思いがそう言わせていたと解釈していた水澤の知らぬところで、悠は善良なアマゾンたちへの共感を深めていたのです。
何か声をかけようと、背を向けたまま立ち尽くす息子のほうへ、一歩踏み出しかけたその時。

「何するんですか!」白衣の男の抗議の声。続いて大きな物音がします。
振り払われ、床に倒れる白衣の男。その目の前で、水澤のデスクからTlalocシステムの起動装置を手に取り、歩き出す加納。
「加納?」突然の活劇に驚く水澤。
「本部長、申し訳ありません」階段の下でくるりと振り返る加納。「橘本部長、そしておそらくは会長が、Tlalocの実行を望まれておりませんので」
ぱちりと起動装置を閉じる加納。
「あなたまさか」近づいてくる水澤に背を向け、起動装置を手に螺旋階段を駆け上がっていく加納! ハイヒールの水澤では追いつけそうにありません。「悠止めて! あれがないとTlalocが起動できないのよ!?」
しかし動かず、顔を背ける悠。
「悠!」

ノザマペストンサービス、駆除班の車両が、野座間製薬本社のアプローチに、おそらくは悠をピックアップしに入ってきます。
横合いから猛スピードで飛び出してくる黒い車に、危うく急ブレーキを踏む福田。
そして、その運転者の顔に、目を留める志藤。
「ん……? 今のは」

***

水澤の執務室。
ゆっくりと階段を上がっていく悠。それは加納を追うためではなく、義母のもとを去るために。
途中で一度足を止め、水澤を見下ろす悠。見あげる水澤。
しかしかわされる言葉はもう、ありませんでした。歩き出す悠の姿がまだ消えないのに、ふ、と一つ溜息をつき、ポケットからスマホを取り出して誰かに指示を下し始める水澤が切り替え早い。

野座間製薬本社。
ホールに入ってくる駆除班一同。通路を歩むかれらの前に、ボストンバッグをかけた悠が飛び出してきます。志藤を見て、うしろめたそうな表情になる悠。それに気づかなかったのか、近づいて声をかける三崎。
「坊ちゃま、準備出来た? 行くよ」そのまま皆に合図して、悠がついてくることを疑わない様子で行き過ぎていきます。他のメンバーも。
「避難する必要、」しかし悠の声に足を留める一同。「……ないです」
「なんで」振り返る望。
「トラロックが開始されないから」
「どういうこと」戻ってくる三崎。
「秘書の加納が……トラロックのスイッチみたいなものを奪ったんです。ぼくはわざと見逃しました」
目を瞠るマモル。その背後、最後尾から、進み出てくる志藤。
「……何?」

***

七羽の部屋。旅行自宅をしている七羽。荷物を布バッグに詰めながら、
「仁。そろそろ行くよ?」
しかし答える声はありません。立ち上がる七羽の姿が心細そうで可憐。

決着

球場の前。人気のない道を抜けていこうとする加納。しかし、前に立ちふさがるバイクの影に、ブレーキをふみます。
ゆっくりと手をあげて挨拶するライダーは、仁。
「めずらしく、本部長さんに、頼まれちゃった♡」
「……」無言でその顔を睨みつける加納。ギアをバックに入れて猛スピードで下がっていきます。追う仁のバイク。そして加納の車と入れ違いのように、その仁の前に現れるのは、またしても前原。
「「アマゾン」」
両者同時にベルトのスイッチを入れ、
「うらあああああああっ!」バイクのシートを蹴り、飛び上がるアルファ。迎えるシグマ。かるいジャブの応酬。「うううらああああっ!」

