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LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

引き続き長尺一気見第二弾。
原作者はミステリというより、警察という特殊な組織を舞台とした、重厚な人間ドラマを得意とする横山秀夫。
なので要は佐藤浩市が中間管理職を務める企業もの、のつもりで観ればよいのだなと。そしてわたしは佐藤浩市が中間管理職を務める企業もの、大好きなので大満足でした!
誰の心にも家族への愛情や己の奉じる職への理想、誠意がある。
同様に、誰にも我が身可愛さの保身や、組織がらみの圧力に取り込まれてしまう弱さがある。
そんななか、人は結局おのれの思うようにしか生きられないのだなあと、思わざるを得ない内容でした。

タイトルの「64」とは、昭和64年1月に群馬県で起こった、雨宮翔子ちゃん誘拐殺人事件を指す、県警内での符丁。犯人の手がかりも得られず、少女を生きて取り返すこともなく、みすみす身代金を奪われたままに終わったその事件は、翔子の父親はもちろん、捜査官ら関係者の心にも暗い影を落とすこととなりました。
そして時効を1年後に控えた平成14年。警察庁長官の激励来訪を控え、まるであの日を繰り返すかのような、誘拐事件が――。
力のこもった前編

映画「ソロモンの偽証」は前編が事件編、後編が裁判編とはっきりわかれていて感想もまとめやすかったのですが、この「64」は途中でぶったぎりという感じ。
前編だけ見ると肝心の雨宮翔子誘拐殺人事件の描写は短く、事件後それまでとは人生の変わってしまった人々の描写、なかでも今は捜査から外れ、県警警務部という間接部門に配属された三上(佐藤浩市)の、慣れない広報職での悪戦苦闘がメインとなってしまっていてバランスを欠きます。
いやいやそのあたりの描写は面白かったですけどね。リアルだなと思いますし、マスコミはとかく自分たちのことを、
「お行儀良くはないが誠実にぶつかってくれればこちらも誠意を以て応じる、人情派」と描きがちで、そういうところも含めてリアルでしたし(横山秀夫の前職は新聞記者)。
あるときはマスコミをなだめる材料として捜査本部へ情報を取りに行き、あるときは上からの指示で無理難題を通すため、被害者遺族を訪問する三上。それは広報官としてごくありふれた業務だったはずなのですが、なぜか三上に頑なな態度をとる古巣の面々。既に退職した同僚を、14年間見張り続けている者までいて異様です。県警に、自分の知らない何かがある。捨て置けず首を突っ込むうちにある隠蔽工作が浮かび上がり、それとともに

・事件直後退職、その後14年間、引きこもりを続けている元・科捜研の青年、日吉
・同じく事件直後退職し、スーパー駐車場の警備員として、経済的には
 苦しい生活を続ける元・自宅班の刑事、幸田
・14年前から松飾りもとらず、死んでしまった少女の雨傘や遊具もそのままに、
 時が止まったかのような生活をしている被害者の父、雨宮

といった、事件以来まだ、あの「昭和64年に閉じ込められたまま」の人々の存在に直面させられます。天皇崩御のため、たった7日間で終わったあの年に。
三上は三上で、業務の傍らわかりあえないまま家出してしまった娘のあゆみを探し、身元不明の死体が出たと言われれば妻とともに確認に出向く失意の日々を送っており、そのためか娘というかけがえのない存在を失った雨宮への、同情という言葉を超えた共振を経験するのです。

ミステリと思って観るなら、この前編がなくとも、後編だけでじゅうぶん通用します。しかし、失敗に終わろうとしている事件の影に、苦しめられる人々の話であるとか、中央対地方、刑事部対警務部といった組織間の対立・軋轢の話であるというふうに観るとたいへん重厚で、力のこもった内容です(中央対地方の図式は実はマスコミ内にもあったことが後編で描かれています)。
おまけに、名優をここぞとばかりに集めたキャスティングでどっちを見ても名演技ばかり。これは観てよかったなあというものでした。

過去の亡霊、そして真相

県警の捜査部門を中央直轄にしようと考える上層部と、反発する現場。険悪な雰囲気のまま突如起こった、新たな少女誘拐殺人事件。
後半ではこの新しい事件に挑む群馬県警が描かれます。
しかし、三上を上層部の犬とみなす捜査一課は、マスコミ発表に必要な情報を何一つ与えようとしません。せっかく広報官として、記者たちとの間に一応の信頼関係が築かれたというのに、このままでは元の木阿弥です。
「おれがなんとか情報を取ってくる」と記者会見場を飛び出す三上。かつての上司・松岡一課長を待ち伏せ、果ては捜査指揮車にまで乗り込んでいきますが、その行動は完全に広報官の領域を超えていて、松岡には
「刑事の目に戻っているぞ」とまで言われます。なおかつ、今回の被害者の父親、目崎にも感情移入しまくり。
そのようにして張り付いているうちに、犯人の身代金受け渡しに関する指示が、14年前の事件をなぞっていることに気づかされ――。

事件の真相は早い段階で明らかになり、思わず
「あと50分もあるのに」と残り時間を心配してしまいました。

がこの残り時間は、広報官・三上がこの事件にどう関わり、どうけりをつけていくかを描くための時間。真相は公表され、職を辞した三上は、自らの足で家出した娘を探すことを決意して終わります。
ミステリ的には蛇足に近いのですが、三上が出奔するたびに手堅く記者たちを抑えてきた係長の諏訪や、県警記者クラブで幹事を務める東洋新聞・秋川ら若手の成長も描かれています。
また、少女たちが手にする正月の餅玉のようなもの(とんど焼きで焼いて食べる)――色とりどりのメーダマや、表面の数字が擦り切れてしまったボタン式公衆電話と無言電話、妻が毎日磨き上げている三上の靴など、小道具がかなり魅力的で、映像として面白かった。とんど焼きの炎が美しいエンディングでした。

なお、わたしとしては、一向に記者会見に応じようとしない刑事部長及び一課長の代役として、三上らに担ぎ出された二課長のがんばりが地味によかった。情報は手元に来ない、記者たちの舌鋒は三上が
「リンチはやめろ」と遮るほどに鋭く、キャリアである二課長もはじめは昏倒したり走って逃げ出したりしていたのですが、三上が外出している間、回を追ううちついに開き直って
「ただいま情報を集めているところです! お待ち下さい!」と記者たちに怒鳴りつけるまでになります。この状況で失言もしないなんてかなり腹が据わっています。
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2017.11.05 17:36 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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