LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

絶対正義を貫くヒロインはアマゾネスのプリンセス。
彼女が己の運命に目覚めた瞬間を回顧する、という<ワンダーウーマン>誕生秘話的なお話。
時間の関係で吹き替え版になってしまい(声フェチなのでオリジナルボイスが聞きたい)、また正直途中まではヒロインのあまりの正しさ・無垢さにちょっと退屈だなあと思っていたのですが、途中からそれもあまり気にならなくなりました。
物語における戦争の描かれ方が気に入ったからです。



ブルース・ウェインとはバットマンのこと。この映画にもプロローグとエピローグで、名前だけ出てきます。
ジャスティスリーグにワンダーウーマンをスカウトした立場なので映画の評判も気になるのでしょうか?
以下は例によってネタバレ気にしてません。
女の園で育った、聡く強く美しい無垢なる王女

「人を扇動することでこの世に戦乱をもたらした邪悪なる戦いの神・アレス」を止め、世界を救うことを使命とするアマゾネス。
創造主・ゼウスよりゴッドキラー(もう少し厨二っぽい名前にしてほしかった)なる武器を授かり、時至るまで霧に隠された孤島で雌伏する彼女たちは、ある時外の世界からの干渉を受け、否応なしに戦いに巻き込まれてしまいます。
それは人類が初めて経験する未曾有の規模の大戦。
王女ダイアナは今こそアレスを倒すべき時と立ち上がり――。

という感じでお話が始まるのですが、きらびやかな色彩で描かれるパラダイス島の美しいこと、そこを駆け抜ける幼子ダイアナの愛らしいこと!
続いて女王の妹、すなわちヒロインの叔母であるアンティオペ将軍の二の腕が素晴らしく、成長したヒロイン・ダイアナの筋肉質なボディが力強く、女戦士たちの教練シーンや、乱入してきたドイツ軍兵士と戦うシーンも華やかで、この時点でなかなか眼福な映画だなあと思いました。
女性によるアクションは、キレ、という意味では今ひとつわたしの好みではないわけですが(もっとソフィーティアみたいに動いてほしい)、代わりにワイヤーアクションをふんだんに用いており、美女が次々と宙を舞う様の美しさ、彼女たちが空に描く曲線を、流れる長い髪を、スローモーションが効果的に引き立ててほうと感嘆してしまいます。きりもみは正義!

尤も、あれは悪者だ! と言われて躊躇なくドイツ兵士を殺すヒロインとか新しいなとも思うわけですが。
それも現代における絶対悪の象徴=ナチスがまだ登場してない、第一次世界大戦時のドイツなんですが。

戦争を通じて知る人間の卑小さと、内在する希望の大きさ

そんなこんなで既に持てる力の片鱗を見せ始めていたダイアナは、生まれて初めて出会った男性、スティーブに
「戦闘の最も激しい地へ連れて行ってほしい」と交渉します。そこにアレスがいるからと。
スティーブは元々、ドイツに潜入していたスパイ。開発中のガス兵器に関する研究メモを盗み出し、イギリスへ届けようとしていました。ということでふたりはまずロンドンへ。

女の園で育ち、男を初めて見たプリンセス、という宣伝からだいたい予測がつくようなドタバタが続き、少し退屈だなと思ったのはこの辺り。相手の処女性を慮ったつもりのスティーブに対し、
「肉の喜び? 当然知っている。男性は生殖には必要だが快楽には必要ないな」と応えるダイアナ、とか、暴漢に襲われた際ダイアナの戦闘力を知って、
「後ろに下がっ……らなくていい!」と掌返すスティーブというのはおかしかったけど。ただその手のドタバタは短めに抑え、すぐにドイツへ向かうスティーブの仲間集めが始まったのはよかった。
肌の色のため舞台には立てず、優れた演技力をイギリスでは詐欺に使うしかない俳優。
かつて凄腕のスナイパーであった男。
生まれ育った土地を追われ、守るべきものもなく、今は軍について回るような暮らしを続けている根無し草の商人。
まるで「オズの魔法使い」のチームみたいです。
かれらとともに、ドイツのガス兵器開発阻止のため、一直線に進もうとするスティーブと、ただ正義を行いこの世から戦争というものを一掃するために当地を訪れたダイアナとの齟齬。
戦闘への協力と勝利(ここでも鬼神の如きダイアナにがんがん殺されるドイツ兵士)がもたらした興奮、一夜の恋。そして起こる悲劇。