***

雑居ビルの屋上。
「仁」つぶやく七羽の姿が頼りなく小さく映ります。ごろごろと鳴る空を、見上げる七羽。

***

「ふっ! はっ!」腹を、腕を殴りつけようとするアルファ。その拳をことごとく止め、無力化するシグマ。
「うううううっ、はあっ!」それを振り払うアルファ。
息を吐きながら首をごきりと鳴らすシグマ。
「今度は、三手で詰む」
「……っ。ははっ、……舐められたもんだなァ」怒りを声に滲ませる、ここのアルファの表情が好きです。お面ですけどね。
無言で低く身構えるシグマ。アルファへ突進します。
カウンターを食らわそうと腕を振り上げるアルファ! しかし高く飛ばされ、地に転がされたのはアルファのほう。スタジアムの入り口まで転がり身を起こします。
「一」それを振り返りつぶやくシグマ。改めて身構え、「バージョンアップ、してるからな」
「はっ」首を振るアルファ。膝に手をつき、その反動で立ち上がります。「面白えじゃねえか……はあああっ!」

現金

野座間製薬本社。通路で悠の首を締め上げている志藤。
「お前。自分が何したかわかってんのか」
背後で呆然と両者を見つめているマモル。
「わかってますよ」挑戦的に応じる悠。ここもなんだか反抗期の息子が父親に言ってるみたいですね。「でも。あのレストランの人たちみたいな実験体まで!」
「人じゃない!」突然激昂する悠に、負けじと怒鳴りつける志藤。「虫だ!」
「虫ならいいんですか!」
「ああそうだ。お前も散々狩ってきたろうが!」力任せに悠を突き飛ばす志藤。
「ぜんぶに」昂然と顔を上げ、起き上がってくる悠。「同じ気持ちなんて、持てないですよ。それ、悪いことですか」
開き直りました。
「……!」こいつ、殴りつけてやるという表情で前に出かける志藤。警報のようなコール音。その肩をとっさに背後からつかみ留める福田。
「マコさん!」同時に三崎も志藤に近づいてきます。手には調査班との通信機。「鷹山仁が、シグマと戦闘に突入したって」
「仁さん……」悠も我に返ります。
「1人じゃやばいんじゃねえの」進み出る望。
皆を見、悠を一瞥し、先に立つ志藤。「……行くぞ!」
その後を追っていく三崎、福田、望。しかしマモルだけはのろのろと従いかけながら、悠の前からも立ち去りかねています。出口へ向かう一同と、その場に立ち続ける悠、両者の間でとうとう立ち止まり、叫ぶマモル。
「だめだよ!」
「……?」足を止め振り返る駆除班一同。
再び嗚咽の声を漏らし始めたマモルを、じっと見つめる悠。
「……だめ」やっと言い、決意の表情で志藤のもとへ駆け出すマモル。

***

「うらぁ! はっ、おおおおっ!」蹴り、殴り、手数は多いもののすべてその攻撃を無力化されてしまうアルファ。声に焦りがにじみます。疲れが出たのか一瞬動きを止め、はあ、はあと息をついたその時。
「三!」アルファの肩を地に叩きつけるようにして、反動で宙に舞い上がるシグマ。「はあああっ!」
「あああああっ!」顔を蹴りつけられ、背後へよろめき倒れるアルファ。柱に背を打ちつけ、衝撃で動けません。
「チェックメイト」

赤のキングを盤上に倒す手のイメージ。

ゆらり、とアルファの長身がゆらぎ、力尽き変身を解かれて倒れかかり――それでも足を踏ん張る仁。
「あああっ! ……はあ、」片手を柱に突き、なんとか持ちこたえてつばを吐きます。苦しげな呼吸音だけを聞くと今にも死にそうですが。
いぶかるシグマ。
「詰んだのに、どうして倒れない」
「倒れたくないからに決まってんだろうが」
「馬鹿な」
「……」苦しげな息をつきながら、それでも頭をあげる仁。曇天の下、その目だけが光っています。「死んでるやつにはわからねえだろうがな」
「わからないな。もう一度やるだけだ」右手をあげて示すシグマ。「チェック……」
爪先を仁に向け、ゆっくりと歩み寄っていくシグマ。

