LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

ミステリードラマを多数放映しているテレ朝が、アガサ・クリスティ往年の名作に挑むということで、推理ファンとしては見逃せない内容でしたね!



録画を一気見しましたが、原作に非常に忠実で、やや古めかしい雰囲気がミステリードラマの常連となる俳優陣の重厚な演技と、非常に合っていました。登場人物たちが「医者」「議員」「判事」などそれぞれの職業で類型化されるそのままの性格と行動パターンを持っており、それは原作の短さからすると必然とも言える工夫なのですが、そこにあまり変な、現代的解釈を加えてないのも好ましかった。
その分の現代劇らしい内容は、大きくは
・事後の警察捜査と推理に尺がとられ、それを通じて犯人の狂気が描かれること
 原作は主にヒロイン視点、その後の種明かしは犯人の手記で簡素に行われる
・招待客から携帯を取り上げるという配慮で密室の完成度を高めていること
 その代わり新聞配達のドローンという中途半端な外部との連絡手段がある
くらい。10人のインディアンが兵隊さんになったのはローカライズというやつで改変とまで行きません。
また、途中で共犯者の存在が示されますがこれは原作の欠点をカバーするための設定でしょう。あとはほぼほぼ原作通りの内容です。

舞台は絶海の孤島に建つ、オープン前のホテル。このロケ地が趣があって素敵です。
作家や女優、元オリンピック選手と、広く世に名を成した8人の招待客。それをもてなすのはホテル執事夫妻。
かれらによる和やかなディナーが始まった時、招待主であるホテルオーナーからのメッセージがダイニングルームに流れ、ドラマが動き出します。

「予は諸君を告発する――」

1人、また1人と起こる見立て殺人。その進捗に合わせ1人死ぬごとに1体ずつ、消えていく兵隊人形。
外部に犯人が潜んでいるのか、それともこの10人の誰かが犯人なのか。疑心暗鬼に陥っていく人々。
わたしは原作を読んでいるので最初から犯人がわかっている状態で見ていたわけですが、序盤から実にさりげなくさりげなく事態を誘導していて、脚本もいいのでしょうが演者もうまい、としか言いようがありません。ラストの告白では一転、犯人ならではの狂った論理と、その狂気に気づかぬまま己に酔ってしまった犯人の悲しさ、凄まじさが余すところなく演じられていて、観ていて総毛立つ思いがしました。ただただ感嘆の一言です。ディスクになるのならぜひ買いたい。

また、「unknown」を「名無しの権兵衛」に置き換えるとは、と脚本家の工夫に感心しつつ、それを得々と説明する「作家」の弁舌の爽やかさにも魅せられました。
本作にはミステリードラマ常連の錚々たる、そして重厚な出演陣(清楚なヒロインである仲間由紀恵さんですら実は、と思わせる暗い表情を見せたりする)が集結しており、その中にただ1人、軽い雰囲気の向井理さんが混ざっているのですが、これが浮いているようで意外と、アガサ・クリスティがしばしば描く快活で魅力的な若い男(犯人だったりヒロインの恋人だったり役割は固定されていませんがこういう男性がよく出てくる)そのまま。とても良かったです。
向井さんの犯人もの、もしくは名探偵もの、もうあるのかもしれませんがぜひまた観たい。

余談ながら
「蜂にさされたアナフィラキシーに見立てて人が死ぬ」内容なのにスポンサーに山田養蜂場がついていたり、
「医師が死体を嗅いでアーモンド臭(青酸毒の特徴)に気づく」合間にアーモンドチョコのCMが入ったり、まるで狙ったかのような取り合わせなのですが、こういうのも現代の、そしてテレビだからこその楽しみなんだろうなあ。
なおこのドラマは、先日逝去された俳優、渡瀬恒彦さんの最後の出演作でもありました。
その素晴らしい演技には、本作の犯人の言葉を借り、「多大の賛辞と感謝」を送るのみです。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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2017.03.27 19:48 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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