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LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

もう今年あと3日ですよ皆様。ニチアサがないと暇なのですよ。

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Photo by Matt Seymour on Unsplash

いや大掃除、しようと思えばまだまだするところはありますが、鬼の居ぬ間の逃避行。
ということで数日前に読み終えた超有名大作を。

十二国記「白銀の墟 玄の月」第1巻~第4巻
小野不由美著


もちろんこれは「十二国記」という古代中国歴史小説風ファンタジーの中の一作なのですが、小野不由美作品はファンタジーであろうがホラーであろうが書きっぷりがミステリの文法を踏まえているので、いつも、トッピングましまし、サービスたっぷりという言葉を思い浮かべてしまいます。女性の作家ってこういう方が多い気がします。


「十二国記」は第一作に登場する慶国の王である京王・陽子が現代日本の女子高生だったので、自然、彼女が主人公と目されがちな一方、質実剛健な北の国、戴国の麒麟(天意を受け王を選び、補佐する慈愛と絶対正義を体現する生物でふだんは人の形をとる)出生の謎を取り上げた「魔性の子」が序章として先に刊行されており、かれの成長後の苦難を描いた本作はいよいよ真打ち登場、
「泰麒(表紙の人物)が立派になって!」と親戚のおばちゃんのような気分で読んでしまいます。

奢侈を好み国を荒れるに任せた前王が倒れ、有能にして清廉なれども人が一般的に有する弱さへの共感性に乏しいという欠点も併せ持つ、驍宗が新王に立って半年。
突如起こったその新王の失踪。
同時に宮殿はにわかに起こった<蝕>によって多大な打撃を受けたまま、麒麟の姿もかき消えてしまいました。
一体何事が起こったのか。国が天の保護を失うことなどありうるのか。雁国延王や慶国京王ら、周辺諸国の王たちも無関心ではいられません。

「何事」という謎については既に、戴国の女将軍・李斎によって前シリーズで解き明かされています。軍人時代、驍宗と並び称されていた名将・阿選が反意を抱き驍宗を襲ったこと、同時に麒麟にも著しい痛手を負わせたこと。麒麟はとっさに我が身を守ろうと蝕を引き起こし、蓬莱(がなんでか現代日本につながっています)へ流れ出ていたこと。
そのまま麒麟としての能力と記憶を失い、一男子高校生として現代日本で暮らしていたかれを、李斎が戴国再建のため連れ戻したこと。

数年の空位は戴の自然にも人々の暮らしにも深刻な影響を及ぼしており、元より豊かとは言えなかった同国は、飢えと寒さにただ息を潜め耐え忍ぶだけの有様です。麒麟を伴い戻ってきた李斎は、この事実にまず驚くのです。

・簒奪するほど王位を欲していた阿選は、
 なぜ今、その権力を用いることもなく無為に過ごしているのか
・驍宗は深手は負ったはずだが存命ではあるはずなのに、
 この国民の窮状を前にいったいどこでどうしているのか
・天意は失踪した驍宗と簒奪者である阿選のいずれにあるか

大きくこの3つの謎で読み手の気持ちを引っ張りつつ、物語は志を同じくする仲間を集め、兵を糾合し、同時に驍宗の身柄を捜索して簒奪者を打つべく軍を起こそうとする李斎の奮闘を中心に展開していきます。もちろん李斎のみならず、そこへ加わっていく人々、軍人、宗教家、商人、農民、坑夫、土匪……様々な階層の人々の絶望と国への思い、献身や使命感、利己的な計算、自ら将と仰ぐ者への忠誠や麾下とみなした者たちへの信頼、家族愛と恩義……等々が絡み合い、大きなうねりとなっていく様は戦記もの、歴史ものとして非常に力がある、面白い作品と言え、実際読んでいて萌えに萌えて困る(とくに阿選の麾下が切ない)のですが、その一方、登場人物たちは常に互いの陣営の肚を読みつつこれらの謎を自問自答もしており、物語の過程でいくつもの手がかりが浮かんでは消え、あるいは細い糸として残り、最後の最後に伏線がすべて回収されるという小気味よさはまた、一種独特のものです。

常々、これはもう

・人が胎生ではなく卵生である
・傀儡、妖魔が出現する
・天意を人の国にもたらす麒麟という存在がいる
・王は燃料となる植物を新たに生み出すなどの奇跡を果たしうる

……というファンタジー要素を前提としたミステリととらえていいのではと思ってきましたが、今回解説者がまさに同じことを書いていて我が意を得たりでした(尤も簡単にこの作品を現代社会への寓意と単純化するのはどうかと思いますが)。

これで残る主な謎はただ一つ、
「彼女はなぜそんなことをしたのか?」
 ですが、これはきっとあとのシリーズで解き明かされていくのでしょう。
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