そこへ突っ込んでくる悠のバイク!
とっさにかわすシグマ。は、と愉快そうに笑う仁。
バイクを止め、シグマに振り返る悠。

遅れて到着したノザマペストンサービスの車両。ばらばらと駆除班メンバーが降り立ってきます。
「ん?」
悠と対峙していたシグマがその足音に振り返り、
「お前ら」と驚くのは仁。
一同の先頭で志藤が一瞬銃口を下げ、コインを宙高くはじきます。回転しながら飛ぶそのコインは――ぴかぴかに光る五円玉。

「だめだよ! ……だめ」叫ぶマモル。意を決して志藤の元へ走り寄ると、その手を掴み、強引に悠の前まで引き戻していきます。「同じチームでしょっ」
そして、今度は悠の前へ。同様に強引にその手を、志藤の前まで引っ張っていきます。
「一緒じゃなきゃ、……けんかもしないでよ!」
「マモルくん……」マモルの叫びに声を震わせる悠。

その前でかがみ込み、五円玉貯金の缶を開けるマモル。床に中身を開けます。
「お金ならあるから。みんな一緒に行こ?」中の一枚をつまみ上げ、泣きながらすがるような目で志藤を見るマモル。
動けない志藤の背後で、三崎が、声にならぬ声で笑い出します。
「……そっか。ほらマコさん言ってたでしょ。おれたちは金になるかならないかで動くんだって」
かれらを尻目にマモルへ近づいていく望。
「マモルくん」感動している悠、絶句する志藤。これで仲直りしなければ悪者です。
そんな志藤を見て微笑み、代わりに前へ進み出る福田が、一番にマモルの前にかがみ込み、その手から五円玉を受け取ります。確かに受け取った、というようにマモルに示し、ぐっと握りしめる手つきもかっこいい。そうしておいて立ち上がり、志藤を見つめる福田。
後に続くのは三崎と望。相次いでマモルの前に屈み込み、床に開けられた中からそれぞれ五円玉を一枚ずつ拾い上げて示します。そのまま、やはり志藤の顔を見る2人。やっぱり、これで仲直りしなければ悪者です。ため息をつき、天を仰ぎ、くしゃくしゃと頭をかきむしる志藤。
「……わかったよ」
進み出て、五円玉を拾おうと屈み込みます。その横で、先に五円玉を拾う悠が若いだけに動きが早い。まじまじとそれを見る志藤。文句あるかというように見返す悠。ふ、と微笑み、とうとう五円玉を一枚、拾い上げる志藤。
「マモルに金貰っちゃあな」
最後に一枚、自分のぶんを手に取るマモル。立ち上がり、一歩退いて、五円玉の穴から皆を覗き込みます。全員立ち上がり、そんなマモルを見返す一同。
笑顔で五円玉を顔から離し、改めて皆を見渡すマモル。


きらきらと光りながら、落ちてくる五円玉。ぱし、と音を立てそれをつかみとる志藤。
「……行くぞ」
「……!」決意の表情で自分の五円玉を掲げ持つ悠。
シグマに銃口を向ける三崎のヘルメットに、構える望の電磁ナックルに、そしてスコープを覗く福田のキャップのつばに、それぞれ五円玉が張り付けられています。
そして微笑み、自分の五円玉を握るマモル。
「あの新種の虫を……狩る」
「りょーかい」
つぶやく三崎、頷く望。
「うぉおおおおおおおおっ! アマゾン!」力を込め叫べば、巨大な熱量とともに出現するオメガの勇姿。雄叫び、シグマに殴りかかっていくオメガ。

