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独りTVで観たのが残念無念の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」

ホームカミング」「ファー・フロム・ホーム」と合わせ、可愛いスパイディとホーム三部作の掉尾を飾る本作。なのにこれだけ金曜ロードショーで観ることになり、金曜ロードショーに怨みはありませんが(むしろお世話になってます)やはり残念。
途中、えっと思う仕掛けがあり、ここだけはやはり映画館で、他の観客の反応も一緒に、最初は鑑賞したかったなあと思いました。
日本ではまだコロナワクチンがなく、外出を控えている最中の公開だったんじゃないかな? うちには年寄りもおり、どうしようかなと迷っている間に見逃してしまった記憶があります。

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UnsplashEmmy Gaddyが撮影した写真

タイトルは敢えて直訳するなら「家には帰れない」。
これまで可愛い可愛い言ってたスパイディも高校を、そして少年期卒業の時を迎える本作です。社長はたぶん悪くない。

……とはいえ日本の劇場でここまでの盛り上がりはないだろうけど。

だから子供は嫌いだ

前作で、全世界にその正体を知らされてしまったピーター・パーカー。世界を助けるためとはいえ、スーパーヒーローの活躍を好意的に見る人ばかりではないことは、その登場作・「シビル・ウォー」を観ても明らか。
危険人物とみなされたかれ自身はもちろん、つきあい始めたばかりのガールフレンド・MJや親友・ネッドの存在まで暴かれ、憧れのMIT入学にも支障が出るレベル。

だからといって、
「時を戻して、皆がぼくを知らない頃に」とドクター・ストレンジに依頼にいくところが軽はずみ。まだ子供なんですね。
わかっているのか、誰もお前を知らないということだぞ、とことの重大さに驚くドクター・ストレンジに、
「あ、じゃあMJにはぼくを憶えててほしい。あと、ネッドと、メイ叔母さんと……」と、思いつくまま除外要件を付け加えていくところも軽はずみ。何も考えてなかったんかい。もう詠唱は始まっており、魔術は急には止まりません。
結果として世界は大混乱に陥り、なのにそもそもピーターは
「MITに掛け合う」という正攻法すら試していないという。

大きすぎる力に対し、あまりにも無邪気で幼いヒーロー。
結果として別の次元、別の並行世界から引き寄せられたヴィランたちを、ドクター・ストレンジが送り返そうとするのにさえ茶々を入れます。
「このまま戻したら、かれらは死んでしまう」
それがヴィランの宿命とはいえ、かれらを悪とする要素を治療し、それから戻すという救済策を強硬に進めようとします。

この世には取り返しのつかないことがある、とまだ知らないピーター。
起こったことの責任はとる、その心構えはある、だからいいじゃないそれくらい、と。
今まではそれで、何とかなった。

この万能感、この軽さ、歴代スパイダーマンのなかで図抜けた若々しさ、瑞々しさとも見合っていて納得するしかないのですが、うーんでも、アイアンマン喪失の後でこれなのか? という気持ちも少しあります。

大いなる力を持つ者に、大いなる責任を

でも仕方ない。ピーターは歴代スパイダーマンが負ってきた固有の悲劇性とは無縁でここまで来ています。その若々しい無邪気さのままで、アベンジャーズの一員として実際に世界を救うという、華々しい実績さえ手にして。

固有の悲劇性とは、取り返しのつかない、大切な人の死。
それが自分の軽はずみな正義感によってもたらされたものであるという、生涯消えることのない悔い。
そして、大切な人が、今際の際でかれを許し、残す、
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という教え。

「スパイダーマン」の物語において、必ず繰り返されるエピソードです。なんとなく、トム・ホランドのピーターはそれを免除されているのだなと思いこんでいました。
免除されてはいませんでした。
(高校生には大問題とはいえ、たかだか)大学に進学できないという程度の動機で。それも万策つきたというわけでなく、誰でも思いつきそうな手を試す前に。結果として異世界から現れたヴィランたちを世に留めるという、世界の理から外れた行動を、覚悟もなしに。
ドクター・ストレンジという有識者の助言に耳も貸さず。
実に軽やかに、つけを払う羽目へ陥っていくピーター。

