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LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。



祝アカデミー作品賞&監督賞&美術賞&音楽賞受賞。監督のスピーチにはぐっとくるものがありましたし溢れる特撮愛にはなんとなく、
「才能ある監督が受賞した」というより
「ぼくらの仲間がすごいことしてくれた!」みたいな親近感を勝手ながら感じてしまいました。TLもそんな感じでしたよね。予告編のラストをご覧ください。自主制作映画かと言いたくなるクレジットを。
あと、今回「ゴジラ」の中島春雄氏への追悼が行われたのも、本作と何か関係があるような気がして、感慨深かった。

でもちょいと恨みもありましてパンフレット買い損なってしまったのですよ。たぶん受賞のせいと思われます。まあ、なんとか後からでも入手しましょう。
代わりにもらってきたチラシの地模様が水を表すウロコ模様だったのがツボでした(wi-fiマークみたいなの)。

宇宙開発においても東西の競争が激化していた60年代のアメリカ。
新たにアマゾン川流域で発見された1頭の生物が、その呼吸法の秘密に人類が宇宙へ活動範囲を広げるヒントがあるかもしれないと、国家機密レベルの秘密研究所に運び込まれてきます。実験研究のために、そして最終的には解剖のために。
トップシークレット扱いとなったその生物を、しかしたまたま覗き見ることになった掃除婦は――。


レトロな時代背景がなんとも言えません

彩度の低い画面、ときどき登場する丸っこいブラウン管のテレビ、その中で行われる夢のような歌謡ショウ。
60年代のまだ夢の多い、それと同時に政治的にはヒリヒリするような東西冷戦まっただなかのアメリカが舞台。
主人公・イライザは怪我のため声は出せませんけれども耳は健康なので、歌謡ショウは大好きだし曲に合わせて踊ったりもします。映画館の階上のアパートメント暮らしというのも、決してリッチではないですが(たぶん階段が多いのと騒音のせいで家賃は安いと思われる)ロマンチックです。

先にこの映画を観たお友達がわたしの好きなスーツアクターの方を指して
「あの方だったらと妄想した」と言うのでわたしも予告に登場した恋愛シーン目当てに邪な目で見始めたのですが、この冒頭から描かれる世界観に一気に心奪われました。加えて、貧しい夜食のために卵を茹で、手早く身支度を整えて職場まで夜のバスに乗るイライザときたら、痩せて憂鬱そうな顔つきをしているくせに、動きは妙にリズミカルで楽しい。
そうこの映画はミュージカルでもあったのです。監督わたしと趣味が合うかも、みたいな不遜な気持ちについついなってしまいます。
おまけに彼女の職場はNASAを思わせるような秘密研究所!これはいい、この映画は絶対いいはずと、この時点で思い込んでしまいました。そしてそれは裏切られませんでした。

未知の生物、しかしそれにはただの実験動物扱いするには誰しも抵抗を感じざるを得ない、知性と感性が備わっていて、というのは60~70年代のSFファンタジー定番の筋の運びですが、ギレルモ・デル・トロ監督はそれを大真面目に撮っています。
ひねりも何もない、と評する人もいるでしょう。でもそれがいい。監督は恋愛映画を撮ろうとしているからです。

せっせと女性にアンケートをとっただけあって、妙にセクシーで可愛げのある「それ」のクリーチャーデザイン。
悪役を割り当てられた警備責任者はあくまで憎々しく、神は自分に似ているはずだと傲慢にも言いきり、女に対しても黒人に対してもソ連人に対しても敵意しか向けない白人のアメリカ人男性。まして人間ではない「それ」に対しては、持てるサディズムを全開にします。一言で言えば女の敵。

主人公側は、自分たちが虐げられるべき“女”“ゲイ”“黒人”などではなく、人間であることを信じるため、それぞれにこの悪役に反抗し、「それ」を逃がすことを決意するのです。
※典型的なのがイライザの友人で、彼女は家では夫に貞淑に仕えているようだったのですが、夫が白人への恐怖のあまりイライザたちの企みを密告した瞬間、心底軽蔑しきった目で見返します。

残虐シーンはそうでもありません

正直なんでR15なんだ? と首をひねるレベル。悪役の変態的なセックスシーン(声の出せない相手を征服するのに興奮する質なので、健康な妻に対しては「声を出すな」と口を塞ぐし、声帯の怪我で話せない主人公には「そそるな、あんたが喘ぐところを聞きたいよ」とセクハラするし、実際に声帯のない「それ」に対してはわざと呻かせたいのか、実験の範囲を超えた暴力を繰り返す)のせいなのでしょうか?
いやこれは特撮ファンならではの暴力慣れ、なのかもしれませんが……
それよりも
「アマゾン川流域で、原住民に神と崇められていた」という「それ」の設定や、イライザが聞かせてやる音楽に「それ」が示す子供のような好奇心、そして与えられるゆで卵への執着。「仮面ライダーアマゾン」の可愛さと「仮面ライダーアマゾンズ」のブラックさがごちゃまぜになっているような映像(元ネタは「大アマゾンの半魚人」)で、このあたりもたまりません。

従業員たちが煙草休憩をとるために、簡単に死角を見出してしまうような、特殊研究所にあるまじきずさんな監視体制。アメリカの宇宙開発にブレーキをかけるべく、密かに忍び込んでいる、ロシア語を話す人々。
殆どの人々は正義のために、そして虐げられた自分の人間性の回復のために、「それ」を逃がそうとするのですが、イライザだけはそれに加え、孤独だった魂が初めて理解者を得たような、初々しい恋を、そして深い愛を、育てていきます。

「へえ、かれ、(平常時は性器が見えないのに女性と性交が)できるの!? あらまあ……男ってのは油断ならないのね!」

イライザの友人、ゼルダにしても、下品な軽口は叩くものの彼女の恋そのものを冷やかしたりはしません。
どうかこのまま、この幸せが続くように……と祈りつつ、そうはいかないはずだと、知ってしまっている観客。
正直わたしなどは機密をめぐる米ソそれぞれの2人の男の、死への恐怖のほうがキてしまって、
「この冷戦時にのんきに恋愛かよ!」と思ってしまったりして(たぶんイライザが女性でなく、小さい男の子で色恋抜きだったほうが個人的にはもっと感動したでしょう)。

まあでも、そんな時にも芽生え、育つのが恋というものなのでしょうし、絶望的な状況の中でも
「そして2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」と信じたいのが人間というものなのでしょう。

どんなふうに語ればいいかな。言葉の話せない、あるお姫様の話だ――ロマンティックな音楽とともに、イライザの隣人、ジャイルズによる、そんなナレーションから始まった、素敵なおとぎ話。

ただ、わたしとしては、ホフステトラー博士に入れ込んでしまったので、かれが助かるところが、観たかったかな。
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2018.03.10 01:30 | dvd box 観たらめも | トラックバック(-) | コメント(-) |
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