狩り

またしてもかわすシグマに、望が蹴りかかっていきます。それもかわせばオメガ、望が両方向から殴りかかり、それをはっし、と留め、蹴りあげるシグマ。
「はっ!」
崩れ下がる2人になおも蹴りかかるシグマ。
「うあああああっ!」望がそれに突進し、体勢を立て直したオメガも加わります。しかしその蹴りはかわされ、逆に階上へ投げ上げられるオメガ。後を追うように跳び上がってくるシグマ。
「おおおおおっ!」
遅れてはならじと階段を駆け上がっていく駆除班一同。

ただ独り、柱にもたれているのがやっとの仁の前に、差し出されるハンバーガーの包み。
「卵じゃねえがな」
呆然と顔を上げる仁。ようやくその手が包みを受け取ると、志藤も皆の後を追い階段を上がっていきます。
「背に腹は代えられない、か」
猛然とくらいつく仁。自分で狩ったものしか食わない、というポリシーに反するということなのでしょうが、ハンバーガーを見る目つきからしてものすごく食べたそうでした。見る間に足つきが確かになり、食べ終わった紙包みを地面に投げ捨てると(いけません)ベルトを操作する仁。再びの変身。
「……アマゾン」

「はああ!」
「うりゃ!」
「おおおおおっ!」
志藤が駆け上がってきた階上。既に他のメンバーが展開しており、その中心では望、オメガとシグマが交錯。
相変わらずシグマが優勢ながら、望たちの素早い動きに決定打を出せずにいます。
「うわっ」
「がっ!」
しかしついに望が殴り倒され、ついでオメガも。倒れたオメガの胸を踏みつけるシグマ。その背にアルファの回し蹴りが決まります。仁さんいつ来ましたか。
「……」突き飛ばされる格好になったシグマが振り返り、
「ほれ」と倒れたままのオメガに手を差し出すアルファ。
「!」その手を取らずにすごい勢いで立ち上がるオメガが負けず嫌いです。
「やな顔すんなって。わーかんねえけど♡」
シグマに向かい構えるオメガの肩をたたき、我先に飛び出していくアルファ。表情ちゃんと見えてます。あっと見送るオメガの表情も。お面ですけど。猛然と後を追うオメガ。
「はあっ!」
シグマ対オメガ、アルファ。オメガ、アルファともどんどん蹴りが鋭く、アクロバティックになっていくのにかわし続けるシグマ。
「!」反撃に転じアルファの蹴り足を蹴り上げればそれだけで高く舞い上がるアルファが悲鳴をあげます。
「やっ」すかさず低くその足を払うオメガの旋風脚すらも避けるシグマ。その後のオメガの攻撃はその身体能力を見せつけるものでしたが、隙が大きく、その割に威力も小さかったようでいただけませんでした。
「おおりゃ!」着地したところをすかさず後ろ蹴りで圧倒するシグマ。
倒れ落ちた2ライダーを悠然と見守ります。

「!」その前に立ちはだかる三崎。その足の間に伏せ、スナイパーライフルを構える福田。この2人の2連射がかっこよかった。
まず三崎が撃ち、その銃弾の尻を、福田の銃弾が突いて威力を高めます。
先んじて撃たれた志藤の銃弾をかわすシグマ。その腹へ、三崎の銃弾が突き刺さります。
たちまちその体表に電流が走り、ショック状態となるシグマ。
これを幸機と立ち上がるアルファ。violento。後に続くオメガも。
ヴァイオレントスラッシュ、ヴァイオレントストライク、両者の必殺技が連続して決まり、舗道のタイルの上に倒れ転がるシグマ。

――何のダメージもないかのようにむくりと起き上がりますが。

「不死身か!? ……って、死んでるけど」警戒し銃口を向ける三崎、志藤、福田。
同様にまだ低く身構えているオメガ。その背後で、
「いや。ダメージを認識できてないだけだ」訂正するアルファはもう警戒を解いています。
「少し……」俯いて自分の胸を見下ろし、傷口に手を当てるシグマ。「あるか」
その足の間に、ぼたぼたと溶け落ちていく体組織。背にも大きな傷を受けていたのです。驚き振り返るシグマ。己の右手を見れば、その手も爪先から溶け落ちていきます。
「そんな……ばかな……」敗北を認められず、アルファらに背を向け歩き出そうとするシグマ。その時、その全身に衝撃が走ります。自分の背中から胸を貫く、巨大な手。呆然と見下ろすシグマ。その手が再び、背の方へ引きぬかれ、ざぶ、と激しい音を立てて体液が飛び散ります。倒れ落ちる、その背後に立っていたのは土竜。

