LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

現時点で残っている主要なアマゾンが、三者三様に戦士の本能に狂う回。でもはじめから覚悟の上のアルファや、自問自答を繰り返し、
「やっぱり自分はこう戦う」と自分なりの基準を持ち始めたオメガに対し、ただ本能に翻弄され、我に返った後のマモルの涙は切なかった。
そして三崎さん(´;ω;`)
三崎さんマジお父さん(´;ω;`)


Green Bag + Pink Umbrella / h.koppdelaney


元より暗かった映像が、今回は地下と雨の中が舞台であるがゆえにいっそう暗く、それだけに照明や駆除班のヘルメットのライトとの対比が美しい。
垂れ込めたガスの中に消えたアマゾンたち。その行く末に、幸あれと願わずにはいられませんが、絶望の波にひたひたと喉元まで洗われているような、そんな感想文。
「もの喰わぬ生命体など最弱にして下劣」
「生命に絶対はない」
「100%駆除するなど不可能」
「そこから生き残る者は必ず出る」


いつもは前回のあらすじ的な導入になるのですが、今回は天条名言集でした。

不穏

駆除班待機所。夜半、独り起きて、ぼんやりと五円玉を手に見つめる悠。

「ぜんぶに同じ気持ちを持てない、か……」
「だがおれたちはそうできねえ。建前でも、な」


志藤の言葉とともに、脳裏を過るのはあのレストランの客達。この思いをどう整理すればいいのかと考えこむ、悠。
そこへ、眠れないのかパジャマ姿のマモルが現れ、冷蔵庫のドアを開きます。雑魚寝は宴会などの後のみで、以前の殺人鬼回のように寝室は本来別にあるようです。物音に顔を上げる悠。
「マモルくん。どうしたの」
「あ、……お腹、空いちゃって」振り返り照れくさそうに笑うマモル。「水澤くんも食べる?」
「いや、大丈夫」戦闘後の体力回復などの場合を除き、悠はまだ、アマゾン特有の食欲には囚われていません。悠はまだ。
その答をどう解釈したのか、取り出したハンバーガーを電子レンジに入れるマモル。
「これ、あんまり美味しくないからね」
「……え? あんなに好きだったのに?」違和感を覚える悠。
「うん。なんとなく……水澤くんは何してたの?」
「別に何も。当直だし」手にしていた五円玉を、首にかけ直す悠。笑顔でそれを指さすマモル。
「それいいよね。チーム皆お揃いで」自分の五円玉を襟から出し、首にかけたまま嬉しそうに見つめるマモル。
悠とマモル、2人微笑んで目を見あわせれば、レンジから電子音が聞こえてきます。温めたハンバーガーを取り出すマモル。
「水澤くんも、もうチームやめないでしょ? これからもずっと皆と一緒だね」
悠のいる休憩スペースまで上がり込んできます。唐突に真顔になる悠。
「それは、……どうかな」
驚き、目を瞠るマモルが可愛い。その幼い顔に、
「ぼくたちは、志藤さんたちとは違うから」と言ってしまう悠。
「アマゾン、ってこと?」
「うん。……でも、完全にそっち側でもないから……じゃあどこか、って言われると、わかんないけど」
「チームだよ!」叫ぶマモル。「絶対、チーム!」
「……」
煮え切らない悠に苛立つのか、ハンバーガーに食らいつきます。
「だってここも、皆も好きだし!」
単純明快なその答を、辛そうに聞く悠。悠にはそこまで自信を持って答えることはできません。

その前でもう一口、ハンバーガーに噛みつこうとして――味気ないその食べ物を、ぽいと投げ出すマモル。

「やっぱ、もういいや」
「どうしたの」次に驚くのは悠の番です。
答えられず俯くマモル。
そして、なんとなく起きてきたのか、いつの間にかキッチンスペースから2人のアマゾンを見守っていた福田さんの、ただならぬ表情で場面転換。

