LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

日大アメフト部のラフプレー問題で、対象的な2つの記者会見が行われ、かつて広報職についていた者として、ついつい釘付けになってしまいました。
1つめは、当事者である加害学生の、謝罪会見(個人開催)。
もう1つはそれを指導した(前)監督とコーチによる謝罪会見。監督としては会見は2度め(日大主催)。
同じ事件に対する加害者側からの謝罪であるのに、こうも対象的なものになるとはと感心するくらい大きな差があります。
日大には危機管理学部があり、にもかかわらず今回の対応がお粗末であることからついつい皮肉な目でみてしまいますが、この2会見は危機管理の教材にはぴったりの事例であり、ぜひ学部できっちり研究して教科書に残してほしいと真面目に思います。

両者の違いは、わたしからすると
・会見の目的を理解していたか否か
・その目的のためにきちんと熟考・準備されたものか否か
から来ているものだと思われます。

リスク・コミュニケーションの手本となる謝罪会見

学生による前日の会見は、当人が言う通り
「被害者に謝罪し、(そのためにも)真実を明らかにする」
 ためのもの。
誰がいつ、どこでどう発言し、それを受けて誰がどう行動したか、ラフプレーに至る経緯が問題の試合以前から説かれ、それに伴う加害学生の心の動きも詳らかにされ、それゆえに学生自身の反省している、お詫びするという言葉には非常な説得力がありました。
被害感情の慰撫のためには、「なぜ」という部分を明らかにすることが欠かせません。
加害学生はやってはいけないことをしてしまったわけなので、その点は会見したからといって免罪されるものではありませんが、少なくともこの行為で被害者側の心に寄り添うことはできたと思われ、関学関係者や被害学生の保護者の
「評価する」
「感謝する」
 という感想にもそれは現れています。

また、謝罪である以上加害側の事情は二の次であるべき、という社会(野次馬)感情からもこの会見はほんとうに見事で、

・学生の将来のため顔のアップは控えてほしいという要望はあくまで
 「お願い」に留め、従わないマスコミにも重ねて要請はしない
・監督への批判・恨み節を引き出そうとするマスコミの執拗な質問にも
 「自分は言う立場にない」「この会見は謝罪のためのもの」と対応しない

という点が徹底されており、会見をセッティングした弁護士(と依頼した学生の保護者)が有能なのか、この学生自身が本来は飛び抜けて聡明な性質だったのか、おそらくはその両方なのでしょうが、これと学生自身の

・終始真摯な表情とまっすぐに伸ばされた背筋
・落ち着いた、ゆったりした話し方

などが相まって、誠実である、潔いという印象を与えることに成功しています。
もう自分はアメリカンフットボールを続けていけないと心情を吐露するくだりにも自己憐憫は一切含まれず、それが却って日本代表クラスの選手がと悲痛ささえ感じさせ、おかげで当日のネットの感想は、学生に感情移入するあまり、マスコミの態度に反発を感じるものが大半となっていました。
下手をすれば加害学生の言い訳、保身であるとか、監督との罪のなすり合い、泥仕合、という印象を与えかねなかったものを、弱冠二十歳でこれほど見事にやり抜けるものかと感嘆します。

わたしも多少はメディア・トレーニングを受けた経験がありますが、大の大人でもいざマスコミの舌鋒鋭い質問にさらされると動揺し不必要に不誠実な印象を与えてしまったり、失言してさらに叩かれたりということになりがちです。
目が泳ぐ、ひきつった半笑い、声の震えや不自然な強弱、手の震え、発汗、こうしたものは見る者には
「言い逃れをしようとして焦っている」というふうに見えるのですが、実際そういう人も多いでしょうが、ただ緊張と動揺を抑えようとしているだけでも起こるものなので、それを防ぐためにも

・確定された事実のみを口にする
・わからないことは必ず調べて後日説明すると確約する
・マスコミの質問は動揺を狙っているので冷静に対応

ということをトレーニングされます。
マスコミは自身の記事を書くための「部品」を求めて会見の場に来ています。その誘導にのせられるとマスコミが書こうとしている記事の形に、事実が曲げられる恐れもあります。あくまで謝罪に徹した、加害学生の会見はこの点で完璧だと思いました。

このような見事な謝罪ができる子ばかりではないので、いざ我が子が加害者の立場に立ったら……という意味では参考にならないのですが、危機管理を行う立場からするとほぼ完璧、お手本と言える会見です。

本来の目的を見失った稚拙な会見

一方、
「下手なことをしてしまった」、というよりこれ以上ヘタを打つことはできるだろうかと思うほどヘタ打ちまくりだったのが(前)監督とコーチによる翌日の謝罪会見。
日大側の問題として、初動が遅かったというのが真っ先にあげられ、これについては多くの人が論じています(不祥事慣れして危機であるという認識がない等)が、被害者に対してたいへんなことをしてしまった、という反省があれば、マスコミがどうあれネットがどうあれ、
「一日も早く被害学生に謝罪を」となるのが一般常識的な態度なので、それをしない=反省がないと思われても仕方ありません。