「……っ」土竜の参戦に驚き顔を上げる福田、望。三崎、志藤。
「マモルくん!」オメガも声をあげます。チームの仲間と同じ顔をした敵。あれほど戦うことを拒んでいたのに。
「……ぼくも、チームだから」動かぬままつぶやく土竜。見下ろした相手は、不思議そうに顔を上げ、そして土竜の前でこときれます。
変身を解いたマモルの元へ駆け寄る一同。じっと五円玉を手に、立ち尽くすマモル。その穴を通して見た敵は、今や元の、前原の姿に見えます。
「やっと休めるな、淳」
「お疲れさん」
かつての仲間に、各々やわらかな笑みさえ浮かべ別れを告げる駆除班メンバーを、後ろから見つめている悠。
かれらの前で、シグマの全身は黒く溶け、あとにはベルトだけが残ります。
進み出て、そこにも五円玉を置くマモル。前原のぶんだと言うように。
仲間ごっこは自分には関係ないと、ベルトを手に去っていく仁。
かつて前原だったものの残骸を、ついに降り始めた雨が、洗い流していきます。

終わりの始まり

「どうしますか。これだと、あまりまとまった雨には」
水澤の執務室。窓から空を仰いでいる白衣の男と水澤。それならカーテンを開ければいいじゃないかという気もしなくもない。
「延期しましょう。端末もありませんし」腕組みを解く水澤。しかし、螺旋階段を降りてくる足音に振り返ります。「加納?」
「橘本部長が何をするかわかりませんでしたので」足を止め、こちら側に横顔を向けたままで話し始める加納。「わたしが動けば逆に、それ以上の手は出さないと思いまして。……作戦開始ギリギリまでねばってみました」
裏切っていませんでした! 偉いよ加納!
「ん、ふふふっ」笑いが口を突きこぼれ出ます。「くっ、ふははははっ。ふははははっ……さすがね」
降りてきて水澤に向け、Tlalocの起動端末を差し出す加納。それを出迎えるように近づいていく水澤。

***

「研究に失敗はつきものだ」
会長室。レースのカーテンの向こう、車いすの老人のほうへ頭を下げたまま、微動だにしない男の影。
「……わたしはそこを追求したことはいまだかつてない。だが間違った思考については別だ」恐縮する橘を、叱責する天条。「あらゆる面で害をなす、それは即座に正さねばならない」
「お待ち下さい。わたしは常に、会長のご意向に添って」たまらず近づいてくる橘。
「アマゾンシグマはものを食わぬ、とか」
「はい。生命体として究極と言えます。人を喰らう旧タイプのアマゾンに比べ、――」水を向けられ、得意気に語り出す、その声を遮る天条。
「もの食わぬ生命体など最弱にして下劣!」
「……っ」虚をつかれた表情になる橘。
「わたしが求めるものを、見誤ったな」振り返る天条。「橘くん?」
「しかし!」唇を引き締めつつも反撃に転じる橘。「では、その生命体を一掃しようという、特研のトラロックは」
「面白いではないか」老人らしからぬ赤い唇の、その端を吊り上げる天条。「生命に絶対はない。100%駆除するなど不可能。そこから生き残るものは必ず出る。既存のアマゾン体の中から、あるいは、人でありながらアマゾンとなった鷹山仁。あるいは、水澤くんがつくりあげた、第三のアマゾン、か」

