FC2ブログ

LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

朝一番に出かけてシネコンの最初の回で「ゴッホ」。
その後買い物をして別の名画座で「KUBO」。
どちらも前評判としては映像表現のすごさだけを聞いていて、ストーリーについては真っ白な状態で行ってきました。いやこれはもう特撮と言ってもいいんじゃないのかな。どちらも製作にかかったであろう手間を思うだけで気が遠くなります。気が遠くなりますが、どちらも重苦しい仕上がりではなく、ただひたすら美しい映像でした。眼福としかいいようがありません。

以下感想文は折りたたみ以降。例によってネタバレは気にしていません。

あ、その間に食べたポルチーニのハンバーガーは美味しかったなあ。
IMG_0289.jpg
ゴッホ――愛がいっぱいのミステリ掌編

一度俳優が演技したものを撮影し、それを100人以上の画家がゴッホタッチの油絵にした油絵アニメーション。一部の回想シーンを除き、「星月夜」が、「夜のカフェ」が動くんです! もうこれだけですごい。
とくに大好きな「星月夜」の、星がまたたくラストには感動しました。
パンフレットには油絵制作に参加した日本人画家のインタビューが載っていましたが、ゴッホタッチの再現もさることながらアニメならではの、<少しずつ変えた同じ絵を何枚も描く驚き>が語られていました。
登場する人物も、ゴッホに肖像を描かれたことのある人ばかり。ゴッホ役の俳優は
「きみ、顔、ゴッホに似てるよね」とのオファーがあったそうです。
これが愛でなくてなんなのか。

ゴッホの死から2年が経った、フランス、アルル――。
ゴッホは手紙好きでも知られますが、そのために生前面識のあった郵便配達人のジョゼフ・ローランは、画家が死の直前に書き、投函されないままであった手紙を、たまたま手にすることになります。
宛名はゴッホの生涯を支え続けた弟、テオ。
託されたのはジョセフ自身の息子、アルマン・ローラン。
「大切な人が最後に書いた手紙、自分に宛てて書いた手紙だ。わたしなら読みたいと思うだろう。ぜひテオに届けてやってくれ」という父の望みを果たすため、アルマンは受取人探しの旅に出ます。パリへ、そしてオーヴェールへ。
ほんの数日の、ささやかな旅。しかしながら、観客はアルマンとともに、出会った人々がそれぞれに語るゴッホ像に(そして互いの証言の矛盾に)、その死の謎に、否応なしに引き込まれていきます。

映画で語られる謎は、おそらく美術愛好家の間では周知のことなのでしょう。わたしには、銃弾の進入角度の不自然さや自殺に用いた拳銃の出所、またその時、ゴッホが持っていたであろう画材などが最後まで発見されなかったという話などどれも初耳で、不謹慎ながらなんとミステリにぴったりな素材と思ってしまいました。知っていた人ならああこの話か、と思うかも。
もちろん謎解きが主眼というわけではなく、ゴッホにつきまとう狂気のイメージを、その晩年から拭い去らんという優しさに満ち満ちている映画なのですが、その結論に至るまでの描写がなかなかスリリング。あっという間に終わってしまったと感じました。
探偵役であるアルマンの、若く生硬な正義感と、そしてモラトリアムの旅を終えたかれを迎える、ジョゼフの父親らしい言葉が、とても爽やかな印象を残します。

クレジットも画集のようで凝っていました。べつにおまけ映像はありませんけど、誰もエンディング途中で席を立つ人はいなかったと思います。パンフレットも絵画展のパンフみたい(↓)。ボート管理人はイケメン。

IMG_0290.jpg

KUBO――けなげな小さい男の子の物語

こちらはライカ渾身のストップモーションアニメ。ストップモーションアニメでは、製作上どうしても起こるがたつきも味のうちとわたしは思っているのですが、本作にそんなものは一片もありません。予告映像を先に観て、後でストップモーションと聞かされたわけですが、なかなか信じがたかった。
その細密な作業は、パンフレットにも一端が紹介されていますし、エンディングでもちらりとメイキングが挿入されたりしますが、これもやっぱり、すごいの一言。たぶん愛です。

クボ、というのは主人公の少年の名。観に行くまでずっと名字だと思っていましたが違いました。ファーストネーム。
村の賑やかな辻で三味線弾きつつ様々な英雄譚を物語って日銭を稼き(たぶん)、夕暮れ以降は母親の面倒をみながら暮らしているけなげな男の子。しかしそのつましくも平穏な日常は、
「日が暮れたら外出してはいけない」という、母の言いつけを守ることであやうく保たれていたのです。