***

同じ夜。水澤家では夜間照明に庭のプールが怪しく浮きあがっています。
寝苦しさに目覚め、水でも飲もうと言うのかキッチンスペースへ降りてくる美月。しかし下からの声に階段半ばで足を止めます。
「……ええ。明日の雨がどんなにおあつらえ向きでも、悠が街に居る限り、Tlalocは実行しません」
悠の名を聞きとがめ、思わず足音を忍ばせる美月。こわごわと覗きこめばダイニングテーブルで母が誰かと通話中です。
「当然でしょう? 悠だってTlalocのガスで死ぬ可能性があるんですから」
『おいおいw たった1人のために、4000匹つぶすチャンス、ふいにするってのか?』
「そうしないよう、強制退去させたいんです」テーブルの上の小型ジェラルミンケースを開ける水澤。「腕輪を使って抑制剤の過剰投与を行えば、こちらに戻すことも。今の悠にそれができるのは、」
『断る』
皆まで言わせず通話を断ち切る声。うなだれる水澤の前には、ジェラルミンケースに入った新たな金の腕輪が置かれています。母の言葉に、考えこむ表情になる美月。

「このままだとトラロックは宝の持ち腐れか」
七羽の部屋。物言わぬスマホを、見下ろす仁。部屋の灯りは落ち、蓮の花の形のライトだけが光ります。
「温泉の話はなしって感じね」起きていたのか、寝台に横たわったままつぶやく七羽。掛け布団にもあちこち血の染みがついています。
ゆっくり振り返り、おどけた声で、
「女1人旅とか、どう?」
問われて目だけをこちらに向ける七羽。見返す仁も真顔です。視線を戻し天井を見つめる七羽。
「――どう? ひとり」
無言でまた見る七羽。
「たまには、さ。な?」
目尻から耳へ、一筋すい、と涙が流れ、その冷たさ、こそばゆさに
「あっそ!」と飛び起きる七羽。仁をやり過ごし乱暴に冷蔵庫からビールを取り出します。栓を抜く音。振り返らない七羽の背中が小さく、
「それもいいかもね」立ったまま一口、また一口、ビールを含む七羽。笑おうとして笑えず、己の肩を抱く仁。

序曲

夜明けの道。
自転車のペダルを踏む、赤いスニーカーの足。
その行く手で、音を立てマンホールの蓋が中から押し上げられます。伸びてくる異形の手。投げ出される自転車。
地下道。ぐったりと引きずられていく犠牲者。

同じ地下道。逃亡生活に疲れ、震える、未覚醒のアマゾンたち。
「喰ったな」
「よりによって、ここで」
「逃げないと」
「でも、地上は危険……とても危険……」

***

駆除班待機所。腰掛けたまま、いつの間にかうたた寝をしていた悠。断続的な通信音に目を覚まし、すぐさまスイッチを入れます。
「はい……駆除班」
『識別コードをキャッチしました』
立ち上がり、全館に警報を鳴らす悠。

水澤邸。同じ頃、ダイニングテーブルの上でスマホが低い振動音を立てています。ソファから起き上がり、自分にかけられていた薄い毛布に一瞬目を留める水澤。
「はい」
『本部長。申し訳ありません』相手の声は加納。『至急、社へお戻りいただけますか』
「何があったの」
『鷹山仁が来ています……Tlaloc、の実行を要請すると』

***

野座間製薬。水澤の執務室に至る螺旋階段の、半ばに立ち、電話している加納。
その前の階には悠然と仁が腰掛けていますが、階段のそこかしこに、阻止しようとして倒されたのであろう警備員が死屍累々。

***

「すぐに行きます」通話を終え、移動しようとやはりダイニングテーブルに置いたままだったジェラルミンケースに手を伸ばす水澤。しかしその勢いだけであっけなく蓋が開き、その虚ろな内部を晒すのみのケース。息を呑む水澤。
消えた腕輪。突如出現した毛布。導き出される答は。階上を見あげる水澤。
「……美月」