***

七羽のアパート。仲睦まじく鶏肉を調理している仁と七羽。

***

そして駆除班待機所。その中心でハンバーガーを頬張っている悠、バナナを食べている望。
「せっかくマモちゃんがくれたから!」そちらに向かい、五円玉を紐で止め、ペンダント状にしたものを見せる三崎。「お守り代わりに作ってみましたーっ!」
「やったー!」喜ぶマモル。「ちょうだい、ちょうだい!」
へへへ、と皆に配る三崎がまめです。予め全員分作ったようです。
「うわあ、かっこいい!」
「へえ……、そうか?」
「うん!」望が茶々を入れても気にせず歓声をあげるマモル。福田も受け取り、ビールを取りに席を立ちます。
「はい坊ちゃま」
「ぜんぶに同じ気持ちを持てない、か」間にいた福田が立ち上がったので、隣り合ったかっこうになる悠と志藤。自ずと互いに顔を見合わせます。「だがおれたちはそうできねえ。建前でもな」
「はい」
わかればよし、と言いたげに向こうを向く志藤。頷き、自分の五円玉を首にかける悠。

こちらではマモルの首に、三崎が五円玉をかけてやっています。
「よし、っと」
「ありがと。やった……よし」嬉しげに礼を言い、ようやくハンバーガーに手を出すマモル。「いただきまーす!」
しかし一口齧りつき、すぐに変な顔になるマモル。
「ん? どした、マモちゃん」
「これ。……あんまり美味しくない」
「へっへえ? 頂戴?」
「ん」
マモルのハンバーガーを指先ですこしちぎり、自分の口に放り込む三崎。
「ふ、いつもと同じだって。ちょっと舌肥えちゃったりして。はっはっはっは」
その冗談に笑う望。
しかしマモルには思い当たるふしがありました。

あの時。レストランで、蟹アマゾンに襲いかかった時。反撃をくらい倒れ落ちた、客席。テーブルから落としてしまったのか、顔を上げた目の前に、転がっていた手つかずのハンバーグ。
抗いがたい欲求に、たちまち食いつき、貪った、あの味。


ビールを手に戻ってきた福田。その前で、かつて味わった人肉を思い出し、舌なめずりするマモルでラスト。なんという引きでしょうか!
今回の事態は9話「INTO THE CANNIBAL'S POT」の時点で心配されていたことでもありました。
客達の中で1人だけ覚醒してしまい、ハンバーグを食べられなかった描写。
同様に悠だけ、ハンバーグに手をつけず皿に残したままでした。
そのテーブルへ、蟹に突き飛ばされた土竜(マモル)が崩れ落ちた描写。
暫時、望とオメガだけが蟹の相手をしていたしていた描写。あとから再び参戦した土竜の、動きが格段に良くなっていた描写。
あの時、悠の食べ残したハンバーグをマモルが気づかず口にしていたりして、と。まさかね、そんな悲劇的な、と思っていましたがはじめからかっとばしていた靖子にゃんにタブーはなかったのだなあ。
10話、11話と続けて描かれた五円玉のエピソードが愛おしく美しかっただけに、そして戦いを前に五円玉を弾きあげ、つかみとる、駆除班メンバーの絵柄がかっこよかっただけに、この落差にやられてしまいました。

やられていたのですが、今、この既視感はどこから来るのかと思ってて、よく考えれば必殺仕事人……

そして加納。これは水澤本部長でなくてもやられますね。しかしただの人間である加納に、悠、仁を差し向けようとしたのもなかなかひどいと思います。いい感じに殺伐とした信頼関係です。
ということで、三崎が用いる前原への呼称は“おっちゃん”のようです。第10話は修正しました。前原のほうが若いはずなんですが老成した雰囲気だったからでしょうか。1話を観なおしてみないとな。
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2016.06.10 06:28 | amazonz ΑΩ | トラックバック(-) | コメント(-) |
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