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脚が折れて暇になった本日読了

そんな気がしないでもなかったんです。音がすごかったので。

Xでは既につぶやいたのですが、週末に「レキシふたたび謎物語」というイベントに参加してきました。
井上和彦さん演じる謎の人物とともに、岡山の歴史をたどって旅をする……という趣向。謎の難易度はかなり低く、小学校高学年くらいから難なく解けるものでしたが、ストーリーは2つでそれぞれ所要時間は1~2時間。ただしそれぞれのポイントはかなり離れており、最寄りには飲食店もなければ電車の本数も少ない。1日でやっつけようとするとお昼抜きなどの余裕のないスケジュールになってしまいます。もしくはタクシーなど車を使うか。
なのでわたしは土日2日かけたんですね。

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2日め、水攻めで有名な備中高松の駅から謎解きポイントに向かう路上で、歩道の段差に躓いてしまいました。
といっても転ぶほどの勢いではなく、おっと、と咄嗟に片足を重心の下に出して防いだわけですが、その瞬間、出した足のくるぶしのあたりからパキッとすごい音がしまして。ただ痛みはなかったので、足くじいちゃったな、くらいでその後ひょこひょこ2時間ほど歩き回って謎解きしたわけです。翌月曜日も足腫れてるなあくらいで普通にすごして、さらに火曜日。内出血していたようでくるぶしだけ少し青黒くなっていたため、念のためと受診したところ、思い切りパッキリ折れていました。くるぶしの骨が。

幸い入院はしなくていいのですが、もう体重をかけないように! と松葉杖を渡されてしまいました。この体重かけないというのが難しい。前の骨折のときは折れたのが指先のほうで、かかとはついても構わなかったので割りと自由に動けたのです。今回はけんけんで飛び回るか松葉杖。これすごく不便です。手に荷物が持てない。 お茶をいれて自室に持ってくとか無理。大掃除もお年賀も戦力外です。

ということで仕事とゲーム、あと読書くらいしかできることがない。井上和彦さんのCVはたいへんスイートでございました。

鉄の花を挿す者
森雅裕(講談社)

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ということで岡山にちなんだ作品。

岡山県瀬戸内市長船は、全国有数の日本刀の生産地。かつて国宝や重文クラスの日本刀の多くがこの備前長船と呼ばれる、吉井川流域の狭いエリアで製作されています。数多くの刀工が集まり、長船派、福岡一文字や片山一文字、吉岡一文字(吉岡一文字は「レキシふたたび謎物語」で初日に行ったポイントの近く!)……と様々な刀派が生まれました。中でも特徴的な重花丁子の刃文を有する国宝・山鳥毛の華やかさは出色で、タイトルの「鉄の花」はこの山鳥毛、もしくは日本刀の美そのものを指していると思われます。
山鳥毛の刃文を再現しようというプロジェクトが地元岡山で起こり、マスコミや当地の美術館・大企業が見守るなか、プロジェクトの中心にあった老刀匠が急死。既に独立していた弟子が、知らせを受け葬儀に向かおうとするところから、物語が始まります。

先日わたしも備前長船刀剣博物館で当の山鳥毛を鑑賞してきたばかりで、若干この物語のほうが時代背景は古い(長船がまだ邑久郡/森原のモデル・林原はおそらく粉飾決算発覚前/山鳥毛が個人蔵……等)のですが、長船や岡山市街、東京各地の風景描写がすべてビジュアルとして再現されるという楽しさ。根津美術館の庭園、いいですよね!
もちろんわたしには日本刀の世界についてほとんど知識がないため、ここに描かれた内容がどれほど現実に即しているかはわかりませんが、美術に音楽と、これまでも芸術家の世界を描いてきた作者らしく、今回も才能と志、情熱と計算、それぞれがそれぞれにあがきながら否応なく自分の理想を追い求める世界の、息苦しいまでの空気感が伝わってきます。

主人公は才能も技術も有していながらそれに見合った評価はまだ得られておらず、但し本人は実現したい理想と現実とのギャップでいっぱいっぱいで、周りの評価すら気にする余裕がない。不器用でストイックで、でもその姿が、かれよりも才能や技術に劣る者には傲岸不遜に映る。
名匠の遺作の、意外な凡庸さ。小器用な兄弟弟子への情と反感。美しい女性学芸員と、飼い主亡きあともその元を離れようとしない老犬。
どんな卑近な、あるいは悪辣な人間でも、芸術の道を志す者には必ずどこかに捨てきれない情熱や志、憧憬というものがあるんだなあというのが森作品の特徴で、今回もそれは堪能でき、魔夜峰央装丁の「モーツァルト」の頃から変わらないなと思ったり。
まあ山鳥毛はこんなに美しいのだから仕方ありませんね。本書の装画とちょっと見比べてみてほしい。

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ついでながら、主人公が得意とする絵画的刃文。江戸末期因幡国の刀匠、眠龍子寿実が著名ですが、これを現代に蘇らせた主人公と同じく山陰で活動される大橋悠史刀匠の吉野川(流水と桜花)を「林原」美術館で撮ってきたのが下の写真です。ご参考までに。

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小説として楽しめた反面、誰がなぜどうやって……という推理はほとんできませんでした。が、あれのある場所だけは勘でわかりました。そこもっとよく探せって、ずっと思っていたのでラストで当たっていたのはうれしかったです。自分ならあそこに隠すなあって思っていたので。
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