ドイツとかナチスとか日本とかは映画などではとにかく問答無用の悪として叩いていい存在に描かれやすく、このあたりまで「ワンダーウーマン」もそういう映画なのかなあと思っていました。もちろん叩かれる方は叩かれるだけの罪を犯したわけですが、叩いている方にも悪はないわけじゃない。なのに叩く方は
「あいつらが悪い!」の一辺倒でひとかけらの自省もなく、叩かれる方もその話題を忌避するために
「申し訳なかった。再び罪を犯さないために過去を葬る!」みたいな姿勢が、具体的な反省からは却って遠ざかっているようで、もうちょっと是々非々でいかないかなと、そういうパターンには飽き飽きしていた次第です。

しかし、暫時スティーブに従ったために、己の正義が行われなかったことで、
「やっとわかった。アレスに操られているのはドイツだけじゃない。あなたたちイギリスも」と怒りを滾らせるダイアナ。
それに対し、悪は誰の心にもあることを認め、アレスを倒したからといって即戦争が終わることもない、この戦争は関わる人間みなに責任があり、しかし人間には希望もあるのだと、必死にかきくどくスティーブ。

この映画で、ダイアナは絶対正義、絶対善の象徴。

これに対しスティーブは、現実です。完全に善なるものは人の世になく、悪を一撃に砕く力も人にはなく、それでも少しずつよくするために、できることを実行するしかないとあがく、1人の人間。

衝撃と混乱の中、ついにまみえた敵、アレスによってもたらされた真実。そして、ようやくスティーブを理解し、人間への愛おしさを感じるダイアナ。この一連の描かれ方は割りとよかった。

この映画は正直、過去宣伝方法で色々揉めていたせいで観たい気持ちには全然なっていませんでした。そもそも今夜は「ベイビー・ドライバー」を観たかった。
ただ、騒ぎになったほどフェミニズムな記号は感じられませんでした。
若く未熟なダイアナを成長させるスティーブの役どころもいっそ女性にさせて、恋人でなくダイアナのバディっぽい存在にしたっていいくらい。この時代女性スパイ、女性パイロットがいなかったわけではないし、そのほうが清く正しいダイアナには似合う気もします――けど、それだと初代プリキュアのほうがわたしはいいかも。
恋愛描写がロマンチックだからまあいいか(アイスクリームで「ローマの休日」を連想しました)。

=小ネタ=
・最初からみんなアマゾンアマゾン言うので狩り開始になる特撮脳
・スティーブがマル博士を誘惑するシーン、途中その場に盛装して現れたダイアナに一瞬目が泳ぎ、それに気づいたマル博士が
「あなたが注目する対象はわたしの他にあるようだ」と苦く笑うシーンが何かぐっと来ました。元美女が怪我を負い醜くなっているという設定いい。
・ダイアナの母、女王ヒッポリタ(ブロンドがゴージャス)がゴッドキラーについてダイアナにちゃんと説明しない理由はよくわからない。
・あとダイアナが、いざという時いちいち
「わたしはテミスチラ(セミッシラには聞こえない)の王女ダイアナ」と名乗るのは武士の「やあやあ我こそは」みたいで可愛い。
・投げ縄で引き寄せて蹴りつけるという鬼畜技好き。あとわざわざ銃弾をガントレットで防がなくてもダイアナなら大丈夫な気がする。
同日追記。監督は「女性監督が撮った女性映画」扱いされないよう、フェミニズムや人種差別の扱いはユーモアに留める程度に抑えたとのこと。確かに程の良さは感じます。
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2017.08.25 23:41 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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