そのような状況での会見なので、被害者への謝辞や反省の弁はどれだけ述べても足りないくらいだと思われるのに、実際には被害学生への謝辞は冒頭、コーチによる
「申し訳ありませんでした」の一言で済まされ、(前)監督の締めくくりも、アメフト関係者及び日大関係者への謝辞のみになってしまっていました。今日24日は元々関学に謝罪をすると前から決まっていた日なのですが、
「ぼくは(監督を)辞めてるので、誰か他の人が行くんじゃないですか?」と言うに至ってやもはや他人事。

また、事件から会見まで時間が経っていたのに、何らかの調査結果報告などもなく、いきなり質疑応答に入ったのも失笑もので、これだけの日数を何もしないで過ごしたのだと自ら語ることになってしまいました。
実際、事実関係についてはこれといって新しい情報もほとんどなく(唯一、すべてコーチが悪く監督は預かり知らない、というのが今回初めて明言)、当初からの弁明、
「加害学生の成長を促すべくインパクトのある言葉で激励したら当人がそれを勘違いして被害学生に暴行をはたらいてしまった、コミュニケーション不足だった」を繰り返すもの。

そのシナリオで押し通すならそれでもいいのですが、かなり無理のある理屈なので、それならそれできちんと整合性がとれるような説明が必要になるはずなのです。
そんなハイレベルな原稿、わたしはとても書けませんが、日大側も無理だったようで、
「加害学生が勘違いした」
「学生が『QBをやります』と言って来た時は?」
「何か言ってるなと思ったがよくわからなかった」
「ではなぜ一度目のタックルの時点で交代させるなり注意するなりしなかった?」
「その場面は見ていなかった」
「試合後はどうだったか」
「試合後もビデオで確認するまではどの程度のラフプレーかもわからず、何とも言えなかった」
「他の学生から『ミーティングでこういう言葉(監督・コーチのラフプレーへの関与・示唆を思わせるもの)があった』という証言が出ているが?」
「そんなことは言っていないが、フィールドで起こったことはわたしの責任」
 と、まともな頭を持っている人間なら誰も信用しない穴だらけの説明に終始。マスコミやネットによってぼつぼつ反証がなされつつあるのを知らないのだろうかと驚きます。


↑(前)監督がボールの行方よりラフプレーの方を注視しているように見える映像

説明が今までと変わらないなら何のための会見なんだという苛立ちを、ただの野次馬であるわたしですら感じたので、わざわざ呼びつけられたマスコミ側は尚更でしょう、
「加害学生1人が起訴されることになるが?」
「加害学生が嘘をついているということか?」
「嘘ばっかり、とリアルタイムで(ニコ動コメントやTWのこと?)他の学生の声があがっているが?」
 ……というふうに、根堀り葉掘り入れ代わり立ち代わりツッコミが入ります。誰も明日の文春で、と言わないのがちょっと意地が悪い。
まあマスコミはどうでもいいのですが、被害者に事実関係を過不足無く伝えることで反省を示し、改めて再発防止を誓う、謝罪会見のセオリーから遥かに遠いところを行っていることは間違いありません。
これに対する関学や被害学生の保護者のコメントはまだ見ていませんが、納得は得られなかったのではと予想します。

この間コーチは極度の緊張からか呂律もところどころ回らなくなり目はうつろで、後で視聴者から
「責任を押し付けられて自殺するのでは?」と心配されるほど。
監督は監督で、
「(加害学生に誤解させるような言葉をかけたのは)自分ではなくコーチ」と最初に言い切って独り安全圏に立ったつもりなのか、妙にふてぶてしく、マスコミの質問には聞かれてもいない教育論で応じたり、
「だから」
「要は」
「さっきもお答えしたが」
 という禁句の連発。被害者と加害者、2人の学生を守るのが教育機関としての立場であるはずですが実際には自分たちのことで頭がいっぱいで、学生のことなど一片も考えてないということが窺える態度です。唯一雄弁だったのは
「加害学生は優秀な選手なのでぜひ復帰してほしい。ネットに叩かれ罰はじゅうぶん受けた」的なセリフで、おそらくここは本音を語っているのでしょうが、被害学生にしたことを思えば復帰など考えられない、そんな加害学生の現状がまったく認識されていません。そこまで追い詰めたのが自分たちの初動のまずさだということも。

