LOVE! HEROES!

特撮番組全般、そして高岩成二さんと伊藤慎さんを応援します。

強くなくては、生きていけない。やさしくなければ、生きていく資格がない。
チャンドラーの名文句に従えば、探偵の半分はやさしさでできています(本家バファリンのやさしさ成分は今や30%くらいだそうですが)。別に対立概念じゃないですしね、強さとやさしさ。
とはいえ、ここまで「具体的な」やさしさにあふれる探偵像もあまりない、というのを2冊。
ここのところ、やさしさに飢えているのかもです。

まあその半面、
「俺のものにならないなら死ね」とか言われて片足で踏みにじられてみたい気もするわけですが。
混ざってますか。

密偵ファルコ 地中海の海賊(光文社文庫)
リンゼイ・デイヴィス著

シーセッド・ヒーセッド(講談社文庫)
柴田よしき著
地中海の海賊 (光文社文庫 テ 5-16 密偵ファルコ 16)地中海の海賊 (光文社文庫 テ 5-16 密偵ファルコ 16)
(2008/05/13)
L・デイヴィス

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そんなわけでファルコシリーズももう16作?
ローマの人々がゴシップを求めて読み漁る「ジャーナル」の専属コラムニストが、夏の休暇を過ごすべく訪れた港町オスティアで失踪。
彼がオスティアへ出向いたのはほんとうに休暇のためだったのか。
あるいはもっとプライベートな/ジャーナリスティックな狙いがあったのか。
捜索を依頼されたファルコは、貴族たちの別荘建ち並ぶその避暑地へ出かけていくのですが…

今回は国内での事件であるため、愛妻ヘレナと2人の娘や、友人ペトロと妹マイアのカップルだけでなく、ファルコの嫌う一族郎党(本書にはユーモラスな家系図つき)が事件のあちこちで顔を出し、そのためにややスリリングな味わいに欠ける印象があります。
その代り、これまで名前以外いっさい表に出なかった母方の伯父、フルウィウスが登場。
子どもの頃会ったきり、しかも、どうやら大人たちが敢えて子どもの前でその噂をしない空気のあった伯父なので、ファルコにとっては親戚とはいえ赤の他人も同然なのですが…これがまた、意外な人物でした。続刊でも登場しそうですね。

折しもその港町では海賊(時の皇帝に平定されて表向きローマからは根絶されたことになっている)による連続誘拐事件が起きており--これを嗅ぎつけ、ジャーナリスト失踪との関連を疑うファルコ。
裕福な商人のみを狙い、その妻子をさらって必ず被害者が払える範囲内での身代金を請求するという、スマートかつビジネスライクな手口。
その間人質は丁重に扱われ、身代金支払い後はすみやかに返還されるのですが、
「自分たちの身元も資力も海賊に知られてしまった」という恐怖感ゆえに、事件後の被害者は、官憲の調べにも口を閉ざしがち。

調査の中で浮かび上がってくる、彼と元海賊首領と噂される人物との、交流。
かつてこの地で彼とその伯母を襲った不幸なできごと。
彼はオスティアで何をしようとしていたのか。

そうした謎を解く間にも、さまざまな、魅力的な人物が登場してそちらに気をとられてしまうのです。

たとえば、前前作でファルコが引き取った戦災孤児、アルビアの成長ぶり。
ストレスの故か、栄養不足で育ったためか。
幼い少女のような身体つき、加えて、たった独りで大人たちに搾取されながらも生きてきただけに、常に無関心を装い心をよろってきた彼女ですが、ヘレナとファルコに保護され、ユリア、ソシアという2人の幼い娘の子守を任されてからというもの、その早熟な知性がいかんなく発揮されるようになってきました。

作中、自分を誘拐した海賊に一方的に熱をあげ、運命の恋と信じる愚かな娘が登場しますが、ほぼ同年代の彼女に対するアルビアの辛辣な言葉が痛快。
また、独り戦いに臨むべく、ひっそりと身支度を整えるファルコにこのアルビアのかける言葉が、間接的にファルコの強さを--命がけのドタバタアクションシーンで十分承知なのですが--読者に伝えて印象的です。
そりの合わないヘレナの弟、アエリアヌスの、ファルコに対するほのかな信頼(らしきもの)や、そのアエリアヌスとアルビアとのかすかな友情(らしきもの)ものぞいて、おや、と思わされるシーンです。

精神的にも肉体的にも常に試練にさらされる百戦錬磨の戦士と、愛妻に頭が上がらずわが子の片言やいたずらにでれでれになる家庭人と。
ファルコという人物のこのギャップが、どうしようもなく魅力的なのはいつものことです。

シーセッド・ヒーセッド (講談社文庫 し 66-3)シーセッド・ヒーセッド (講談社文庫 し 66-3)
(2008/07/15)
柴田 よしき

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元警官が、やむを得ない理由があったとはいえ同僚を射殺したために、後悔から身を持ち崩し、今は探偵として卑しい街を歩む--そんなふうに紹介してみれば、実にハードボイルドな花咲慎一郎シリーズ第三作。

主人公・花咲慎一郎は、新宿二丁目の無認可保育園、「にこにこ園」の園長。いわくつきのその園を、良心的極まりない経営方針で切り盛りする彼は、いつも赤字に悩まされています。
園を土地ごと買い取るためにヤクザから4千万の借金を追い、当然担保は生命保険。
一月でも返済が遅れれば命が危ないが故に、保育シフトの合間を縫っては副業=探偵業に精を出す日々。勢い実入りのいい、ヤバい事件にぶつかる確率が高まるわけです。

このシリーズはどれも、場所柄風俗や水商売で働くシングルマザー達の子を預かる花咲の、子どもたちをいつくしむ真摯な思いが溢れていて、読後はいつも切ないような気持ちになってしまいます。
幼子の健気さに弱いのです…
時折、わたしにはちょっと鼻につく描写(経済ヤクザ・山内の美貌とか、不要とも思える同性愛描写とか)もあるのですが、登場人物たちに向けられる温かい眼差しがたまりません。

本書は、三つの事件、三人の依頼人が登場する短編オムニバス。
それぞれにばらばらの事件であるため、どれをどういう順番で読んでもミステリとしては大丈夫ですが、第一の事件がずっと花咲の心に残っていたり、第二の事件の関係者が、第三の事件を語る中で後日談のようにでてきたりしますので、最初から順番に読まれることをお勧めします。
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