タクシー。後部座席で母から奪った腕輪を手に、ただ前方を見据える美月の堅い横顔。前方に見えるのはノザマペストンサービスの車両、及びその後をついていく悠のバイク。

狩り1

「これ、いるのは地下道だね」
ノザマペストンサービスの車両。尾行されているとも知らず、後部座席でタブレットを手に、マップを示す三崎(バイクの悠は音声だけを聞いています)。
「ランクは、A」
「分散して囲い込むぞ」助手席から身を乗り出し、志藤がテキパキと指示を下します。「メイン通路の左を悠、右を一也とマモル。こっちの横道はおれと望。フクは出入り口を押さえろ」
「「「了解」」」三崎、望、悠が口々に応じるなか、無言のマモルがらしくありません。具合が悪そうに、青ざめた顔でうつむきます。
その荒い息づかいを、聞いているかのような福田の後頭部。

やがて車両が停まり、後に続く悠もバイクを停めます。
今回は地下道であるため害虫駆除を装う必要もなく、戦闘服姿で降りる一同。入り口にわたされたチェーンをひょい、と飛び越えていく悠の身のこなしは軽快です。後に続こうとする三崎を、
「三崎」と力強く引き戻すのは福田。その福田が通信機を外すのを見て、自分も通信機を外す三崎。

「……マモルに、注意しておけ」

「……どういうこと」笑おうとして失敗する三崎。いつも寡黙な福田が口を開く時、すなわち重大な事態が起こっている時だと、三崎も承知しているのです。
「わからん。だが、あいつもアマゾンだ」
この控えめな警告に、三崎の顔が歪みます。何か言おうとした時、
「三崎くん? 早く」先に入っていたマモルが戸口から顔を覗かせて急かし、その天真爛漫な笑顔を見て、ようやくいつもの調子を取り戻す三崎。
「あ、おうっ!」自然な笑みで福田に振り返り、「いや。マモちゃんは、実験体と違うしさ」
「ねえ、三崎くん!」
「ほらあ」再び呼ばれて、今度こそ地下道の入口に入っていく三崎。戸口で今一度福田に、「いつも通りいつも通り♡」
「……」それを見送り、大きく息をつく福田。自分の想いが、杞憂に終わればよいと願うように。

地下道。
「早く早く!」はしゃぐマモルに先導され、三崎が階段を降りれば、先に入っていた志藤、望、悠らが既にヘルメットのライトを灯し、銃を手に周囲を警戒しています。
じりじりと進みつつ、打ち合わせ通り三方に分かれる一同。
志藤、望は後方へ進み、悠は三崎らを追い越して、足早に道の先へ去っていきます。ぴちゃぴちゃと、濡れた床を踏む音。
自分たちはこっちだと、進んでいく三崎とマモル。

運転席に戻り、それぞれのヘルメットにつけられたカメラからの映像を、緊張の極みという表情で見つめている福田。<MAMORU>の文字が浮かぶモニターには、先を行く三崎の姿が映っています。孤独なその座席を囲む、窓ガラスの向こうは雨。

脅迫

野座間製薬。執務室に現れた水澤に投げられる声。
「よ、」階段下のデスク。そこに陣取る仁の前へ、つかつかと歩み寄る水澤。
「どういうつもり」
「トラロックだよ。あんたじゃなきゃ実行できないらしいな」起き上がり、デスクの上に起動端末を音高く置く仁。「今日の雨はきっと最高だぜ?」
「やるべきときにやります」窓外を眺めつつ断言する水澤。「帰りなさい」

「たく」失笑する仁。くるりと座席を回し、「そんなに大事かねえ? あの悠が。――第三のアマゾン、だっけ」

「そうよ。他のアマゾンとは決定的に違う……」
くああ、と変な音を立てて溜息をつく仁。
「しょうがないな」左手を上げ、示したのはスマホの画面。黒地に浮かぶ緑の文字。「研究所のアマゾンデータにアクセスしてる。ポチッと一発でネット上に公開できる。おれ元はここの人間だし、これくらいはね」
見下げ果てたという表情の水澤。
椅子にかけたまま、見あげる仁。
「……つまり、脅してるんだけどさあ」
絶句する水澤。
「トラロック、」デスクに高々と上げた足で、起動端末を蹴って水澤に画面を向ける仁。「やろうよ? 本部長さん♡」