本筋とは関係ないところで展開される喜劇

そして……日大側の会見で最も驚いたのが、司会のひどさでした。
会見側が上述の通りろくな説明もしない(あとで資料一つ配布してなかったことが判明)のでマスコミの質問が絶えず、1時間半経っても終わりが見えなかったというのは確かですが、それを一方的に
「質問はやめてください」と打ち切りにかかり、それも、(前)監督、コーチの回答中にも構わず割り込んでくるありさま。
そもそも
「やめてください」は敬語とも言えない乱暴な命令文で、少なくとも謝罪の場で使っていい言葉ではありません。
とうとう(前)監督・コーチそっちのけでマスコミ対司会の言い争いが起こる始末で、
「今の司会のあなたの言葉で日大のブランドが落ちるのでは」
「落ちません!」
 のくだりなどはいったい何の茶番なのかと。

その横柄さ、頑迷さは危機管理どころか広報の役割自体理解してないものと思われ、わたしはてっきり、広報専任ではない、総務あたりの大学職員が、言われるまま仕切っているのだろうと思ったのですが、一夜明けると
「司会も(前)監督同様、心労のため緊急入院した」
「司会は危機管理学部の教授だ」
「教授就任前は某通信社論説委員だった」
 という情報が流れてきてさらに驚愕。自分が守るべき日大、及び(前)監督やコーチの足を自ら引っ張っておいて、しかもアメフト部の問題を日大全体の体質かと思わせるまでに拡大しておいて、本件では脇役でしかない立場で緊急入院とは何事かと。
それを危機管理学部の教授が?
火に油を注ぐのが専門家のすることなのでしょうか。

最初に書いた通り、先日来、この日大に危機管理学部があるなんてとその皮肉を面白く思っていたのですが、さすがにこの点は当該学部の学生さんが本気でお気の毒になりました。

ほんとうに理解に苦しむ行為で、通信社OBとして、年若い、それもテレビの記者なんか、自分の言うままに抑えられるはず、とでも思っていたのかなあとしか解釈のしようがありません。端から見ていると通信社→記者クラブに入っている新聞→テレビ→雑誌その他という感じですから……それも元論説委員というのがほんとうなら重鎮も重鎮ですし(元共同通信、現フリージャーナリストの米倉氏はこの広報職員とは同姓同名なだけ、という情報もあり現在経歴は不明ですので一旦保留にしますテレ朝、玉川徹氏がこの広報担当者は共同通信の記者だったと明言されているので表記をもとに戻しました)。
いやそれとも、司会が悪役となることで(前)監督への敵意を軽減しようという狙いなのかw

嘘は難しい

広報職についた際、徹頭徹尾叩き込まれたのは、
「嘘はばれる。一時は乗り切っても後でいつかは明らかになる」というものでした。もちろん誠実であるのが一番の王道だという意味で、仕事上は一切嘘をつかないというのがわたしのモットーにもなりましたが(楽なので)、しかし、時には嘘をつかざるを得ない場面というのも人生のなかでは出てくることがあるのでは、と思います。
但し、もし嘘をつくのならばれた時のダメージを十分予測して行うべきだし、嘘に説得力を持たせる技術も必要で、何も考えず、内輪の場でのみ通用してきた手段(内田前監督や司会の人の場合は強権で屈服させるというスタイル)を外で押し通しても笑われるだけです。
今までの手段が通用しない? と慌てて小細工を弄しても同じこと。
今や日大全体の問題になったのに監督を辞めるだけで理事の方は
「辞めます。つまり一時謹慎します。その後のことは皆さんのご判断に」と、一度辞めると言ったそばから一時謹慎にトーンダウンするのも地位に恋々としているようで見苦しい。日大関連の職はすべて辞めるというのが筋というものでは。
こういう客観性のない方には嘘は向いていないのではと思うのです。改めて、誠意ある対応をするのが楽だし、一番の保身にもなると思うのですけどね。
同日追記。確定していない情報が入っているので一部保留にさせてください。←元に戻しました。

更に追記。
昨晩の日大会見の一幕で、記者が
「相手選手に怪我をさせてもいいと思ったのでは?」と追求するのを
「そんなことは思っていない」と否定する場面なのですが、そこは
「関学のQBに対して何も思ってない」じゃなく、なにか、怪我は大丈夫だろうかと心配した的なことを言うべきだったんじゃないのかなあと思うのです。こういうところも
「自分たちのことばかりで反省がない」
「教育者らしさがない」
 と言われるところかも。

被害者側は納得できないだろう、と前述しましたが、その後フェイスブックでは被害学生の父親が
「これでは(事実を明らかにしてくれた加害学生)がかわいそうだ」と怒りを表明し、市議の任期が終わったら立候補はせず日大(前)監督、コーチと徹底抗戦するため、証拠となるような情報を広く求めています。奥野氏は当初(前)監督、コーチのみを訴えることを検討したようですが実行犯抜きでそういうことはできないようなので、3人まとめて訴えた上で加害学生のみ減刑嘆願をするような方向で準備を進めているとのこと。
今後は司法の場で事実究明が行われる模様です。
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2018.05.24 11:39 | diary 優雅に生きたいけどだめ | トラックバック(-) | コメント(-) |
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