メイ叔母さんに手を下した元凶へ、明らかな殺意を抱いた、その瞬間の表情にぞっとしました。それはトム・ホランドのピーターには似つかわしくないものでした。

素敵なサプライズ

そんなピーターを救うのは、やはりの友情パワー。
ピーターの窮地にじっとしてはいられないと奮闘するネッドとMJが引き寄せた、先輩スパイダーマンズ(サム・ライミ版主演のトビー・マグワイアとマーク・ウェブ版主演のアンドリュー・ガーフィールド)が登場します。

前述の異世界から呼び寄せられたヴィランがそもそもスパイダーマン過去作のヴィランばかりなので、これは予測できることでもあったのですが、それでも登場シーンにはやはり、驚きました。

「ピーター」と呼べば3人同時に振り向き、作戦上ピーター1、ピーター2……と雑なコードネームをつければ案の定の大混乱。
「MJが……」と言いかければ典型的なアメリカのパーティーガール、メリー・ジェーン・ワトソン(キスシーンが良かった!)を恋人とするピーターがえっという顔をする、お決まりといえばお決まりのややこしさが第一に楽しかった。
加えて、同じ蜘蛛の糸と言っても、蜘蛛に刺されたことで自ずと糸を射出できる体質になったピーターと、射出機に蜘蛛の糸の原液を化学合成・装填しなければならないピーター、そしてアイアンマンの遺産であるハイレベルな工学機械を操り“工場もラボもない”状態で魔法のように簡単に様々な分析加工をやってのけるピーター、それぞれがそれぞれの力に目を瞠るシーンも明るいトーンで描かれ、救いになりました。

視聴後に知ったのですが最終決戦の場で互いに活を入れ、作戦を打ち合わせて散開する直前、アンドリューピーターが
「待って待って!」と残り2人を呼び止め、「……愛してる」と言うところ、それにトビーピーターとトムホピーターが驚いたようにただ
「ありがとう」としか返せないところ、あれアドリブだったそうですね。
メイ叔母さんを殺した相手と再会し、我を忘れそうになったトムホピーターをトビーピーターがすんでのところで止めたくだりも合わせ、孤独な彼らが互いに真の意味で得られた兄弟愛を感じました。
これ、トムホピーターだけでなく、先輩たちにとってもまた
「あの時救えなかった人たちを救えた」
「あの時自分が陥った地獄に、後輩が落ちるのを止められた」
 という救いになっているんですよね。度が過ぎると傷の舐め合いみたいになってしまうのでしょうが、要所だけ押さえあとはコメディ、という描き方、とてもよかったです。
全員ピーターなんだけど……共に戦ってくれた先輩に別れを告げる際、ただありがとうの言葉しか出てこないトムホピーター。

ブラック・ダリア

初志貫徹、それぞれのヴィランを治療し、元の世界へ送り返すピーター。しかし世界の崩壊は止まらず、これをくい止めるには最早、
「全世界がピーター・パーカーの存在を忘れる」魔術しかなくなります。アベンジャーズの仲間ですら。
今度こそ、己の行為に責任を取ると決断したピーター。
その決意に感動し、特別にファミリーネームで呼ぶことを許すドクター・ストレンジが可愛いです。
別れを告げられ、いつものクールな態度とは裏腹に、絶対に嫌だ、あなたを忘れたくないと涙を浮かべるMJ、わかった、また会いに来るんだろ? とあっさり受け入れるネッド、どちらの反応もらしくてここもよかった。
そして――。

MIT入学が決まったMJの元へ、改めて会いに行くピーター。自己紹介の台詞を何度も練習し、紙にも書いて、緊張した姿で……「ホームカミング」の初デートのシーンを思い出しました。相手はMJではなかったのですが。
ところが顔を見て、名乗ったところで、残りは呑み込んでしまうピーター。手にしたメモは、ポケットにしまい込んで(社長が記者会見の想定Q&Aのメモを同様にしまい込んで「わたしがアイアンマンだ」と宣言するのですが対照的です)。
バイト先のカフェ。カウンターの中に立つ彼女の胸には、ピーターが贈ったブラック・ダリアのペンダント。

これから、一から出会っていくつもりなのかな。

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UnsplashMihikaが撮影した写真

名残惜しそうな視線をMJに、そして客として来ていたネッドに投げ、コーヒーを手に小さなアパートへ戻るピーター。そこにただ独り住み、ミシンで縫ったクラシックなスパイダーマンスーツで高層の窓から抜け出てはご近所自警団の活動を再開するかれの孤独が、いかにも「スパイダーマン」本編の始まり、と感じられてしみじみしました。
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