邂逅

地下道。濡れた床の上を走る悠。気配に足を止めます。
「虫。――別の虫だ……」
駆除班として追っているのとは別の虫。そう判断したのは、相手の力量がAランクと思えなかったからか、それとも複数いたからか。
身を乗り出し、物陰を覗きこめば、ずぶ濡れでそこにうずくまる中に、見知った顔を発見します。
「きみは」

レストランの客の中で、とくに悠に親切にしてくれた、髪の長い女。
蟹アマゾンに促されて逃げ出しながら、オメガとなって虫を狩る悠に、裏切られた、という目を向けて去った。


ヘルメットのライトに照らされたその顔は、逃亡生活のために黴や苔のようなもので黒く汚れ、髪も服もしとどに濡れ、そして手は、逃げ道を探す過程で傷つけたのか、赤い血に染まっています。
「生きてたんだ」覚えず、喜びの声をもらす悠。
「あたしだけ、なんとか」答える女。
「よかった……」

その時、福田から通信が入ります。
「悠。生きてたのは虫か?」
「いえ。違います」福田の目を警戒し、ヘルメットを外す悠。

***

同じ頃。地下道の天井からぶら下がる蝙蝠を睨みつつ、
「虫、確認」とつぶやく志藤。銃を構えるその背後で、望も戦闘態勢に入っています。「悠、マモル」

***

「今のうちに早く逃げて」通信機も押さえ、アマゾンたちに告げる悠。
「でも」
「早く。あっちの出口なら誰も居ないから」
方向を手で示し、志藤たちの方へ戻りかける悠。数歩走って振り返れば、身を隠していたアマゾンたちはまだ、そこにいて悠のほうを見ています。

(あの人達を殺すのは間違ってる。やはり、ぼくは)

これでいい。これしかできない。そう信じ、背を向ける悠。

***

志藤の召集に応じ走る三崎、後を追うマモル。
「ね三崎くん、三崎くん! ……お腹すいた」
「ええー!?」困ったという表情で振り返る三崎。「もう狩り始まるって!」
「ちょっとだけ」
「もおおお」ため息をつき、立ち止まって荷物からハンバーガーを取り出し手渡します。「不味いとか言ってちゃんと食べないから。ほれ、急ぐよ!」
嬉しげに包み紙を開き、頬張ろうとするマモル。しかし走っていく三崎に焦り、慌てて後を追います。
「もお、待って!」地下道に、ぽいとハンバーガーを投げ捨てて。

***

「てえっ!」
既に戦闘に入っている志藤・望組。志藤が撃てばひらりと舞い降りてくる蝙蝠。すかさず蹴りつける望。志藤は中段から、低く構えた望は下段から、小さな攻撃を繰り返します。
そこへ駆けつけてきた悠。
「おおおおっ! アマゾン!」走りながら、そして飛び上がりながらの変身。「うりゃ!」
緑の炎とともに蝙蝠へ浴びせられるシザースキックがかっこいい。着地してパンチ。狭い場所でくるくると位置を変えながらの格闘が始まります。ジリジリと下がる蝙蝠。
その後方から、ようやく駆けつけてきた三崎の鋭い銃弾がかっこよくてしびれます。マモルも上着を裂き、雄叫びを上げます。
「うあああああああああああっ!」

