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LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

1962年、ナイトクラブの用心棒はじめ、様々な職を転々としてきたイタリア系アメリカ人、トニー・“リップ”・ヴァレロンガ。口八丁の小器用さを気に入り、声をかけてくれる向きはあるものの裏社会の仕事は避けたいし、さりとて妻子は養わなければ……ということで、たまたまありついたのが運転手の仕事。
「ドクターが運転手を探している」と聞かされ、白人の医師をイメージして面接に赴けば、示された住所はなんとカーネギーホール。
出てきたのは全身から金の匂いをさせる黒人天才ピアニスト、ドクター・ドン・シャーリーで、未だ黒人差別の色濃い南部へコンサートツアーに出かけるので、ついては2ヶ月間、大過なく過ごせるよう取り計らってほしいという。

「冗談じゃない!」

黒人を連れて南部で2ヶ月? トラブルが起こるのは目に見えていると、席を蹴って出てきたものの――。

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Photo by Alex Read on Unsplash

ロードムービーの定石通りのバディ・ストーリー。
おじさん2人が可愛らしく、映像はあくまで色彩豊かで美しく。全編穏やかな、程の良いユーモアに包まれています。
噛み合わない2人

そんな冒頭から始まる2人の珍道中。当然、喧嘩ありなんだりで、男の友情がはぐくまれていくのですが、何がいいってこの映画、こんな題材なのに黒人差別をテーマとしていない。もちろん社会背景の説明として必要な程度には描き込まれていますが、スポットがあたっているのは違うところ(なので公開後、黒人側からは不評だったと。確かに言われてみれば白人が作った映画だという感覚もあります)。
この映画には、長いツアーの間、妻へ手紙を書くトニーに対し、ただ日常の些事を書き連ねた散漫な文面に呆れたドクター・シャーリーが、
「何が書きたいんだ?」
「つまり……要は、あいつがいないと寂しい」
「ならそう書きなさい、汚い言葉は使わないで」
 とアドバイスする下りがあります。そんなふうに、この、様々な感動ポイントのある実話について、監督も
「何が撮りたいんだ?」と自問自答したのではないかな……? と想像します。きっとその答えは、「2人の友情」だったんだろうと。

お金があるだけでなく身のこなしや立ち居振る舞い、アクセントに至るまで、品格と教養が服を着て歩いているようなドクター・シャーリー。差別的な扱いを受けても顔には出さず、侮辱への反撃として暴力を奮ったトニーに対しては
「暴力は敗北だ」と言って聞かせる誇り高さときたらもう、凡人にはついていけないレベルです。これを
「いけ好かないやつ」と思うトニーは当然下町育ち。妻の
「黒人が旅行なんかするの(タイトルのグリーンブックとは、黒人が泊まってもいいとされるホテル、レストランなどがリストアップされた専用のガイドブックのことで、要はこれも差別の象徴)?」という言葉にも違和感を持つことがないのは、自分自身
「黒人なら当然フライドチキンが好きだろう、エンターテイメントが得意だろう」と決めつけてしまう、そんなステレオタイプの持ち主だからです。
そもそも人種以前に教養レベルが違いすぎて、会話も全く通じないことがしばしば。一見うまくいくはずのない2人。

知れば知るほど

ですが、それでも一度演奏を耳にすると、
「あいつは天才だ」と無条件に認めてしまうトニー。あえて南部へ趣き、ひどい差別に耐えながら音楽で何事かを成し遂げようとしている、その強さにも内心敬服しています。
そんな天才的ピアニストに対し、ふさわしい敬意どころか、平凡な一人の人間として当然与えられるべき基本的な権利すら認めようとしない南部の白人社会のあり方に心を痛め、ラストではパーティーの席についた親族の
「ニガーの運転手」という何の気なしに発せられた言葉にも真顔で訂正を入れてしまうトニー。

このあたりの心の移り変わりについて、トニーの側に特に葛藤は描かれてないんですよね。正義感と言うよりは、ごくフラットな、
「同じ人間同士じゃないか」という、自然な共感をトニーは冒頭からずっと誰に対しても持ち続けていて、シャーリーに触れてその地金が現れてきたと。そこに地に足のついた懐の深さを感じます。
一方のドクター・シャーリーのほうは、色々と抱え込んでいる想いがあり、とくに実は黒人である上にもう一つ、二重に差別される要素を持っていたと示されるシーンでは癇癪さえ起こしてしまうのですが、
「君には知られたくなかった」と言うシャーリーを、
「おれはナイトクラブで働いていたからわかる。皆色々、複雑なもんだ」とこれまた懐深く受け止めてしまうトニー。家族の縁が薄く、トリオの仲間とも距離を置く孤独なシャーリーが、この後生涯に渡り変わることのない友情をトニーと築くようになっていったのは当然のなりゆきでしょう。

「クリスマスイブに間に合うように帰宅したい(妻子持ちなので)」という当初のトニーの望みを叶えるため、とっくにそれを諦めていたトニーに代わり、夜を徹しドライバーを務めるドクター・シャーリーの長身が、運転席では実に窮屈そうで、ほんのワンカットなのですがしみじみしました。

小ネタ

トニーが運転するのはプロモーターから任された、華やかなエメラルドグリーンのサンダーバード。見るからに贅沢な感じがするのですが、これって「シェイプ・オブ・ウォーター」のあのいけ好かない上司が乗り回していたのと同じ車種でしたっけ?
後年、70年代の話ですがマイケル・ジャクソンが車を運転していたら警官に勾留され、盗んだのではないかとしつこく問われたというエピソードを思い出しました。
また、黒人側は本作を批評しているということも括弧書きで付け加えました。言われてみれば、なんというかシャーリーが、孤独な塔の中のヒロイン、トニーがそれを救い出す英雄、っぽい単純な描写になっていることは否めない。
ちなみに本作の脚本家の名前も作中散々ねたにされていたヴァレロンガ。トニーの実の息子であり、ハンバーガーを26個食べたあたりも実話なのだそうです。
同日追記。過去記事へのリンクを張りました。あと、サンダーバードの色について、明らかに間違っていたので訂正しました。
また、黒人側から本作について批判が出ていることも括弧書きで付け加えました。言われてみれば孤独な塔に住まうヒロインと、それを守り助ける騎士みたいな単純化がされている気も、しないではない、です。

本作から連想した映画は、「バード」。チャーリー・パーカーを主人公にしたもので、バンドがやはり南部にコンサートツアーにでかけるエピソードがあるんですが、その際、1人だけ白人のトランペット奏者がメンバーに入っているのを
「まずいよ(黒人ばかりの聴衆から反感をかうし白人も問題視する)」と話し合う。白人メンバーは新人だし、いなくてもコンサートはなんとかなるので外そうとするのですが、当人は絶対パーカーと同行したいと言うので、結局
「黒人のアルビノ」であると装わせることになります(レッド・ロドニーの実話)。
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