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LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

時節柄なのでしょうが、街のショッピングモール(シネコンがある)もそこに至る道もがらがら。
座席指定の画面が市松模様になっていてぎょっとしましたが、1つ飛ばしで席をとるようにという劇場側の配慮でした。ポップコーン売り場も物販のスペースも係員が極端に少なくて、寂しい……この春はアルバイトがなくなった学生さんも多いかも。病気よりも経済の冷え込みが心配ですね。

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Photo by Johann Siemens on Unsplash

第一次世界大戦中の実話を元にした映画。ぞっとするような戦場の不潔さが冒頭これでもかと描かれているのですが、終始宗教劇を観ているような静謐と品格を、同時に感じとってしまいます。家系樹(家樹)のごとく枝を広げる草原の樹木。そびえ立つ梢を吹き抜け、深い森の暗がりに満ちていく美しい賛美歌の響き。照明弾の禍々しいまでの明るさ、炎上する教会とろうそくの灯りに照らし出される聖母さながらの女性。作戦中止の伝令を走らせる将軍がコリン・ファース、メッセージを受け取る最前線の大佐がベネディクト・カンバーバッチと、始まりと終わりにしっかりとした重石が配されているのも心憎い。
全編ワンカット

英・仏連合軍とドイツ軍が睨み合ったまま、膠着状態に陥った西部戦線。とうとうドイツ軍が退却を始め、これを好機と見たマッケンジー大佐(カンバーバッチ)のデボンシャー連隊が大々的な追撃をかけようとしていた、1917年4月6日――。
物語は伝令を命じられる上等兵2名が、まどろみから揺り起こされ、目醒めるところから始まります。
「重要な命令がある、立って私について来い」と言う軍曹に従い、着いたのはエリンモア将軍(コリン・ファース)の作戦テント。航空写真の分析から、ドイツ軍の退却は罠だと判明した。明朝の総攻撃を中止しなければ、マッケンジー大佐の部隊は壊滅状態になるだろう、中止命令を携え、伝令として走ってほしいと。周到なドイツ軍は、退却と同時に付近の電話線も切っていたのです。

「マッケンジー大佐の部隊にはきみの兄も居る。すぐ発てるな?」と言われ、二つ返事で出ていこうとする若いトム・ブレイク(チャールズ・チャップマン)。夜闇に乗じたほうがいいと安全策を口にするウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)も、ブレイクの兄を想う気持ちを受け入れざるを得ず、すぐさま出発します。
この冒頭から、とにかくカメラが2人から離れません。前になり後ろになり、時に遠景を映しながらも、明らかに今カットを割った、とわかるのはスコフィールドのブラックアウトだけ(あと数カ所ここかな? と思うところがありましたが)。少なくともどのシーンもワンシーンワンカットでほぼ全編撮られています。
ぬかるみを危うい足取りで通り抜け、塹壕をよじ登り、駆け下り、ブービートラップに嵌り……長尺であればあるほど撮影の困難さは増すでしょうが、それよりも何の省略も飛躍もない、ヒリヒリするような緊張感が2人の心境を代弁しているようです。舞台劇同様、観客はかれらの一歩一歩をともに歩んでいくしかありません。同時に、戦場のあまりの不潔さに、これはスコフィールド(前線からさらに進み、鉄条網を抜ける際に手を怪我し、さらには死体がそこここに転がり、ネズミがうようよ走り回るぬかるみにその手をついてしまう)が破傷風か何かになる落ちかとハラハラしました。
両陣営の間に横たわる広い空白地帯・ノーマンズランド。しかしそれが見かけどおりの空白か否かは、行ってみなければわからないことです。果たして――。

使命

ぼんやりと、使命というものについて、途中考えながら観ていました。わたしならばまず、戦争には反対するし選べる状況であれば従軍はしない、伝令を命じられても拒否したい。命を顧みず使命を果たす勇気なんて持ち合わせてはいません。
ただ、一旦こうして出発してしまえば、自分もやはり、その大きな流れの中で、何とか任務を遂行しようとあがくことになるのだろうなと。広い戦場のなか、どこへも逃げ出すことはできない上、万一自分が遅れたことで、前線の大部隊が殲滅されたなどということになったら、それこそ死んでも死にきれない気がします。かれらはもう、ああなる運命だったのだろうなと。
過酷な運命の中でなお、ごく自然な人間らしさが捨てられない2人。空白地帯ののどかな農園で、チェリーの品種を諳んじてみせたり、汲み置かれたままの牛乳を味見する田舎育ちのブレイク。撃墜されたドイツ機の中でパイロットが泣きわめいていれば力を合わせて引きずり出し、追い回されて潜り込んだ先で赤ん坊を保護する女性に出会うと、持っている食べ物もすべて置いていこうとするスコフィールド。
途中で出会う他の部隊の上官も印象的な人物が多かったです。
「重大な任務だな。メッセージを伝える時は、証人が要る。さもないと、意地で攻撃を続けようとするタイプの士官もいるからな」と助言したトレンチコートの大尉が知的でよかった。なんというのか、実にアンダーステイトメントな、イギリスらしい映画だと感じます。
ラストは力尽き、樹にもたれてまどろみへと落ちていくスコフィールドの描写で終わり。まどろみとまどろみの間の一幕。
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