博打

水澤の執務室。己の優位を信じ、ただ無表情に水澤を睨めつける仁。
直立不動で水澤を見つめる加納。
両者の間で立ち尽くす水澤。
「あなたおかしいわ。自分も消えるかもしれないのに」
『水澤くん』その時、窓の前にかかるスクリーンへ、天条の姿が映しだされます。向き直る加納が恭しい。『トラロックを開始したまえ』
「会長」
『鷹山くんは命を賭けるというのだ。きみも、その大事な研究成果を賭け給え。ただ抱え込むだけでは研究者とは言えまい』向こう向きのまま膝を打つ天条。興奮に声が裏返ります。『わたしハ見たい! 一大実験場と化したこの街で何が起きるのかを』
「……っ、ふははははははははははっ」その台詞に思わず笑い出す仁。「街が実験場かあ。一番おかしいのはあんただなあ」
今やくるりと振り返り、顔をカメラに向けている天条。仁の揶揄など聞いちゃいません。
『水澤くん?』
「……」息を呑む水澤。その背を見つめる仁。正面からは、舌なめずりしながら見据えてくる化物のような老人。今や観念したように目を閉じ、あらゆる感情を呑み下すしかない――水澤。低く、ごろごろと鳴る空。「わかりました。加納、手配を」
無言で会釈し、出て行く加納。
「ふふはははは」愉快そうに笑う天条。目をそらす仁。雨脚はいよいよ激しく。

スイッチ

土砂降りの雨。その中を、腕輪を抱え走る美月。
確かにノザマペストンサービスの車を追ってきたはずなのに。

(どこいっちゃったんだろ、悠)

地下道に降りたとは知らず、右往左往します。走り去る、その背後で徐々に外れていく格子蓋。
「悠ーっ!」気づかず叫ぶ美月の背後で、地下道から這い上がってくる逃亡アマゾンたち。はじめに眼鏡の男が、続いてレストランにいた女が。「悠!?」
さらに続いて2人出てきます。
「どこ行く?」メガネの男が問い、
「どこか」と荒い息をつく、髪の長い女。「どこかに……ああっ」
しかし体の異変に崩れ落ちる女。
「大丈夫?」と仲間が支えようとするのを拒み、
「ごめんなさい、行って!」と叫びます。「もう……戻れない」
「――!」後ずさる他の3人。荒い息をつくあまり、咳き込む女の、腕輪の光も濡れた服地の下で、いつしか赤くなっています。
「ごめんね」覚醒した者は、もはや致し方ない。仲間を代表して、眼鏡の男が長い髪の女に会釈します。ついで他の仲間に向け、「行こ」
「ああああああああああっ」別れの言葉ももはや耳に入らないのか、雨に吠える女。美しい顔が溶け落ち、その全身から噴き出る熱量に、周囲の雨が蒸気と化します。

「?」物音に振り返る美月。その目の前で、髪の長い女の顔が溶け、異形となって立ち上がります。「……あっ」
またあの化物が。恐怖に身をすくめる美月。
「うあああああああ!」

***

バス停。列に並んでいた男性が突如崩れ落ち、絶叫とともに。
路上。運転中の男性が、異変にコントロールを失い。
「おおおおおおっ」走行中のバイクから、跳び上がり、歩行者に飛びつくアマゾン。

パニック

地下道。全員で蝙蝠アマゾンに襲いかかる駆除班一同。Aクラスらしく体のキレもよく、また周囲の備品や地形も利用しながら戦う蝙蝠。そこへ通信が入ります。
『調査班です。新たな識別コードを確認。現在のポイントを中心に点在しています。すべてランクEですが、同タイムの集団覚醒です。』