クボには母譲りの魔力があり、それを縱橫に活かした辻での語りのシーンは実に魅力的です。折り紙のアイディアが効いています。クボの語りに心を奪われた観客も、それを見るクボも、活き活きとした笑顔です。
しかし、帰宅後、母に
「もっと父上の話を聞かせて!」と甘えるシーンでは、その母親が愛情たっぷり、そしてサービス精神たっぷりに語ってくれているにも関わらず、笑い興じるクボの笑顔は不安に濁り、決して幸福そうではありません。母親はかつてクボの父である夫を失い、自らもひどい傷を負って、心までも病んでしまっていたからです。
古い電球が時により、灯ったり消えたりするように、母の精神の光も弱まったり輝いたり、安定しません。時には父の存在すら忘れ去っていることもあり、ためにクボは、父の冒険を最後まで聞かせてもらえたことがありません。
このまま父の物語は忘却の彼方に消えてしまうのかもと怯えるクボ。
否、今まで聞かされ、自らも村で英雄譚として語ってきた話も、母の妄想の産物で、事実ではなかったのかも……。

父の記憶もろとも、いつか近い将来、この母をも失いかねない。子供が、家庭という最も安心すべき場所においてこんな心細い表情をしなければならないなんてと、とても心に残ったシーンです。
かれに負わされた宿命はとても重いものだと後に明かされるのですが、それよりもこのシーンのほうがわたしには辛かった。

三種の武具を求めるその後の冒険はファンタジックかつダイナミック。三種の武具が、実は大して役に立たないとかはキニシナイ。旅に出ることが大事なのです。
お供の猿はちゃんとニホンザルだし、途中でファンキーなビートル侍もついてきて、道中の会話は一気にコミカルなトーンへ。何より折り紙ハンゾーが可愛すぎる。

一方の敵は冷え冷えと不気味、かつ強大で、月の帝とはすなわち冥界の王なのだなと感じさせられます。
クボを守らんとするサルと、月の帝のしもべでもあるデスシスターズとの闘いなどアクション面もはキレッキレで見どころたっぷり。なおかつ胸のすくような伏線の回収っぷり。
山あり谷ありの、スリリングなストーリー ――しかしその間ずっと、クボの持つ根源的な不安は、拭われずそこにあり続けます。
けなげな、けなげなクボ。その不安がいつか振り払われることをずっと望みつつ、ハラハラしながら観ていました。

もちろん最後にはそうなるわけですが(かれは冒険を通じて自らの出自を知り、両親に愛されていたという確信と、人生に立ち向かうための勇気とを得る)、その時初めて、子供らしい望みを口にするクボ。やっとそれが言えるようになったんだね、と、ほろりと来ました。あ、あと敵のほうは、この終わり方はちょっと新しいですね。

大画面で見る価値のある映画。ただ、諸手を挙げて大絶賛かと言えば、一つだけ、気にかかる点もあったのです。
それは、エキゾチシズム満載のなんちゃって日本のこと。

いや、わたしは西洋人の描くなんちゃって日本、けして嫌いではありません。とくに「クボ」はファンタジーなのですから(「トゥーランドット」みたいに)、いちいち
「いやこんなことしないし」
「いやこれは日本じゃなくどこそこの国の風俗で」
「いやこれとこれは時代が合わない」
 と突っ込む気はないのです。こまけえことはいいのです。
しかしなんというか、この作品は結構日本のこと、勉強した上で作られているんですよね。浮世絵を感じさせるあのがしゃどくろとか。努力を感じます。その一方で、努力が逆に、それでも残るなんちゃって部分を強調してしまい、そのちぐはぐさに
「ああここまで勉強したのに……」と残念に思ってしまったのです。竹を切って太鼓を叩いたら太鼓の皮が破れるだろうし、お盆も死者の霊を呼び出してすぐさようならでは忙しないだろう、そういうファンタジー世界のなかでもなお不合理さを感じる部分が、残念でした。本作中での<はての国>の描写はもっとふっきれたなんちゃってジャパンだったけど、あれでいいんじゃないのかな。
まあ個人の感想ということで。
12/7追記。今回はせっかくパンフが買えたのでハンバーガーの写真とともにうp。
あと、感想に2~3行ほど書き足しましたが趣旨は変えてません。
関連記事

style="clap"
2017.12.07 00:35 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
| ホーム |