***

街のそこここで、覚醒し人々に襲いかかるアマゾンたち。ここでTlalocを行ったとしてももはや極秘裏対応できません。

***

『……確認出来るだけで、146』
「まじかよ」
地下道。顔をしかめる望。そこにまた通信が入ります。蝙蝠に銃口を向けつつ叫ぶ志藤。
「駆除班、志藤!」

***

「水澤です」執務室から電話してきている水澤。「たった今、Tlalocを実行しました」

***

「は?」社会人としては無礼な相槌を、思わず返してしまう志藤。
「いきなりかよ!」三崎も唐突な成り行きに叫びます。
『事情を話している暇はありません。悠とMに避難を』
「!」しかし獰猛に蝙蝠に襲いかかるオメガ、そして土竜。
「悠、マモル! もう虫は放っといていい! 撤収だ! 悠!」叫ぶ志藤の声も甲斐なく、戦いをやめる気配はありません。「マモル!」
「おおおおおおおおっ!」一撃で蝙蝠の頭部を破壊したオメガ。ようやくTlaloc実行、という言葉が腑に落ちたのか、先ほど逃がしたアマゾンたちを思い出し、地下道を駆け去っていきます。
「悠、どこ行くんだ、おい! 望追うぞ!」望とともに駈け出しつつ三崎に指示を出す志藤。「一也、お前はフクのとこ戻って、マモルを街から連れ出せ!」
「りょかい! マモちゃん! 行くよ、早く!」

そして、消耗しうずくまったままの土竜の腕を引き、走り出す三崎。
「行くよ、マモちゃん! 早く、早く」
遅れがちの土竜に振り向き振り向き、励ましながら走る三崎。その三崎に強引に引きずられながら、何度も、何度も――思い出している土竜。

レストランでの戦闘で、落ちていた手つかずのハンバーグを食べた、あの味を。人の肉の。

「……三崎くん」
「え?」しかし振り返らず、土竜の手を引いたまま走る三崎。
「みさきくん……みさキくん」
「どしたマモちゃん」
次の瞬間、三崎の身体に跳びつく土竜。相手を狭い地下道の壁に押し付け、その腕を――。
獣の声。
「うわ、マモちゃん、ああっ!」そして、混乱の叫びはやがて悲鳴に。

地獄

土砂降りの雨。
水澤を脅すという用が済み、野座間製薬の正面玄関から、ゆらりと姿を表したのは仁。爆音に顔を上げ、無数に飛び立っていくドローンを見送ります。白い歯を見せ、ゆっくりと立ち去ろうとした時。
苦しげによろめき出てきた2体のアマゾン。
「あーあ……お前ら作るのたいへんだったんだよな」つぶやく仁。「だからさ。可愛いんだよ、ほんとだぞ♡ けどな、おれたちには、お前らに喰われる覚悟がまだできてなかった。どこにも置いておけないんだよ。悪いな。その代わり……おれが責任持って上空ヘ案内してやる」
向き直り、ベルトを付ける仁。アルファ。
刹那、世界の音が止み、仁のつぶやきだけが聞こえます。
「アマゾン」

***

雑居ビル。部屋のドアに鍵をかけ、屋上へ上がる七羽。
土砂降りの雨に打たれる、鶏小屋を見つめます。上空を行き過ぎていく無数のドローン。それを見送り、降りていくその姿は、旅支度のように見えます。

***

「ああ、……いや……」
路上。腰を抜かしたような美月に、一歩一歩近づいてくる蜂女。
「うああああああ!」
その時マンホールから飛び出て、そのまま蜂に襲いかかるオメガ。
「悠!」
「美月。どうして」
「悠。これ!」金の腕輪を差し出す美月。これこそがかれの命を救うものだと知って、ここまで追ってきたのです。
息を呑むオメガ。しかし、応じる前に蜂が立ち上がります。
「お腹が、すいたの……この子を、食べさせて」
再び襲いかかろうとするのを、抱きとめるオメガ。
「いや!」逃げ場もなく、ひたすら身を低くして顔を背ける美月。
「助けて、お願い! ……たすけて」そちらへ手を伸ばす蜂。
「ごめん、そうなったらもう、ぼくは助けられない」抱きとめ、言い聞かせるオメガ。「美月は、絶対にあげられない!」
「悠!」
「勝手で済まないけど、ぼくはこれでいい! ぼくは、ぼくの声に従う!」
弱々しい蜂は、オメガの手を振りほどいてもそれ以上、はかばかしい攻撃はできません。
「うううりゃ! えやああああっ! やっ! おおおおおおっ!」その状態を猛然と殴りつけるオメガ。
美月の前で展開されるその戦いは、純然たる暴力。
息を呑む美月。

そこへ、他のアマゾンたちを撃ち崩しながら駆け寄ってくる志藤、望。この絵はなにかかっこよかった。

「悠もういいから撤収しろ!」
「トラロックが来るぞ!」
志藤、望の言うとおり、かれらの頭上にもドローンが飛来しています。街のそこかしこに投下される薬剤。
そして、ここへ来た理由を思い出し、改めて腕輪を手にする美月。
「悠……、悠!」
「おおおおおおおっ!」しかしその声に応える余裕もなく、蜂の蹴りを躱しなおも殴りつけるオメガ。

***

薬剤の散布に伴い、白いガスの雲が少しずつ、暗い街を取り巻いていきます。救急車のサイレン。耳につくドローンのモーター音。
「ああっ!」階段を転がり落ちてくるアマゾン。建物からよろけ出てくるアマゾン。
身悶え、惨たらしく溶けていくアマゾンたち。
覚醒し人々に襲いかかっていた者は当然のことながら、まだ平然と人に混じり暮らしていた者達までも。
道路に面する喫茶店の、表で人を襲っていたアマゾンが全身から煙を吹き出して倒れ、襲われていた人間が呆然と見返している、その背後では店内のカウンターで、ガシャリとグラスを倒し崩れ落ちる男。その皮膚は醜く溶け落ち、断末魔があがり。

地獄2

「三崎! ……三崎、おい三崎!」
ノザマペストンサービス車両の運転席。マモル視点のモニターを眺め、絶叫する福田。
決意の表情で車を降ります。

地下道。
「マモちゃん、どした……っ」傷を負いつつ、なお土竜をなだめようと試みる三崎。その身体を抱え込み、道の奥へ押し倒していく土竜。「あああっ!」

***

「おおっ」
野座間製薬前庭。群がるアマゾンたちを次々と倒し、いなして行くアルファ。「へっ」
回し蹴りしてくる、その足を蹴り飛ばし、殴りつければ回転しながら吹き飛んでいきます。
「ふっはっはっはあ! ほうら! おら! はあっ!」愉快そうに重い一撃を、蹴りを、わらわらと蝟集する虫たちに、見舞い続けるアルファ。「へっへっへ! おい、行くぞぉっ!」
その頭上にも白く垂れ込めてくるガスの雲。

***

地下道。
「……っ、ああ……」声にならぬ声をあげ、あえぎ呻く三崎。傷の痛みに身を捩る様が痛々しい。
その真正面にしゃがみこんでいる土竜は、喜々として三崎からもぎ取った肉塊の一部を抱きかかえています。興奮に荒い息をつきながら。
「三崎っ!」駆け寄ってきた福田。左腕を失った三崎が、そこに転がっています。そして、土竜はその三崎の腕を抱え込み、
「三崎くん、ちょっとだけ……、ちょっとだけね……」と声を上ずらせながら、陶酔した様子噛みつき、咀嚼しているのです。
「ううっ……」痛みに唇を噛み、失神寸前で耐えている三崎。
「……マモル。マモル、だめだ。喰うな」止めようとして突き飛ばされる福田。一度口にしたら戻れない。その知識があったのかどうか。そうでなくとも、この地獄絵図を見たくなければ止めるしかありません。「マモル!」
再度跳びかかったところを蹴られ、うずくまる三崎の傍らに倒れこむ福田。身を起こす、その顔が泣き顔になっています。
銃口を上げてマモルに向け、しかし銃爪を引く前に、顔を背ける福田(´;ω;`)
その手に、渾身の力で飛びつき止める三崎(´;ω;`)
気づかずばうばうと喰らっている土竜。
「マモルは! ああ……っ」
正視できず、それでも土竜の腕輪の光を確認する福田。暗闇に光る、色は青。
福田に泣き縋り、ひっひっと震える三崎。その血まみれの胸に、揺れる五円玉――。
「マモちゃ……、マモちゃん……」
三崎の腕を貪り喰っていた土竜が、ふとそれに目を留めます。たちまち我に返り、自分は一体何をしていたのかと顔を上げる土竜。
「三崎、くん……」
「まもちゃ、」
変身を解いたマモルは、己の両手が血に染まっているのを、まじまじと見つめます。そして、三崎の血によって裸の胸に貼りついている、自分の五円玉を。赤い血。どこもかしこも。
「ぼくはっ、」次の瞬間、絶叫し、頭をかきむしるマモル。「ああああああああ! ああああああああっ! ああああああああ!」
立ち上がり狂乱したように、半裸のまま地下道の奥へ駆け出していきます。
「マモル!」呼び止めてももはや間に合いません。「三崎、おい!」
しかし助け起こそうとした三崎も既に気を失っていました。叫ぶ福田。
「志藤さん!」

別れ

雨の中。暴れていたアマゾンを1体打ち倒した望が、福田の報告に耳を疑います。
「嘘だろ。マモルが!?」
「でマモルは今どこだ!」同じく、別のアマゾンを狙いながら志藤。
「3番出口に向いました!」信じられないというように首を振り振り、気絶した三崎の止血を行っている福田。

「うぉりゃ!」蜂を蹴り倒すオメガにも通信は届いています。「……マモルくん」
見上げればその頭上に、とうとう静止する2機のドローン。
「悠逃げろ!」望が叫び、
「逃げて、悠」と美月も身を起こします。
「……」瞬時、呆然となるオメガ。その隙をつき、逃げ出そうとする蜂。すかさず追い、背後からつかみ止めて、背中から胸へ、鋭い爪で貫けば、穿たれた穴から体液を吹き出し、倒れる蜂。
戦いの興奮に震えながら、それを見下ろすオメガ。

「悠」
ついにドローンの投下口が開き、白い薬剤がオメガの頭上にも降り注ぎます。
「お願い逃げて。これ」這いより、再度腕輪を差し出す美月。変身を解いた悠が振り返ります。
「美月。ぼくがアマゾンでも、変わらないでいてくれて、ありがとね」雨に顔を打たせながら微笑みます。笑顔で、それでも頑なにその助けを拒む悠に、泣き崩れる美月。白く垂れ込めるガスの雲を見上げ、
「マモルくんはぼくが」と意を決し、駆け出していく悠。
「悠待って……悠」ようやく起き上がり、後を追いかける美月。志藤、望は急に発生したアマゾンたちの相手で動けません。必死で走り、しかしすべてはスローモーション。追いつけそうにないまま、遠ざかっていく背中に、「待って……待って!」

街の各所を、白い霧のようなガスが覆い尽くしています。
それを自室のモニターで見つめている水澤。

***

「……でえっ! おりゃあっ! でぃやああっ、はァッ!」野座間製薬の前庭。同じ雨の中、濡れて重い身体のまま、ぬかるみに足をとられ、もう何体目かわからぬアマゾンを相手に戦い続けるアルファ。痛みも疲れも感じず、その陶酔に、自ずと笑いがこぼれ出ます。狂騒状態。これまで冷静に戦っていたアルファが、とうとう本能にもたらされる快楽に酔い痴れ。「来い、来い! いーやっははあ! ひゃーはっはっは!」

***

ビルとビルの隙間。通りから見えない物陰に、蹲り身を隠しているマモル。
「ああ……っ、うっ……」
胸に揺れる五円玉。三崎の血を洗い流し、その髪を濡らして頬をつたい、顎から落ちていく冷たい雨。少女のようにただすすり泣く繊細なその面差しを、伏せてうなだれた頭上にも、ドローンが飛びかっています。

いよいよ最終回、生き残るのは誰なのか。ああ辛いです。
覚醒し人を襲う虫は狩る。まだ人を襲っておらず(間接的には襲っていたとわたしは思いますが)、ひっそり生きていこうとするアマゾンは逃がす。自分の中での線引もでき、しかし志藤の立場も理解して、二重の活動を行う悠。ただ、その線引だと、三崎を襲ったマモルは狩る、ということになるのではないかとどきどきします。
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2016.06.17 11:29 | amazonz ΑΩ | トラックバック(-) | コメント(-) |
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